セミリンガルの恐怖2  1) セミリンガルの恐怖

大人のセミリンガル TB018

どの言語も発達が不十分で、きちんとした母国語をもたない事を「セミリンガル」と呼びます。では「セミリンガル」と「バイリンガル」の違いは一体何なのでしょうか。

これは私の持論ですが、「セミリンガル」は外国語を習得する発達段階において、誰もが多かれ少なかれ体験する現象であり、バイリンガルとセミリンガルは常に表裏一体の関係にあるように思います。

大学に入学するまで、英語など殆ど喋れなかった私の母国語は完全に日本語なのですが、そんな私でも一時的に「セミリンガル」みたいになった時がありました。  

英語は苦手だった私が、何故か英文科に入学する事になってしまい、「よし、この大学4年間で、英語力をバッチリ身につけて卒業しよう。」と決意した私はESS(英語研究部)に入部して、徹底的な英語の勉強を突然開始しました。

こうして毎日、英語ばかり勉強しまくっているうちに、気がつけば私の日本語が何だかおかしくなっていました。

その頃の私は、「ガーバメントのポリシーがエフェクティブにファンクションすればポジティブなリザルトをアチーブできる。」と、こんな具合に、日本語の文法の中に英語の単語を当てはめているだけで、日本語でも英語でもない、わけのわからない「謎の言語」を発していたものでした。

これでもESSの人間同士ならば意思の疎通ができてしまうので、ついついこういう話し方が癖になり、そのうちに英語がまったくわからない人と話す時には、「えっと、日本語だったらなんて言うんだっけ?」と、頭の中でいちいち翻訳しなければ、日本語が出て来なくなってしまうような現象に陥っていました。

こうして私は、英語だって大してできもしないくせに、まともな日本語で話しをする事も難しく感じるようになっていたのです。

そんな時、教育心理学の授業で「セミリンガル」の事を始めて知った私は、自分が今、「セミリンガル状態」になっている事に、自分で突然気がつきました。

「これではいけない」と思った私は、その日から「自分の日本語力も同時に向上させなければ」と決意して、今度は片っ端から日本語の本をも読みまくりました。それと同時に日本語と英語を混ぜないで話しをするように心がける事にもしました。

こうした私自身の体験から言えば、「言葉が混ざる」という現象は、言語の発展が未熟な段階の時に起こるものであるように思います。

その後、自分の英語力が上達して行くのと比例して、私も英語は英語、日本語は日本語と、きちんと使い分ける事ができるようになって行ったものです。

ドイツ語も英語も両方とも通訳レベルにまでこなす才女のHさんは、数学も得意科目だったのだそうですが、彼女は「2桁の簡単な足し算ができなくなってしまった。」と話してくれました。

これは、ドイツ語では1の位と10の位を逆に言うので、簡単な2桁の計算をしようとすると、どっちの位がどっちだったのか、頭の中で混ざってしまうからなのだそうです。

ところが、これがもっと複雑な計算をする場合ともなれば、自分でも、「よし、計算するぞ」と力が入り、脳が日本語一色となるので、かえってすらすらと計算もできるのですが、楽しく会話をしている時などのように、気が緩んでいる時にふいを付かれると、頭が真っ白になってしまい、突如として「計算不能状態」に陥ってしまうのだという事です。

このように、大人でも一時的に「セミリンガル状態」に陥る事もあるものです。

しかし大人であれば、自分の脳がちょっと変な状態になってしまっても自分でその事に気づく事ができるから、自分で軌道修正をする事もできるものです。

それが子供の場合には自分で気がつくのは殆ど不可能なので、親がどこかで気づいてやらないと、次第にそれが脳の発達や性格形成にまで影響を及ぼし、やがてはもう軌道修正のきかない「本物のセミリンガル」となってしまう危険性も極めて高まる事になるのだろうと思います。

だからこそ、そういう環境を子供に与えた親の責任は重大であると言えるわけです。
「子供に良かれ」と思ってした事が、下手をすると恐ろしい結果を招く事にもなりかねません。

それゆえ親としては「バイリンガル教育」に関する正しい知識と十分な認識を持った上で、子供を正しく導いてやりたいものだと、つくづく思わされます。

筆:滝つぼ 

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