2021/9/7 2:58
【指環】2 小説(再掲)
「怖がらせて申し訳なかった」
人目も憚らず泣きじゃくるユリアに、タリウスはひどく動揺した。ともあれ彼女を落ち着かせようとその場に膝を折り、そっと髪に触れた。
「違うんです」
「はい?」
「そうじゃなくて、わたし…」
ユリアが懸命に話そうとするものの、嗚咽に紛れてよく聞き取れない。
「大丈夫ですか?ともかく帰ろう」
「帰れません」
「どうして?」
「だって…」
ふいに、近隣の民家に明かりが灯るのが見えた。まずい。そう思った矢先、またひとつ明かりが増えた。
「やむを得ません」
タリウスはランタンを手繰り寄せ、腰に掛けた。
「え…?」
そして次の瞬間、ユリアの身体が宙に浮いた。
「えっ?!」
まさかの事態にユリアは驚愕した。
「騒がないでください。これではまるで、本当に誘拐している気分だ」
「誘拐って…」
タリウスはあわてふためくユリアを抱き抱え、暗がりをずんずん進んだ。
「そう思われたくなかったら、少し静かにしていてください」
ユリアは、この段になってようやく状況を理解したのか、急速に大人しくなった。そうして間近に聞こえた鼓動に、顔を赤らめた。
「何があったのか尋ねても?」
数分後、ユリアを居室へ戻したところで、タリウスは再び疑問を口にした。
「ごめんなさい。私、指輪をなくしてしまいました」
「指輪って、あの?」
思わず聞き返すと、ユリアは無言で肯定した。
「勘弁してくれ」
タリウスは唖然として、考えるより先に言葉が口をついて出た。まるで身体中の力が抜けていくようだった。
「ごめんなさい」
「ああ、いや、そういうことではなくて」
自分の言葉に責められたと感じたのだろう。ユリアはほろりと涙をこぼした。
「泣くようなことですか」
「だって」
ユリアは左手の薬指を恨めしそうに見やった。そこには、数日前にはめたばかりの小さな石が光っている筈だった。
「元々あの指輪は魔除けのつもりで贈りました。あなたの代わりに指輪が厄災を引き受けてくれたのだとしたら、それはそれで構わない」
石には、古来より持ち主を災いから守る力があると信じられている。それ故、石が割れたり、なくなったりすることは、殊更悪い兆候ではないとされていた。
「でも…」
涙に濡れた瞳が忙しなく瞬く。
「それでも諦めきれないと言うなら、明日一緒に捜します。その上で、見付からなければ、また代わりのものを差し上げます。心配しなくとも、そのくらいの甲斐性はありますよ」
「いいえ、それではあまりに申し訳ないです。それに、そういう問題では…」
「確かに、そういう問題ではない」
そこでタリウスは意図的に声音を変えた。
「はい?」
ユリアが身構える。それが何を示すのか、彼女は本能的にわかっている。
「指輪を失くしたのは、不可抗力でしょう。もとより責めるつもりはありません。ですが、仮病まで使って、こんな時間に無防備に指輪を探し歩くなど、正気の沙汰とは思えません」
ユリアはしゅんとなり、それから、ごめんなさいと言ってこちらを見上げてきた。
「時々あなたが子供に見えて仕方がない」
「だって」
自分でもそう思ったのか、言い掛けてユリアは目を伏せた。タリウスには、その姿が言いようのないほど愛おしかった。
「さて、悪いことをした娘は、どうなるんですか」
「それは…罰を…いただきます」
「あなたにはどんな罰が相応しいと?」
「そんな、タリウス。意地悪言わないで」
「いいえ。これは躾です。ユリア、来なさい」
真っ向からユリアを見詰め、あえて厳しく命じた。彼女は小さく返事を返し、ほんの少し躊躇った後で、自らスカートをたくし上げ、下着に手を掛けた。
彼女の躾を請け負うようになって随分経つが、これまで一度たりとてそんなことを命じたおぼえはない。それだけに、彼女が本心から悔いているのがわかった。
「良い心掛けです」
察するに、彼女が悔いているのは指輪を失くしたことだ。そう思ったら、このまま何もせず解放してやりたくなった。だが、それでは彼女の気が済まないだろう。
ユリアを膝に横たえ、程なくして最初の一打を見舞った。白いお尻にくっきりと指の跡が浮かび、同時にビクンと身体がはね上がる。想像していたより遥かに痛い筈だ。
「しっかり反省しなさい」
その後も、少しも力を緩めることなく、左右のお尻に平等に平手を落とした。その間、ユリアは身体を固くして、ひたすら痛みを享受した。その姿は、まるで痛みを噛み締めているようにも思えた。
「少しは懲りましたか」
どうにもいたたまれなくなり、タリウスはお仕置きする手を止めた。
「ごめんなさい、タリウス。わたし、どうしたら良いかわからなくて…」
「そういうときは聞いてください。ほら、ユリア。おいで」
ユリアを膝から下ろし、そっと抱き寄せると、彼女のほうから強く胸にしがみついてきた。そのまま黙って抱き締めていると、ぽつりとユリアが呟いた。
「本当は、お顔を見たときからずっとこうしたかったです」
「それならそうと言ってください」
全く素直じゃないなと、タリウスは苦笑した。
「また買ってあげるから」
「イヤよ。気に入っていたんだもの」
「わかった。捜すから、いい加減、泣き止みなさい」
「だって、お尻が…」
「指輪が不要なら、いっそ鞭でも贈りましょうか」
「け、結構です!」
ユリアはぎょっとして声を上げ、それから頬を上気させた。
了
16
人目も憚らず泣きじゃくるユリアに、タリウスはひどく動揺した。ともあれ彼女を落ち着かせようとその場に膝を折り、そっと髪に触れた。
「違うんです」
「はい?」
「そうじゃなくて、わたし…」
ユリアが懸命に話そうとするものの、嗚咽に紛れてよく聞き取れない。
「大丈夫ですか?ともかく帰ろう」
「帰れません」
「どうして?」
「だって…」
ふいに、近隣の民家に明かりが灯るのが見えた。まずい。そう思った矢先、またひとつ明かりが増えた。
「やむを得ません」
タリウスはランタンを手繰り寄せ、腰に掛けた。
「え…?」
そして次の瞬間、ユリアの身体が宙に浮いた。
「えっ?!」
まさかの事態にユリアは驚愕した。
「騒がないでください。これではまるで、本当に誘拐している気分だ」
「誘拐って…」
タリウスはあわてふためくユリアを抱き抱え、暗がりをずんずん進んだ。
「そう思われたくなかったら、少し静かにしていてください」
ユリアは、この段になってようやく状況を理解したのか、急速に大人しくなった。そうして間近に聞こえた鼓動に、顔を赤らめた。
「何があったのか尋ねても?」
数分後、ユリアを居室へ戻したところで、タリウスは再び疑問を口にした。
「ごめんなさい。私、指輪をなくしてしまいました」
「指輪って、あの?」
思わず聞き返すと、ユリアは無言で肯定した。
「勘弁してくれ」
タリウスは唖然として、考えるより先に言葉が口をついて出た。まるで身体中の力が抜けていくようだった。
「ごめんなさい」
「ああ、いや、そういうことではなくて」
自分の言葉に責められたと感じたのだろう。ユリアはほろりと涙をこぼした。
「泣くようなことですか」
「だって」
ユリアは左手の薬指を恨めしそうに見やった。そこには、数日前にはめたばかりの小さな石が光っている筈だった。
「元々あの指輪は魔除けのつもりで贈りました。あなたの代わりに指輪が厄災を引き受けてくれたのだとしたら、それはそれで構わない」
石には、古来より持ち主を災いから守る力があると信じられている。それ故、石が割れたり、なくなったりすることは、殊更悪い兆候ではないとされていた。
「でも…」
涙に濡れた瞳が忙しなく瞬く。
「それでも諦めきれないと言うなら、明日一緒に捜します。その上で、見付からなければ、また代わりのものを差し上げます。心配しなくとも、そのくらいの甲斐性はありますよ」
「いいえ、それではあまりに申し訳ないです。それに、そういう問題では…」
「確かに、そういう問題ではない」
そこでタリウスは意図的に声音を変えた。
「はい?」
ユリアが身構える。それが何を示すのか、彼女は本能的にわかっている。
「指輪を失くしたのは、不可抗力でしょう。もとより責めるつもりはありません。ですが、仮病まで使って、こんな時間に無防備に指輪を探し歩くなど、正気の沙汰とは思えません」
ユリアはしゅんとなり、それから、ごめんなさいと言ってこちらを見上げてきた。
「時々あなたが子供に見えて仕方がない」
「だって」
自分でもそう思ったのか、言い掛けてユリアは目を伏せた。タリウスには、その姿が言いようのないほど愛おしかった。
「さて、悪いことをした娘は、どうなるんですか」
「それは…罰を…いただきます」
「あなたにはどんな罰が相応しいと?」
「そんな、タリウス。意地悪言わないで」
「いいえ。これは躾です。ユリア、来なさい」
真っ向からユリアを見詰め、あえて厳しく命じた。彼女は小さく返事を返し、ほんの少し躊躇った後で、自らスカートをたくし上げ、下着に手を掛けた。
彼女の躾を請け負うようになって随分経つが、これまで一度たりとてそんなことを命じたおぼえはない。それだけに、彼女が本心から悔いているのがわかった。
「良い心掛けです」
察するに、彼女が悔いているのは指輪を失くしたことだ。そう思ったら、このまま何もせず解放してやりたくなった。だが、それでは彼女の気が済まないだろう。
ユリアを膝に横たえ、程なくして最初の一打を見舞った。白いお尻にくっきりと指の跡が浮かび、同時にビクンと身体がはね上がる。想像していたより遥かに痛い筈だ。
「しっかり反省しなさい」
その後も、少しも力を緩めることなく、左右のお尻に平等に平手を落とした。その間、ユリアは身体を固くして、ひたすら痛みを享受した。その姿は、まるで痛みを噛み締めているようにも思えた。
「少しは懲りましたか」
どうにもいたたまれなくなり、タリウスはお仕置きする手を止めた。
「ごめんなさい、タリウス。わたし、どうしたら良いかわからなくて…」
「そういうときは聞いてください。ほら、ユリア。おいで」
ユリアを膝から下ろし、そっと抱き寄せると、彼女のほうから強く胸にしがみついてきた。そのまま黙って抱き締めていると、ぽつりとユリアが呟いた。
「本当は、お顔を見たときからずっとこうしたかったです」
「それならそうと言ってください」
全く素直じゃないなと、タリウスは苦笑した。
「また買ってあげるから」
「イヤよ。気に入っていたんだもの」
「わかった。捜すから、いい加減、泣き止みなさい」
「だって、お尻が…」
「指輪が不要なら、いっそ鞭でも贈りましょうか」
「け、結構です!」
ユリアはぎょっとして声を上げ、それから頬を上気させた。
了

2021/9/5 3:07
【指環】 小説(再掲)
「そんなところで何をしている」
兵舎からの帰り道、角を曲がれば宿屋というところで、タリウスの視界に見知った影が飛び込んできた。
「とうさん?!」
シェールは驚いて、勢い良く立ち上がった。そんな息子のすぐ近くには、もうひとつ、地面にしゃがみこむ影があった。
「お疲れさまです。今日は随分と早いお帰りですね」
「そんなこともないと思いますが…」
退っ引きならない事情があれば話は別だが、繁忙期ではない普段の日は、夕食前には帰宅するのが常である。
「それより、こんなところで二人して何を?」
「べ、別に何も」
シェールが慌てた様子で答える。その見るからに不自然な様に、タリウスは何かあったと直感する。
「ええ、お散歩をしていただけです。そろそろ帰るところでした」
「え?でもまだ…」
「良いのよ。さあ、もう帰りましょう」
何事かを言い掛けるシェールを制し、ユリアはそそくさと宿へと向かった。シェールもまたそれに続いた。
二人して何か良からぬことをしていたに違いない。そう思い気にはなったが、ユリアがいる限りそうそう滅多なことにはならない筈だ。ふいに思い直し、タリウスはひとまず見なかったふりをした。
その夜、ユリアは気分が優れないと言って夕食に降りてこなかった。そんな彼女のことを心配しつつ、タリウスはそれとなく息子の様子を観察した。だが、特にこれといっていつもと変わったところはない。
「シェール。もし何か困ったことがあったら、いつでも力になる。遠慮しないで言いなさい」
「わかった。でもとりあえず、僕は大丈夫」
シェールは一瞬きょとんとしてこちらを見たが、すぐに口角を上げた。
「そうか。なら良い」
恐らく、息子の言葉に嘘はない。タリウスは安堵のため息を吐いた。
「おやすみなさい」
「ああ、おやすみ」
そのとき、窓の外に一瞬灯りが揺れるのが見えた。何となく気になって下を覗くと、灯りはみるみるうちに遠ざかっていった。
タリウスはハッとして、部屋を後にした。
「ユリア」
思い立って隣室の扉を叩くが応答がない。
「失礼」
しびれを切らせ、中に押し入ると部屋はもぬけの殻だった。やはり思った通りだ。タリウスは階下へと向かい、それから閂の外れた扉を開けた。
宿から少し行ったところで、ぼんやりとした灯りが浮かび上がっていた。先程、妻子と行き逢った場所である。
灯りのすぐそばでうごめく影に、タリウスは無造作に手を伸ばした。
「きゃあぁぁあ!!」
ユリアが絶叫する。いつぞやの待ち伏せ事件の反省から、いざというときのために声を上げる特訓をしたとミゼット=ミルズから伝え聞いたが、それが早速功を成したようである。
「落ち着いてください。私です」
「タリウス?!どうして」
「それはこちらが聞きたい。一体何がどうしたんですか」
ユリアは答えない。それどころか、しゃがみこんだままその場を動こうとしなかった。
「シェールが何かご迷惑を?」
「違います。シェールくんは関係ありません」
「だが…」
「ごめんなさい!」
「ユリア?」
「本当に、本当に、ごめんなさい」
闇の中、彼女は声を震わせて泣いていた。
10
兵舎からの帰り道、角を曲がれば宿屋というところで、タリウスの視界に見知った影が飛び込んできた。
「とうさん?!」
シェールは驚いて、勢い良く立ち上がった。そんな息子のすぐ近くには、もうひとつ、地面にしゃがみこむ影があった。
「お疲れさまです。今日は随分と早いお帰りですね」
「そんなこともないと思いますが…」
退っ引きならない事情があれば話は別だが、繁忙期ではない普段の日は、夕食前には帰宅するのが常である。
「それより、こんなところで二人して何を?」
「べ、別に何も」
シェールが慌てた様子で答える。その見るからに不自然な様に、タリウスは何かあったと直感する。
「ええ、お散歩をしていただけです。そろそろ帰るところでした」
「え?でもまだ…」
「良いのよ。さあ、もう帰りましょう」
何事かを言い掛けるシェールを制し、ユリアはそそくさと宿へと向かった。シェールもまたそれに続いた。
二人して何か良からぬことをしていたに違いない。そう思い気にはなったが、ユリアがいる限りそうそう滅多なことにはならない筈だ。ふいに思い直し、タリウスはひとまず見なかったふりをした。
その夜、ユリアは気分が優れないと言って夕食に降りてこなかった。そんな彼女のことを心配しつつ、タリウスはそれとなく息子の様子を観察した。だが、特にこれといっていつもと変わったところはない。
「シェール。もし何か困ったことがあったら、いつでも力になる。遠慮しないで言いなさい」
「わかった。でもとりあえず、僕は大丈夫」
シェールは一瞬きょとんとしてこちらを見たが、すぐに口角を上げた。
「そうか。なら良い」
恐らく、息子の言葉に嘘はない。タリウスは安堵のため息を吐いた。
「おやすみなさい」
「ああ、おやすみ」
そのとき、窓の外に一瞬灯りが揺れるのが見えた。何となく気になって下を覗くと、灯りはみるみるうちに遠ざかっていった。
タリウスはハッとして、部屋を後にした。
「ユリア」
思い立って隣室の扉を叩くが応答がない。
「失礼」
しびれを切らせ、中に押し入ると部屋はもぬけの殻だった。やはり思った通りだ。タリウスは階下へと向かい、それから閂の外れた扉を開けた。
宿から少し行ったところで、ぼんやりとした灯りが浮かび上がっていた。先程、妻子と行き逢った場所である。
灯りのすぐそばでうごめく影に、タリウスは無造作に手を伸ばした。
「きゃあぁぁあ!!」
ユリアが絶叫する。いつぞやの待ち伏せ事件の反省から、いざというときのために声を上げる特訓をしたとミゼット=ミルズから伝え聞いたが、それが早速功を成したようである。
「落ち着いてください。私です」
「タリウス?!どうして」
「それはこちらが聞きたい。一体何がどうしたんですか」
ユリアは答えない。それどころか、しゃがみこんだままその場を動こうとしなかった。
「シェールが何かご迷惑を?」
「違います。シェールくんは関係ありません」
「だが…」
「ごめんなさい!」
「ユリア?」
「本当に、本当に、ごめんなさい」
闇の中、彼女は声を震わせて泣いていた。

2021/8/29 14:23
イケボとかまってちゃん こえ
2021年上半期自分にご褒美企画「イケボde♡タリウス」やってみました。
今回は、ASMR?みたいなのをイメージしつつ、結局、全然そうならなかったっていう💦
いえ、文句無しにイケ声なんですよ!問題は、私の企画力のなさと編集スキルの低さにあるというだけです。
内容としては、シェール目線でタリパパに叱られるっていう、そんだけ。ええ、もうものごっつマニア向けな音声ファイルに仕上がっています。
なもんで、今回は「聴きたい!」という方にだけリンクをお送りします。そういうのお好きな方は、メールか拍手からご連絡ください。私が連絡先を知っている方は、お名前だけでも🆗
夜以降(多分夜中)、メールにてご案内します。
いや、そんな御大層なもんじゃないですよ。ただひたすら自分向けなので。
ちなみに、リスナーはシェール目線でお楽しみくださいなので、シェールのセリフはありません。ぶっちゃけ、何で怒られてるのかちょっとわかりにくいかもなので、雰囲気を楽しんでいただけたらとお思います。
くどいようですが、お好きな方だけどうぞ。
一応ひとことサンプルをおいておきますね。本編で使っているものとは別です(ある意味ここでしか聴けない)。
以下、リンクをクリックするといきなり音出ます!ヘッドフォン🎧️必須
♪サンプル1(平時)
♪サンプル2(オニ)
【こえの出演】 口撫 にえる様
以下ネタバレちょこっと。先入観なしで聴きたい人はバックで。
11
今回は、ASMR?みたいなのをイメージしつつ、結局、全然そうならなかったっていう💦
いえ、文句無しにイケ声なんですよ!問題は、私の企画力のなさと編集スキルの低さにあるというだけです。
内容としては、シェール目線でタリパパに叱られるっていう、そんだけ。ええ、もうものごっつマニア向けな音声ファイルに仕上がっています。
なもんで、今回は「聴きたい!」という方にだけリンクをお送りします。そういうのお好きな方は、メールか拍手からご連絡ください。私が連絡先を知っている方は、お名前だけでも🆗
夜以降(多分夜中)、メールにてご案内します。
いや、そんな御大層なもんじゃないですよ。ただひたすら自分向けなので。
ちなみに、リスナーはシェール目線でお楽しみくださいなので、シェールのセリフはありません。ぶっちゃけ、何で怒られてるのかちょっとわかりにくいかもなので、雰囲気を楽しんでいただけたらとお思います。
くどいようですが、お好きな方だけどうぞ。
一応ひとことサンプルをおいておきますね。本編で使っているものとは別です(ある意味ここでしか聴けない)。
以下、リンクをクリックするといきなり音出ます!ヘッドフォン🎧️必須
♪サンプル1(平時)
♪サンプル2(オニ)
【こえの出演】 口撫 にえる様
以下ネタバレちょこっと。先入観なしで聴きたい人はバックで。

2021/8/19 10:10
昨日の夜(追記あり) おしらせ!
昨夜、例によって寝ぼけまなこでブログをいじっていたところ、下書き用の記事を一瞬アップしてしまっていたようです。
気付いたら拍手ボタンが押されており、あれ?みたいな。パチパチしてくれた方、ごめんなさい。そしてもし、拍手コメントを書きかけてくれていたら、更にごめんなさい。
該当の記事は、週明けから週半ばには再アップする予定でいますので、いましばらくお待ちください。
お楽しみに!
いや、かなり船をこぎながら書いて消してしていたので、どの段階のものを読ませてしまったかもわからず、大変失礼しました😖💦
8月26日追記
そんな甘いものじゃなかった(ノω・、)
まだ全然掛かりそうです…
その代わり、にもならないですが、7月8月でいくつか拍手SS書き足しています。よろしければ。
18
気付いたら拍手ボタンが押されており、あれ?みたいな。パチパチしてくれた方、ごめんなさい。そしてもし、拍手コメントを書きかけてくれていたら、更にごめんなさい。
該当の記事は、週明けから週半ばには再アップする予定でいますので、いましばらくお待ちください。
お楽しみに!
いや、かなり船をこぎながら書いて消してしていたので、どの段階のものを読ませてしまったかもわからず、大変失礼しました😖💦
8月26日追記
そんな甘いものじゃなかった(ノω・、)
まだ全然掛かりそうです…
その代わり、にもならないですが、7月8月でいくつか拍手SS書き足しています。よろしければ。

2021/8/6 0:09
【瀕死】 小説(再掲)
この日もシモンズ剣術道場は、未来の剣士を夢みる子供たちで大賑いだった。
「こら!遊ぶんだったら帰れ!」
テイラー=エヴァンズは、稽古場を走り回る子供の一団に向け、本日何度目かの雷をおとした。
彼はこの道場の出身で、念願叶って士官となった後も、時折こうして手伝いに来ていた。
「だから、稽古場を走るな」
もっとも、子供たちにしてみれば、そんなものは雷でも何でもなく、精々が小鳥のさえずりのようなものである。
「ほら、もう遅いから帰れって」
一向に話を聞かない子供たちに業を煮やし、ひとりずつ追いかけ回しては捕まえ、強制的に退場させる。そんなことを繰り返していると、子供のひとりが反対方向に向かっていく。
「良いのか、まだ帰らなくて」
「うん。今日は特別だから」
少年は、テイラーの問いかけに満面の笑みで答えた。彼は、かつてテイラーがオニと呼び、今もって畏敬の念を抱いている人物の愛児である。
「特別…?」
一体何の話だろう。そう思い、聞き返そうとするも、バタバタと近づいてくる足音にかき消された。
「せんせー!これ曲がっちゃったー!」
「曲がっちゃったじゃない。ちゃんと直せ」
「できなーい!」
「こら!待てって」
「だって、さっき帰れって言ったじゃん。さよならー」
「さよならって、オイコラ!」
押し問答の結果、剣先の曲がった模擬剣を押し付けられ、テイラー深い溜め息を吐いた。
「ったくしょうがねえな」
彼は玄関脇の長椅子に腰を下ろし、すぐ横のスタンドにそれを投げ入れた。スタンドには、同じような剣が何本も立て掛けられていた。
テイラーは、そのうちの一本を手に取ると、柔らかい布で刃の部分を包み、柄を回しながら丁寧に錆を落としていく。
それが済むと、今度は手のひらに柄の部分を乗せ、目線と平行にし、歪みがないか確認する。そうして歪みがあれば、片手で剣先を、もう一方の手で柄を持ち、力を加え矯正する。
「ふっ!!」
それには結構な力が要るが、闇雲に力を入れると折れてしまうから難しい。微妙な匙加減が求められるのだ。
「ふう…」
一旦息を整え、もう一度力を込めようとしたところで、向かいからカツカツと長靴の音がした。テイラーは反射的に顔を上げ、それからぎょっとして目を見開いた。
「ジョージアせんせい?!珍しいですね、こんな時間に」
だが、すぐに平生を装い、模擬剣を下ろした。
「息子に迎えに来いとせがまれた」
「ああ、それで。でも、確かにこのくらいの時間にならないと、強い人来ませんからね」
テイラーが言うと、恩師は不思議そうにこちらを窺った。
「先生のお子さん、同じ年頃の子の中じゃ不動の一位ですから。早い時間に来ても、大概下の子たちの相手をしてあげるだけで、もて余している感じでした」
「そうか」
師はしばらくの間考えを巡らした後、稽古場へ目をやった。
「ところで、シモンズ先生の姿が見えないがどうかされたのか」
「シモンズ先生は、このところ体調が優れないみたいで、出たり入ったりなんすよね。それもあって、自分らが手伝いに」
幼年層の子供が帰り、多少はマシになったとは言え、稽古場の空気がいまいち締まらないのはそのためである。
「そういうことか。ひょっとして、息子の相手を?」
「手が空いているときは、ですけど」
「お前も忙しいだろうに、申し訳ないな」
「いえ、全然」
テイラーは大きくかぶりを振った。
「自分も兄弟子たちに散々相手してもらってましたし、そこはお互い様なんで、全然構わないです。先生のほうこそ大変ですね」
「ああ、肝心なことは何も話してくれない」
師はそう言って、苦笑した。
「ならそれもあって、先生に来てもらいたかったんじゃないすかね」
稽古場に目を向けると、丁度、当該人物が剣を構えるところだった。
少年の顔つきは、先程とは打って変わって真剣そのものだ。視線の先の相手とは、頭ひとつ分差がある。
だが、少年はそんなハンデをものともせず、軽やかな足取りで相手との間合いを詰め、瞬く間に壁際まで追い詰めていく。
ガチンと金属の合わさる音がして、一瞬少年の姿が消えた。そして、次の瞬間、下から上へ払った剣先が相手の腕を捉えた。彼はその小さな身体を活かし、剣を持った相手の下側に潜り込んでいた。
「ほう、上手いものだな」
「いや、本当に…って、えっ?!」
驚いて見上げた師は、これまで見たことのないほど、柔らかな表情をしていた。
「先生はいつも見てるんじゃ…」
「いや、錬成会以来だ」
「何でですか?先生が見てあげてるんじゃないんですか」
「剣術のことはシモンズ先生にお任せしている」
「はあ」
俄には信じられない。テイラーは思い切り疑いの目を向けた。
「前にいろいろあって、基礎練習くらいは付き合うが、手合わせすることはない」
「そうなんですか。って、もう見ないんですか」
「ああ、これ以上見ていたら口を挟みたくなる。どうもあいつが相手だと、冷静な判断が出来なくなる。おかしいだろう?」
「いえ、そんなもんすよね、 身内なんて」
門弟たちの中には、いわゆる二世も少なくない。身内にものを教えるというのは、存外にやりにくいものなのかもしれない。
「まだしばらくかかりそうだな。エヴァンズ、剣を寄越せ」
言うや否や、師は模擬剣を掠めとった。テイラーが呆然としているうちに、手慣れた様子で剣先を直しにかかる。
「すいません、先生にこんなことさせて」
「ただ待っているよりかはマシだ」
師は模擬剣が真っ直ぐになったことを確認すると、軽く一振りした。どうということもない所作だが、テイラーはその姿に釘付けになった。
「先生、お願いがあるんですけど」
「何だ」
「図々しいのを承知の上で言うんですけど、手合わせしていただけないでしょうか」
突然こんな身の程をわきまえないことを言えば、途端に師は不機嫌になるに違いない。そう思ったが、気持ちを抑えられなかった。
「ああ、外で良いか」
ところが、返ってきたのは拍子抜けするくらいあっさりしたものだった。
「勿論です!」
テイラーは深々と頭を下げた。
師と剣を交えるのは、卒校以来初めてのことだ。あの頃と同じく、速く、鋭い剣に圧倒される。だが、今の自分はまがりなりにも、士官学校出の軍人である。そう思い、剣を握る手に力を入れた。
激しく金属がぶつかり合い、時折り受けきれずに肩や胸を強か打たれた。しかし、興奮状態にあるせいかさしたる痛みは感じず、むしろ闘志に火がついた。
テイラーが無我夢中で斬りかかったその直後、利き手に手応えを感じた。
当たった。
思わず小躍りしたくなるも、すぐさま応酬が始まった。
高速で繰り出される師の剣についていけなくなったところで、首筋に冷たい感触がした。
「参りました」
テイラーの言葉に、師は剣を納めた。その顔はどこか愉しげだった。
「当たるようになったな」
「はい」
じわじわと心が充たされていくのがわかる。もう少し堪能していたいところだが、背後から強い視線を感じた。
「稽古は済んだのか」
「うん」
振り返ると、少年がじっとこちらを見ていた。
「申し訳ないが、こいつを連れ帰る時間だ」
「とんでもないです。突然、無理言ってすみませんでした。ありがとうございました」
その間も、少年の視線が痛いくらいに刺さる。言うまでもなく、自分もやりたいのだろう。そうでなくとも、父親を盗られるようで面白くなかったかもしれない。
「せんせい、さよなら」
「え?あっ、はぁ。さよなら」
教官の前で先生と呼ばれるのは殊の外恥ずかしい。ましてや、それが教官の子となれば尚更だ。
「息子が世話になったな。エヴァンズ先生」
「ひぇ…?!」
すっかり取り乱し、もはや瀕死のテイラーを尻目に、教官父子は肩を寄せ合って帰路に着いた。
了
「こら!遊ぶんだったら帰れ!」
テイラー=エヴァンズは、稽古場を走り回る子供の一団に向け、本日何度目かの雷をおとした。
彼はこの道場の出身で、念願叶って士官となった後も、時折こうして手伝いに来ていた。
「だから、稽古場を走るな」
もっとも、子供たちにしてみれば、そんなものは雷でも何でもなく、精々が小鳥のさえずりのようなものである。
「ほら、もう遅いから帰れって」
一向に話を聞かない子供たちに業を煮やし、ひとりずつ追いかけ回しては捕まえ、強制的に退場させる。そんなことを繰り返していると、子供のひとりが反対方向に向かっていく。
「良いのか、まだ帰らなくて」
「うん。今日は特別だから」
少年は、テイラーの問いかけに満面の笑みで答えた。彼は、かつてテイラーがオニと呼び、今もって畏敬の念を抱いている人物の愛児である。
「特別…?」
一体何の話だろう。そう思い、聞き返そうとするも、バタバタと近づいてくる足音にかき消された。
「せんせー!これ曲がっちゃったー!」
「曲がっちゃったじゃない。ちゃんと直せ」
「できなーい!」
「こら!待てって」
「だって、さっき帰れって言ったじゃん。さよならー」
「さよならって、オイコラ!」
押し問答の結果、剣先の曲がった模擬剣を押し付けられ、テイラー深い溜め息を吐いた。
「ったくしょうがねえな」
彼は玄関脇の長椅子に腰を下ろし、すぐ横のスタンドにそれを投げ入れた。スタンドには、同じような剣が何本も立て掛けられていた。
テイラーは、そのうちの一本を手に取ると、柔らかい布で刃の部分を包み、柄を回しながら丁寧に錆を落としていく。
それが済むと、今度は手のひらに柄の部分を乗せ、目線と平行にし、歪みがないか確認する。そうして歪みがあれば、片手で剣先を、もう一方の手で柄を持ち、力を加え矯正する。
「ふっ!!」
それには結構な力が要るが、闇雲に力を入れると折れてしまうから難しい。微妙な匙加減が求められるのだ。
「ふう…」
一旦息を整え、もう一度力を込めようとしたところで、向かいからカツカツと長靴の音がした。テイラーは反射的に顔を上げ、それからぎょっとして目を見開いた。
「ジョージアせんせい?!珍しいですね、こんな時間に」
だが、すぐに平生を装い、模擬剣を下ろした。
「息子に迎えに来いとせがまれた」
「ああ、それで。でも、確かにこのくらいの時間にならないと、強い人来ませんからね」
テイラーが言うと、恩師は不思議そうにこちらを窺った。
「先生のお子さん、同じ年頃の子の中じゃ不動の一位ですから。早い時間に来ても、大概下の子たちの相手をしてあげるだけで、もて余している感じでした」
「そうか」
師はしばらくの間考えを巡らした後、稽古場へ目をやった。
「ところで、シモンズ先生の姿が見えないがどうかされたのか」
「シモンズ先生は、このところ体調が優れないみたいで、出たり入ったりなんすよね。それもあって、自分らが手伝いに」
幼年層の子供が帰り、多少はマシになったとは言え、稽古場の空気がいまいち締まらないのはそのためである。
「そういうことか。ひょっとして、息子の相手を?」
「手が空いているときは、ですけど」
「お前も忙しいだろうに、申し訳ないな」
「いえ、全然」
テイラーは大きくかぶりを振った。
「自分も兄弟子たちに散々相手してもらってましたし、そこはお互い様なんで、全然構わないです。先生のほうこそ大変ですね」
「ああ、肝心なことは何も話してくれない」
師はそう言って、苦笑した。
「ならそれもあって、先生に来てもらいたかったんじゃないすかね」
稽古場に目を向けると、丁度、当該人物が剣を構えるところだった。
少年の顔つきは、先程とは打って変わって真剣そのものだ。視線の先の相手とは、頭ひとつ分差がある。
だが、少年はそんなハンデをものともせず、軽やかな足取りで相手との間合いを詰め、瞬く間に壁際まで追い詰めていく。
ガチンと金属の合わさる音がして、一瞬少年の姿が消えた。そして、次の瞬間、下から上へ払った剣先が相手の腕を捉えた。彼はその小さな身体を活かし、剣を持った相手の下側に潜り込んでいた。
「ほう、上手いものだな」
「いや、本当に…って、えっ?!」
驚いて見上げた師は、これまで見たことのないほど、柔らかな表情をしていた。
「先生はいつも見てるんじゃ…」
「いや、錬成会以来だ」
「何でですか?先生が見てあげてるんじゃないんですか」
「剣術のことはシモンズ先生にお任せしている」
「はあ」
俄には信じられない。テイラーは思い切り疑いの目を向けた。
「前にいろいろあって、基礎練習くらいは付き合うが、手合わせすることはない」
「そうなんですか。って、もう見ないんですか」
「ああ、これ以上見ていたら口を挟みたくなる。どうもあいつが相手だと、冷静な判断が出来なくなる。おかしいだろう?」
「いえ、そんなもんすよね、 身内なんて」
門弟たちの中には、いわゆる二世も少なくない。身内にものを教えるというのは、存外にやりにくいものなのかもしれない。
「まだしばらくかかりそうだな。エヴァンズ、剣を寄越せ」
言うや否や、師は模擬剣を掠めとった。テイラーが呆然としているうちに、手慣れた様子で剣先を直しにかかる。
「すいません、先生にこんなことさせて」
「ただ待っているよりかはマシだ」
師は模擬剣が真っ直ぐになったことを確認すると、軽く一振りした。どうということもない所作だが、テイラーはその姿に釘付けになった。
「先生、お願いがあるんですけど」
「何だ」
「図々しいのを承知の上で言うんですけど、手合わせしていただけないでしょうか」
突然こんな身の程をわきまえないことを言えば、途端に師は不機嫌になるに違いない。そう思ったが、気持ちを抑えられなかった。
「ああ、外で良いか」
ところが、返ってきたのは拍子抜けするくらいあっさりしたものだった。
「勿論です!」
テイラーは深々と頭を下げた。
師と剣を交えるのは、卒校以来初めてのことだ。あの頃と同じく、速く、鋭い剣に圧倒される。だが、今の自分はまがりなりにも、士官学校出の軍人である。そう思い、剣を握る手に力を入れた。
激しく金属がぶつかり合い、時折り受けきれずに肩や胸を強か打たれた。しかし、興奮状態にあるせいかさしたる痛みは感じず、むしろ闘志に火がついた。
テイラーが無我夢中で斬りかかったその直後、利き手に手応えを感じた。
当たった。
思わず小躍りしたくなるも、すぐさま応酬が始まった。
高速で繰り出される師の剣についていけなくなったところで、首筋に冷たい感触がした。
「参りました」
テイラーの言葉に、師は剣を納めた。その顔はどこか愉しげだった。
「当たるようになったな」
「はい」
じわじわと心が充たされていくのがわかる。もう少し堪能していたいところだが、背後から強い視線を感じた。
「稽古は済んだのか」
「うん」
振り返ると、少年がじっとこちらを見ていた。
「申し訳ないが、こいつを連れ帰る時間だ」
「とんでもないです。突然、無理言ってすみませんでした。ありがとうございました」
その間も、少年の視線が痛いくらいに刺さる。言うまでもなく、自分もやりたいのだろう。そうでなくとも、父親を盗られるようで面白くなかったかもしれない。
「せんせい、さよなら」
「え?あっ、はぁ。さよなら」
教官の前で先生と呼ばれるのは殊の外恥ずかしい。ましてや、それが教官の子となれば尚更だ。
「息子が世話になったな。エヴァンズ先生」
「ひぇ…?!」
すっかり取り乱し、もはや瀕死のテイラーを尻目に、教官父子は肩を寄せ合って帰路に着いた。
了