ダラダラ中につきカメ更新 感想など、ちょろっとでも書き込んでいただけましたら泣いて喜びます🎵

2021/8/19  10:10

昨日の夜(追記あり)  おしらせ!

昨夜、例によって寝ぼけまなこでブログをいじっていたところ、下書き用の記事を一瞬アップしてしまっていたようです。

気付いたら拍手ボタンが押されており、あれ?みたいな。パチパチしてくれた方、ごめんなさい。そしてもし、拍手コメントを書きかけてくれていたら、更にごめんなさい。

該当の記事は、週明けから週半ばには再アップする予定でいますので、いましばらくお待ちください。

お楽しみに!

いや、かなり船をこぎながら書いて消してしていたので、どの段階のものを読ませてしまったかもわからず、大変失礼しました😖💦


8月26日追記
そんな甘いものじゃなかった(ノω・、)
まだ全然掛かりそうです…
その代わり、にもならないですが、7月8月でいくつか拍手SS書き足しています。よろしければ。
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2021/8/6  0:09

【瀕死】  小説(再掲)

この日もシモンズ剣術道場は、未来の剣士を夢みる子供たちで大賑いだった。

「こら!遊ぶんだったら帰れ!」

テイラー=エヴァンズは、稽古場を走り回る子供の一団に向け、本日何度目かの雷をおとした。

彼はこの道場の出身で、念願叶って士官となった後も、時折こうして手伝いに来ていた。

「だから、稽古場を走るな」

もっとも、子供たちにしてみれば、そんなものは雷でも何でもなく、精々が小鳥のさえずりのようなものである。

「ほら、もう遅いから帰れって」

一向に話を聞かない子供たちに業を煮やし、ひとりずつ追いかけ回しては捕まえ、強制的に退場させる。そんなことを繰り返していると、子供のひとりが反対方向に向かっていく。

「良いのか、まだ帰らなくて」

「うん。今日は特別だから」

少年は、テイラーの問いかけに満面の笑みで答えた。彼は、かつてテイラーがオニと呼び、今もって畏敬の念を抱いている人物の愛児である。

「特別…?」

一体何の話だろう。そう思い、聞き返そうとするも、バタバタと近づいてくる足音にかき消された。

「せんせー!これ曲がっちゃったー!」

「曲がっちゃったじゃない。ちゃんと直せ」

「できなーい!」

「こら!待てって」

「だって、さっき帰れって言ったじゃん。さよならー」

「さよならって、オイコラ!」

押し問答の結果、剣先の曲がった模擬剣を押し付けられ、テイラー深い溜め息を吐いた。

「ったくしょうがねえな」

彼は玄関脇の長椅子に腰を下ろし、すぐ横のスタンドにそれを投げ入れた。スタンドには、同じような剣が何本も立て掛けられていた。

テイラーは、そのうちの一本を手に取ると、柔らかい布で刃の部分を包み、柄を回しながら丁寧に錆を落としていく。

それが済むと、今度は手のひらに柄の部分を乗せ、目線と平行にし、歪みがないか確認する。そうして歪みがあれば、片手で剣先を、もう一方の手で柄を持ち、力を加え矯正する。

「ふっ!!」

それには結構な力が要るが、闇雲に力を入れると折れてしまうから難しい。微妙な匙加減が求められるのだ。

「ふう…」

一旦息を整え、もう一度力を込めようとしたところで、向かいからカツカツと長靴の音がした。テイラーは反射的に顔を上げ、それからぎょっとして目を見開いた。

「ジョージアせんせい?!珍しいですね、こんな時間に」

だが、すぐに平生を装い、模擬剣を下ろした。

「息子に迎えに来いとせがまれた」

「ああ、それで。でも、確かにこのくらいの時間にならないと、強い人来ませんからね」

テイラーが言うと、恩師は不思議そうにこちらを窺った。

「先生のお子さん、同じ年頃の子の中じゃ不動の一位ですから。早い時間に来ても、大概下の子たちの相手をしてあげるだけで、もて余している感じでした」

「そうか」

師はしばらくの間考えを巡らした後、稽古場へ目をやった。

「ところで、シモンズ先生の姿が見えないがどうかされたのか」

「シモンズ先生は、このところ体調が優れないみたいで、出たり入ったりなんすよね。それもあって、自分らが手伝いに」

幼年層の子供が帰り、多少はマシになったとは言え、稽古場の空気がいまいち締まらないのはそのためである。

「そういうことか。ひょっとして、息子の相手を?」

「手が空いているときは、ですけど」

「お前も忙しいだろうに、申し訳ないな」

「いえ、全然」

テイラーは大きくかぶりを振った。

「自分も兄弟子たちに散々相手してもらってましたし、そこはお互い様なんで、全然構わないです。先生のほうこそ大変ですね」

「ああ、肝心なことは何も話してくれない」

師はそう言って、苦笑した。

「ならそれもあって、先生に来てもらいたかったんじゃないすかね」

稽古場に目を向けると、丁度、当該人物が剣を構えるところだった。

少年の顔つきは、先程とは打って変わって真剣そのものだ。視線の先の相手とは、頭ひとつ分差がある。

だが、少年はそんなハンデをものともせず、軽やかな足取りで相手との間合いを詰め、瞬く間に壁際まで追い詰めていく。

ガチンと金属の合わさる音がして、一瞬少年の姿が消えた。そして、次の瞬間、下から上へ払った剣先が相手の腕を捉えた。彼はその小さな身体を活かし、剣を持った相手の下側に潜り込んでいた。

「ほう、上手いものだな」

「いや、本当に…って、えっ?!」

驚いて見上げた師は、これまで見たことのないほど、柔らかな表情をしていた。

「先生はいつも見てるんじゃ…」

「いや、錬成会以来だ」

「何でですか?先生が見てあげてるんじゃないんですか」

「剣術のことはシモンズ先生にお任せしている」

「はあ」

俄には信じられない。テイラーは思い切り疑いの目を向けた。

「前にいろいろあって、基礎練習くらいは付き合うが、手合わせすることはない」

「そうなんですか。って、もう見ないんですか」

「ああ、これ以上見ていたら口を挟みたくなる。どうもあいつが相手だと、冷静な判断が出来なくなる。おかしいだろう?」

「いえ、そんなもんすよね、 身内なんて」

門弟たちの中には、いわゆる二世も少なくない。身内にものを教えるというのは、存外にやりにくいものなのかもしれない。

「まだしばらくかかりそうだな。エヴァンズ、剣を寄越せ」

言うや否や、師は模擬剣を掠めとった。テイラーが呆然としているうちに、手慣れた様子で剣先を直しにかかる。

「すいません、先生にこんなことさせて」

「ただ待っているよりかはマシだ」

師は模擬剣が真っ直ぐになったことを確認すると、軽く一振りした。どうということもない所作だが、テイラーはその姿に釘付けになった。

「先生、お願いがあるんですけど」

「何だ」

「図々しいのを承知の上で言うんですけど、手合わせしていただけないでしょうか」

突然こんな身の程をわきまえないことを言えば、途端に師は不機嫌になるに違いない。そう思ったが、気持ちを抑えられなかった。

「ああ、外で良いか」

ところが、返ってきたのは拍子抜けするくらいあっさりしたものだった。

「勿論です!」

テイラーは深々と頭を下げた。


師と剣を交えるのは、卒校以来初めてのことだ。あの頃と同じく、速く、鋭い剣に圧倒される。だが、今の自分はまがりなりにも、士官学校出の軍人である。そう思い、剣を握る手に力を入れた。

激しく金属がぶつかり合い、時折り受けきれずに肩や胸を強か打たれた。しかし、興奮状態にあるせいかさしたる痛みは感じず、むしろ闘志に火がついた。

テイラーが無我夢中で斬りかかったその直後、利き手に手応えを感じた。

当たった。

思わず小躍りしたくなるも、すぐさま応酬が始まった。

高速で繰り出される師の剣についていけなくなったところで、首筋に冷たい感触がした。

「参りました」

テイラーの言葉に、師は剣を納めた。その顔はどこか愉しげだった。

「当たるようになったな」

「はい」

じわじわと心が充たされていくのがわかる。もう少し堪能していたいところだが、背後から強い視線を感じた。

「稽古は済んだのか」

「うん」

振り返ると、少年がじっとこちらを見ていた。

「申し訳ないが、こいつを連れ帰る時間だ」

「とんでもないです。突然、無理言ってすみませんでした。ありがとうございました」

その間も、少年の視線が痛いくらいに刺さる。言うまでもなく、自分もやりたいのだろう。そうでなくとも、父親を盗られるようで面白くなかったかもしれない。

「せんせい、さよなら」

「え?あっ、はぁ。さよなら」

教官の前で先生と呼ばれるのは殊の外恥ずかしい。ましてや、それが教官の子となれば尚更だ。

「息子が世話になったな。エヴァンズ先生」

「ひぇ…?!」

すっかり取り乱し、もはや瀕死のテイラーを尻目に、教官父子は肩を寄せ合って帰路に着いた。





結構前に、RIEさまに「テイラーどうしてますか」的なリクをいただき、書いた拍手SSのつづきというか、中身でした。

それから、少し前にタブレットPCを買いました!が、セキュリティソフトをいれるのに手惑い、データの移行に手間取り、更にはFFTPのパスワードがわからなくなり(て言うか知らない)で、なかなかスタートラインに立てません🤣
10

2021/7/23  3:11

続ジョージア先生の長い長い夜6  小説

一通り罰を受け終わり、ポーターは息も絶え絶え、自室に引き上げた。幸い他の訓練生たちは授業に行っており、居室には自分以外誰もいない。ポーターはベッドに倒れ込み、うつ伏せのまま放心した。

どのくらい経っただろうか。こちらへ近付いてくる長靴の音に、反射的に目を上げると、軍長靴が入ってくるのが見えた。

「せんせい」

慌てて身体を起こそうとするが、力が入らない。と言うより、迂闊に力を入れると、ただでさえボロボロになった身体に堪えがたい痛みが走るのだ。

「酷い有り様だな」

教官は寝転んだままのポーターを一瞥した。こんな無礼な状態で教官と話をするわけにはいかないが、どうにも身体が動かなかった。ひとまず立ち上がることは断念し、ポーターはベッドに膝をついた。

「結局、お前は貧民街で何をしていた?本気で泥棒を追っていたのか」

「いえ、流石に自分の手に負えるような相手ではないと思いました。ただ、先週初めてあそこに行って、何だかいろいろ気になってしまって」

「いろいろ?」

「今まで気付かなかったと言うか、知り得なかった世界があって、目が離せなくなりました。あそこに住んでいるから悪人だとか、そういうことではない感じがして。もちろん知ったところで、何か出来るわけでもないですが」

ふいに切なそうな表情を浮かべるポーターを見て、タリウスの胸がドキリと脈打つ。

「ならば、知らないほうが良かったか」

「あ、いえ」

ポーターは一瞬思考した後、顔を上げた。

「こんな騒ぎを起こしておいて、言うべきことではないかもしれませんが、やっぱり知れて良かったです。知らなければ何も始まらない、そう自分は思います」

たとえそのせいで余計に悩むことになったとして、本望だと言うのだろうか。

唐突に、自宅に残してきた我が子のことが頭をよぎった。馬鹿がつくほどお人好しな息子が、この社会の不条理を知ったとき、同じようなことが起こるかもしれない。

「いずれにせよ、まずは自分のことだ。自分の面倒もろくに見られない奴か、他人の心配をするなどおこがましい」

「すみません」

ポーターが目を伏せた。

「お前か謝るべきは、俺やミルズ先生だけか」

「ノーウッド先生にもご迷惑を…」

「ノーウッド先生は、今お休みされている。帰ってきてから、最後に伺えば良い。付き合ってやるから、ついて来い」

言うが早い、教官は颯爽と戸口へ立った。ポーターはいまひとつ話が飲み込めず、呆然と教官を見上げた。

「ぐずぐずするな。直ちにまともな成りをして、下へ来い」

「はい!」

鋭く命じられ、ポーターは勢い良く起立した。身体は悲鳴を上げたが、そんなことにはかまっていられなかった。

「ほう。意外に元気だな」

そんなポーターを見て、教官はしきりに感心していた。


人間その気になれば何とかなるもので、先程は起き上がるのさえ億劫だったポーターも、今は教官に伴われ城門までどうにか辿り着くことが出来た。

「珍しいな、教官」

目当ての人物は、部下から突然の来訪を聞かされると、すぐさま城門の外側まで出てきた。

「トラバース城門警備隊長殿。昨日は夜分に大変ご迷惑をお掛けいたしました」

タリウスがまずは頭を下げ、続いて一歩後ろに下がったところにいたポーターもそれに倣った。

「ああ、昨日の。こいつがその、いなくなった訓練生?」

「カヴァナーです。昨日は自分のせいで、申し訳ありませんでした」

「別に良いって」

レックス=トラバースのいかにも軽い言葉に安堵したのも束の間、続く台詞にポーターは絶句した。

「何もお前のためじゃない」

「え………?」

「ミルズ先生に言われて、断れるわけがないだろう。まあ、これでお前も一生ミルズ先生の言いなりってわけだ」

沈黙するポーターを横目に、レックスは教官に向けて更に続ける。

「で、結局、どこにいたんだ?」

「それが、公安に保護されていまして」

「公安?!」

必要最小限の声しか発しないタリウスとは対照的に、レックスは素頓狂な声を上げた。

「先生、キレただろう。オニ切れ」

「ご想像のとおりです。詳しい経緯は恐らくこちらに」

そこで、タリウスはレックスに封書を差し出した。

「うん?」

表書きは自分宛、裏を返すとそこにはかつての師のサインがあった。

「忙しいだろうに、先生こういうとこマメだよな」

かつての師を思い、レックスは目を細めた。それからポケットに封書をしまった。

「これからファルコン、中央教育隊に?」

「そのつもりです」

「そうか、ファルコンはああ見えて、いや………あいつこそ怒らせるとヤバいから、精々気を付けろよ」

「はい…」

ポーターは小さくなって、城門を後にした。


「教官、昨日は散々だったな」

宣言どおり、続いて彼らが訪れたのは中央教育隊である。

「いえ、こちらこそ申し訳ありませんでした。多大なるご協力に感謝します」

「いや。それで、こいつが?」

ファルコンがポーターに探るような目を向けた。タリウスが肯定すると、ファルコンは近くへ来るよう無言で手招きした。

「あまり先生を心配させるな」

ファルコンの言葉に既視感をおぼえ、ポーターははっと目を上げた。それからしばしの間、目の前の男を凝視した。男は大柄で、教官に負けるとも劣らない仏頂面で、こちらを見下ろしている。

「正直、昨日の先生は見ていて忍びなかった」

「すいません」

「あそこにいるうちはわからないかもしれないが、お前は先生たちに守られて生きているんだ。そのことを常に頭に入れて行動しろ」

「はい、申し訳…」

「もう良い。昨日からそればかりだろう。これから取り返せば良い」

謝罪の言葉は途中で途切れ、代わりに結構な力で肩を叩かれた。堪えきれずにふらつくと、ファルコンはしっかりしろと言って笑った。

「お前、この辺りの出身か」

「いえ、違います」

「そうか、見たことがあるような気がしたんだがな。人違いか」

ファルコンは空を仰ぎながら、頭を掻いた。


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2021/7/20  22:13

続ジョージア先生の長い長い夜5  小説

その日未明、泣き腫らし、片頬に指の跡まで付けて帰ってきた少年に、老教官はもとより主任教官も、強い言葉を掛けることはなかった。

翌日、諸々の事後処理が済んだ後で、ゼイン=ミルズは改めて違反者を呼び出した。

「さ、昨夜は多大なるご迷惑をお掛けして、本当に、本当に申し訳ありませんでした!」

ポーター=カヴァナーは主任教官を盗み見ながら、声を震わせた。対するゼインは、それには応えず、ただじっと少年を凝視していた。

ポーターがゴクリと生唾を飲み込む。

「す、すいませんでした!」

これ以上は正視できない。そう思い、勢い良く頭を下げた。

「本科生になっても門限破りとは、愚かしいにも程がある。ジョージア教官、愚か者に罰を」

ゼインが自身の部下に目配せし、すぐ隣で、若き教官が従順な返事を返した。ポーターは信じられないおもいで教官たちを見比べた。

「ミルズ先生、自分は退校になるのでは、ないんですか?」

命があっただけありがたい、公安から解放されただけで御の字だ。そう思っていたのはあくまで昨夜までの話で、今朝からは自らの処遇について考えを巡らせていた。

「ジョージア教官。門限破りの罰は退校だったか」

「いいえ、パドル打ちです」

「結構。始めろ」

タリウスはパドルを手にし、罰を受ける姿勢になるよう顎をしゃくった。

ポーターは、慌てて両手で机の縁を掴み、頭を下げた。必然的に、むき出しになった尻だけが高く上がった。

バシン。耳に響く大きな音に続いて、焼けるような痛みが尻に広がった。ポーターは唇を噛んでその痛みを飲み込んだ。

そんな必死の我慢が報われることなどなく、間を置かず更なる痛みが襲ってくる。

バシン。バシン。バシン。容赦ない打擲が繰り返される。

「うぅ…」

そうしてまんべんなく尻が腫れ上がる頃には、口から呻き声が漏れ、無意識に腰がひけた。

「動くな」

教官は尻たぶにパドルをピタピタと当て、姿勢を矯正した。

「すいません」

ポーターはすぐさまもとの位置に身体を戻す。

だが、それから少しすると、 またしても姿勢が乱れた。

「何度も同じことを言わせるな。拘束されたいのか」

「いえ」

ポーターは大きく息を吸い込み、再び姿勢を正した。

そうして、性懲りもなくポーターの身体が三度逃げたときだった。

「堪えろ!!」

突如として、それまで沈黙を守っていた主任教官が吠えた。ポーターは驚いて目を見張る。チラリと盗み見た主任教官は、まさしく鬼の形相をしていた。

「貴様のせいで、一体どれだけの人間が迷惑を被ったと思う」

「すいませ…」

「それにも関わらず、どれだけの人間が、労を厭わず貴様を捜し回ったと思う!」

ポーターはハッとして、両目を見開いた。

「自分は、本当に考えなしに、馬鹿なことを…すみませんでした」

その瞳から涙が溢れた。

「己を恥じ、悔悟しろ」

主任教官は立ち上がり、執務机から籐鞭を取った。

「代われ」

ピシリと机が鳴った。

「君には特別に、この私がたっぷり反省させてあげるよ。そうだな、さしあたっては、この鞭が折れるまでだ」

ゼインは鞭を弄ぶようにして、ポーターの背後にまわった。入れ違いに、タリウスがパドルを片付け、ポーターのすぐ隣に立った。必要とあらば、いつでも主任教官を手助けするためだ。

「ひぃ!」

微かな音と共に、皮膚を切り裂くような痛みが走った。パドルのそれと違い、一極集中型の鋭利な痛みである。

「あぁっ!」

痛みを噛み締める間もなく、すぐさま次がやってくる。

「いっ!うぅ!」

自然とつま先立ちになり、ガクガクと膝が震えた。教官はそんな自分に全く構うことなく、黙々と鞭を与え続ける。次第に息が荒くなった。

もう無理だ。これ以上は堪えられない。何度目かにそう思ったところで、頭で考えるより先に身体が反応した。両手が机から離れ、上半身が浮いた。

主任教官が鞭を下ろし、こちらに近付いてくる。

「す、すいませ…。身体が逃げてしまって」

「そう簡単に退校になぞしてたまるか」

「え…?」

間近に顔を覗き込まれ、ポーターは視線を上げた。

「貴様は一番大事なものを傷つけた。それが何かわかるか」

ポーターはふるふると首を横に振った。その間も、ゼインは鋭くこちらを威嚇してくる。目を逸らそうにも、身体が凍りついたように動かなかった。

「誇りだ。何年、何十年と先人が守ってきたものをお前は一瞬にして壊した。士官学校の制服を着て公安に捕まるなど言語道断。お陰で中央士官学校の名は地に堕ちた」

「申し訳ありません」

「給金をもらいながら、学ばせてもらっている意味を考えろ。本気で申し訳ないと思うのなら、己の作った借りは、己の手で返せ。何年掛かろうともだ」

「は…い」

「姿勢を戻せ。次に動いたら、ジョージア教官に拘束してもらう。そうなれば、またひとつ借りが増える。そうでなくとも、君はジョージア教官の手を煩わせ過ぎだ」

「す、すみませ…うっ!!」

皆まで言わないうちに、粛々と罰が再開された。そのまま何十回と地獄は続いた。

「あぁっ!」

脂汗を滴し、涙に暮れながらも、ポーターは机にかじりついたまま離れなかった。

「結構」

ゼインは満足そうに呟くと、執務机の上に籐鞭を置いた。みれば、先のほうが折れ、初めより短くなっていた。


眠けまなこで書いていたら、朝起きたら原稿がごそっと消えており、ひょええぇ。
10

2021/7/18  2:03

続ジョージア先生の長い長い夜4  小説

「全く公安は、どこまで人を虚仮にすれば気が済むんだ!!」

勢い良く教官室の扉を開き、ゼイン=ミルズは息巻いた。

「公安にいなかったのか」

絶句するタリウスを横目に、老教官はかまわず上官に詰め寄った。あの後、部下たちから報告を受けたゼインは、単身公安に向かった。

「いるにはいるが、血縁者にしか身柄を渡せないと言ってきた」

「血縁者って、そんな馬鹿な。ここにいる間は、教官が保護者みたいなものだ」

「同じことを何度も説明したが、頑として聞き入れようとしない。奴らは、我々がカヴァナーを退校にすると思っているようだ」

「カヴァナーを退校にするのか」

「そんなことは今ここで私が決めるようなことではない。だが、もしそうなれば、カヴァナーが自暴自棄になり犯罪に走るやもしれない。そうなったときに我々では責任がとれない。そういう理屈だ」

「よくもまあ、いけしゃあしゃあとそんな屁理屈を思い付いたものだ。単なる嫌がらせだろうに」

「あとはひたすら、規則だと繰り返すだけだ。全く忌々しい。それと言うのもジョージア、すべては君の指導が悪いからだ」

「大変申し訳ございません」

もはやタリウスには、平身低頭して許しを乞う以外に出来ることはない。

「申し訳ないと思うのなら、徽章を外せ」

「はい?」

タリウスは思わず顔を上げた。恐る恐る上官を窺うと、その瞳が妖しく光る。

「聞こえただろう。徽章を外し、直ちに軍装を解け。その上で公安に行き、カヴァナーを連れ帰れ。教官としてではない。血縁者を装え」

「は?」

上官の命令が頭で処理しきれない。

「そんな無茶苦茶な」

タリウスが困惑していると、老教官が何とか上官を取り成そうと試みていた。

「ノーウッド教官が行ってくれたところで、一向に構わない。さすがに父親では董(とう)がたちすぎているだろうから、そうだね、伯父上でどうだろうか」

「行け、ジョージア」

が、すぐさま翻意したようだった。

「本気で仰っているんですか」

「私はいつだって本気だ」

確かに、ゼインは相変わらず口許に笑みをたたえているものの、目は笑っていなかった。


ポーター=カヴァナーは、石造りの床に身体を沈め、夢と現を行ったり来たりしていた。身体が凝り固まり、鉛のように重く感じる。だが、心の重さのほうはその比ではない。

一体どこで道を過ったのだろう。ポーターは、冷たく硬い独房の中で、ひとり過去の自分に思いを馳せていた。

ポーターは物心ついた頃から曲がったことが嫌いで、正義の味方なるものに憧れていた。そして、少し大きくなってからは、将来公安に入りたいと思うようになった。

だが、そんな彼に転機が訪れた。その日、家族と共に王都を訪れていたポーターは、不注意から両親とはぐれてしまう。

当然のように助けを求めた公安で、信じられないくらい冷たい待遇を受けたポーターは、絶望し、人目も憚らず泣いた。

そのとき、彼に手を差しのべてくれたのが将校の軍服を身に纏った青年だった。青年は、泣きじゃくるポーターをなだめ、家族の元まで送り届けてくれた。そして去り際に、困ったような表情を浮かべ、言った。

「あまり家族を心配させるなよ」

その日を境に、将来の夢が公安から軍人に変わった。それが何故、自分が公安に囚われるような事態になったのだろう。


「おい、お前。起きろ!」

突然、耳元で叫ばれたと思ったら、今度は身体を揺り起こされた。お陰で頭がガンガンする。

「喜べ、父上が迎えにきたぞ」

「父が…ですか?」

身体を引きずるようにしてどうにかこうにか起き上がると、目の前に手燭の光を当てられた。闇に慣れていたせいで目が眩んだ。

「何で?そんなわけは…」

実家はここから半日以上掛かる場所に位置している。今が何時なのか定かではないが、たとえ朝を迎え、開門していたとして、こんなに早くは着かない筈だ。

「知るか。こっちは忙しいんだ。早く出ろ」

乱暴にせっつかれ、ポーターはふらふらと男の後を追った。そこから数歩歩いたところで、向かい側から見知った影が近付いてきた。

「せん…っ?!」

「この馬鹿息子が!!どれだけ心配したと思っている!!」

ポーターが影の主を呼ぼうとした瞬間、雷に撃たれたような衝撃が走った。そうして気付いたときには胸ぐらを掴まれ、右頬に焼けるような痛みがあった。

「何とか言ったらどうだ」

「えっと…?」

状況がわからなすぎて、夢をみているのか、もしくは光に目が眩み、幻覚を見ているのだとおもった。だが、それにしては頬の痛みが強烈だった。

「ここから帰りたくば、先生と呼ぶな。息子のふりをしろ」

『父』は、耳元で囁いた。

「こっちはこんな時間までお前を捜し回っていたというのに、お前のほうは呑気に高いびきか」

「すいま…」

反射的に謝罪を口にしようとすると、首もとに圧をかけられた。これでは苦しくて声が出せない。

「だいたいお前は…」

「まあまあ、お父さん」

更なる怒声を浴びせかけようとするのを男が制する。

「気持ちはわかるけど、もう夜中なんで」

「失礼。連れて帰っても?」

「ああ、どうぞ」

「とっととしろ」

ひとまず首もとは解放されたが、今度は右腕を痛いくらいに掴まれた。そのまま『父』に引きずられるようにして、ポーターは公安の中をずんずんと進んだ。

「ああっと、ちょっと待ってお父さん」

「何か」

背後から呼び止められ、彼らはぴたりと歩みを止めた。

「参考までに聞きたいんだけど、お父さん仕事は何を?」

「教師だ」

「ああ、そう。先生か、どうりで…」

男は未だぶつぶつ言っていたが、『父』は構わず歩き始めた。自動的にポーターもまた連行された。


「せんせい」

公安から脱出し、しばらく行ったところで乱暴に縛めが解かれた。

「この恥さらしが。言っておくが、ミルズ先生の怒りはこんなものではない。帰ったら覚悟しろ」

「先生、本当に申し訳ありませんでした!!」

「申し訳ありませんで済んだら、公安は要らない。教官もだ」

教官の顔をまともに見たところで、堪えていたものが一気に噴き出した。どう足掻こうとも、一度溢れだした涙が止まることはなかった。


ほっぺの一発は『父』からの愛のムチ。昔、シェールにも同じことしていましたっけね。

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