ダラダラ中につきカメ更新 感想など、ちょろっとでも書き込んでいただけましたら泣いて喜びます🎵

2021/1/28  23:36

ちまちまと  そらごと

ここ最近、期せずして家にいる機会が多かったので、ちょこちょこと小ネタを書いてみました。

まず、お題。ゼインがサドでゼイン様でした(意味不明)。

これこそ拍手だろというネタですが、初めにこのお題を見たときから、満面の笑みでケインを弄ぶゼイン様のお姿が目に浮かびまして。なので、短いですがお題としました。

訓練生の居室は、消灯後には真っ暗になるため、灯りと呼べるものは、オニふたりが持っている手燭とあとは月くらいしかありません。なので、暗がりでほぼサウンドオンリー。何が行われているかみんなよくわからないという、究極の恐怖体験を味わうことが出来ます。

普段の日は、当直は基本ひとりですが、毎年この日だけは複数配置が鉄則。これにより、一月くらい予科生は騒ぎを起こすことなくイイコに過ごすという。


続いて「手紙」。お正月くらいに「優美」を読んで、久しぶりにまたユリア先生を書きたいなと思っているところに、「タリウス/ユリアでいちゃいちゃペチン」という宿題をもらいまして。とりあえず拍手で肩慣らしをして、あれこれいじくりまわした結果、あんな感じに仕上がりました。

たぶん、ユリアは仕事のことでタリウスと無駄にケンカしたり、ちょっとしたことで嫉妬したりするのがイヤであの仕事をやめたんだろうなと。オンオフを分けたい人なんだと思います。

それにしても、もうちょい気の利いたタイトルがつけられるようになりたい今日この頃。どうでも良いですが、「失せ物〜」は、なかなかタイトルが決まらなくて、長い間借りおきしていたのが「油断大敵火が茫茫」っていう。いや、ギリギリ差し変えて良かった、本当。


それから、お陰さまで拍手SSのほうも新しいのが書けました。リクエストという名のネタを提供してくださったおふたり、どうもありがとうございました!感謝申し上げます。まだしばらく募集しますので、何かあればおっしゃってください。
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2021/1/27  20:55

手紙2  小説

「それにしても、凄まじい記憶力ですね。予科生ひとりひとりに手紙を書くというのも、なかなか出来ることでは…」

「手紙というのは方便で、実際には評価に加え、一言二言書く程度です。毎年似たようなことをしていましたが、今回で最後だと思ったら、ちょっと張り切りすぎてしまって」

「ああ、もしかして、それで翌朝大変なことに?」

「し、知っていらしたんですか?最後の授業の日、私が寝過ごしたこと」

途端にユリアの声が裏返った。

「知っているも何もあの時間に下りてこなければ、普通にそう思いますよね」

「それで、シェールくんを?」

あのまま眠っていたらあわや大惨事になるところを、小さな隣人に救われた。そう今の今まで思っていたのだ。

「あなたが朝食に現れないことをあいつも気にしていました。なので、様子を見に行くよう促しはしました」

「ありがとうございました!」

唐突にユリアが抱きついてくる。タリウスは驚きながらも彼女を抱きとめ、膝の上に座らせた。

「お役に立てたのなら何よりですが…」

言いながら、ユリアに対してあからさまに非難の目を向けた。

「ああ、その、すみませんでした。あのとき、私、一方的に怒っていたのに。そんなふうにお気遣いいただいていたなんて、全く知らなくて」

問題の日は、例によって喧嘩の真っ只中だった。

「半分はあなたのためだが、残りの半分は違う。よりによって予科生最後の授業に、寝坊して講師が現れないなんて締まらないでしょう」

「ごめんなさい」

「今日はやけに素直ですね」

「だってそうでなくても、私、これではシェールくんに示しが付かないわ」

「あいつのことなら大丈夫です。誰にでも得手不得手はあると理解していると思いますよ」

「そうかしら」

「恐らくは。それよりも、あなたはもう少し計画的に仕事をする必要があったと思いますが」

「タリウス?」

そこでユリアの細腕を掴み、無理やり体勢を変えた。そうして、動揺する彼女のお尻をペチンと打った。

「い、いや!」

「嫌?あんなことをしでかしたのに?」

続いてもう一打を見舞うと、ユリアは羞恥に顔を覆った。

「ああ、タリウス。返す言葉が見付からないわ」

「翌日のことを考えて行動するなんて、出来て当たり前です。下手をすれば、すべてが水の泡になりましたね」

「ごめんなさい」

「しっかり反省しなさい」

「きゃー!!」

叩く手にそこそこ力を込め、続けざまに十ばかり打った。その間、ユリアはジタバタと子供のように暴れた。

「これに懲りたら、少しは良い子にしてください。良いですね」

「いっ!」

最後に一際強く打って解放する。

「私、あなたの娘に生まれなくて本当に良かった」

ユリアがお尻をさすりながら頬を膨らませた。

「きっといつもお尻が真っ赤だわ」

「私はまあ、それでもかまいませんが」

大人になってもこの可愛らしさである。どうせなら子供時分の彼女も見てみたいと思った。

「嫌です!絶対に!それに私、そうなったらたとえ子供でもあなたの奥方に嫉妬するわ」

それまでの甘えた様子から一転して、彼女の声音が鋭く変化した。

「初めてこんな気持ちになりました。この前だって、あなたがエッガーの…」

「エッガー?」

何故今またその名前が出てくるのか。予想していなかった人名にタリウスは驚いて声を上げた。

「つい今しがた、エッガーの話をしていて思い出しました。あの日、バルコニーにいらしたご婦人はエッガーの血縁では?」

「見ていらしたんですか?」

「はい、見ていました」

「あれは全然そういうのではない」

「でも、泣いていらしたわ」

突如として始まった取り調べに、タリウスは辟易した。

「待ってください。おっしゃるとおり彼女はエッガーの姉です。末弟が勘当されて一年、どうにも心配になって様子を見に来たそうです。知ってのとおり、予科生は面会が制限されていますが、無下に断るわけにもいかず、バルコニーから訓練の様子を見せた。それだけです」

「大方、私の予想したとおりでした」

「なら…」

「でも、嫌でした」

声こそ怒っていたが、顔は泣きそうだった。

「不安にさせたのなら謝ります。って、あのとき既に、あなたは私を避けていましたよね」

「そんなこと関係ないわ」

「もしかして、このことで更にへそを曲げたんですか?」

「ええ、若干」

タリウスは深いため息を吐いた。

「正直、あなたがこういうことを言うとは思いませんでした」

「それについては、私が一番驚いています。とにかく誰にもとられたくない、そう思いました」

「誰も取りはしない。ユリア、おいで」

憮然とするユリアをタリウスはもう一度膝に呼び寄せた。

「確かに、あなたが娘でなくて良かった」

「何故?」

ユリアが上目遣いでこちらを見る。その目をタリウスが正面から見返した。

「いつかあなたを嫁にやるなんて死んでもごめんだ」

「タ…!」

それから、些か強引に彼女の動きを封じた。彼女の言った、誰にも取られたくないという言葉の意味がわかったような気がした。




後半はおまちかね?の、いちゃいちゃペチン♡そして、なんだかんだ言って、エッガー家は兄弟仲がよろしいようで。


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2021/1/27  0:01

手紙1  小説

階段の途中で想い人の影を見付け、ユリアは軽い足取りで玄関まで迎えに出た。

「ミス・シンフォリスティ」

反射的に返事を返しながら、ユリアはその目をぱちりと瞬いた。もう二度と、少なくとも彼からは、その名を呼ばれることはないと思っていたからだ。

「こちらをあなたに渡すよう懇願されました。中身は極めて個人的なものだそうです」

「それはそれは、ご面倒をお掛けいたしました」

なるほど、手紙の表書きは確かにミス・シンフォリスティである。その若い筆跡から、差出人は恐らく教え子の誰かだろうと思った。鬼教官と称される男に私信を託すとは、なかなか命知らずだ。そんなことを考えながら、彼女は手紙の裏を返した。そして、ハッと息を飲んだ。

「ヒース=ターナー!ここで開けても?」

「もちろん構いませんが」

在職中、教え子から手紙をもらうことは決して少なくなかった。その殆どが淡い恋心を綴ったものだが、今手中にあるのは少なくともそういった類いのものではない。はやる気持ちを抑え、彼女は手紙の封を切った。

ユリアの目が忙しく左右に揺れる。そうしているうちに、目尻が下がり、反対に口角が上がった。

「最高の出来だわ。こんなことをしている場合ではないでしょうけれど」

「それが何か尋ねても?」

「ええ」

彼女はクスリと笑い、ほんの一瞬、手紙の端をめくって見せた。手紙は異国語で書かれているようだった。

「話せば長くなりますから、よろしければ私の部屋へいらっしゃいませんか」

ユリアは手紙を封筒に納めると、嬉しそうに笑った。


話は、今から一月ほど前へ遡る。

その日は、ユリア=シンフォリスティにとって、名目上、最後の出勤日だった。

予定されている訓練や授業はすべて終了し、成績も付け終わった後である。いつもは分単位のスケジュールに追われているここでも、この時ばかりは幾分ゆったりとした空気が漂っていた。

ユリアが教官室へ入室してきたのは、丁度朝礼が終わったタイミングだった。彼女は臨時雇の講師であり、また一般人であることから、朝礼への出席は義務付けられていない。

しかし、いつもなら、殊に午前中から授業を行う場合には、朝礼にも姿を見せるのが常である。このため、その場に居合わせていた教官たちは、珍しいこともあるとは思ったが、別段それ以上は気に止めなかった。

「おはようございます」

彼女はいつもと寸分違(たが)わぬ優美な所作で、この日も見る者を魅了した。一瞬、そんな彼女の額に玉の汗を見たような気がしたが、すぐさま思い過ごしと受け流した。

いついかなるときも涼しげな笑みを浮かべ、羽のように軽やかにたち振る舞う。それがミス・シンフォリスティがミス・シンフォリスティたる所以である。


「これから先日の課題を返却します。今回は評定とは別に、個別に評価を書いたものを手渡します。この時間を使って、各自評価を読み解いてください」

「読み…解く?」

前方の少年が呟くと、ユリアは待ってましたとばかり、満面の笑みを浮かべた。

「評価は異国語です。辞書や教科書を見てもかまいません。お隣と静かに相談しても結構ですが、私から皆さんに対する激励、簡単に言えばラブレターのようなものですから、そこは充分注意してください」

ラブレターのくだりで、教室内にどよめきが起こる。だが、ユリアがそのほっそりとした人差し指を唇に当てると、途端に潮が引いたように静寂が訪れた。

「おい、評価何だった?」

少年のひとりがこそこそと隣を窺った。

「それが、まさかの良!」

「うっそだろ!って、オレも良だった。手紙は?何書いてあった?」

「そんなの内緒だよ。てか、まだ一行も読めてないんだ。邪魔すんなよ」

似たようなやりとりが教室内の随所で行われる中、ヒース=ターナーは誰とも交わらず、ひとり沈痛な面持ちで座っていた。

級友たちがひとりまたひとりと教師に呼ばれる。しかし、ヒースには一向に声が掛からない。彼には、その理由を容易に推測することが出来た。

教師は一番最後にヒースを呼んだ。

「ミスター・ターナー。これがもし、過去の優秀なレポートを一字一句間違えず書き写すというものなら、間違いなく優です」

「ミス・シンフォリスティ、これは…」

「ですが、あなたも知ってのとおりそうではありません。したがって、評価は可です」

教師は弁解する言葉を遮り、淡々と先を続けた。

「可…?不可ではないんですか」

「あなたのこれまでの授業態度とこれからに期待した結果です。たとえ一行でも自分自身の言葉で書いてくれさえすれば、もっと良い評価を付けられただけに残念です」

「すみません、ミス・シンフォリスティ。本当に…」

ヒースが思わず声を上げかけるのを、シッと教師が制した。一瞬、周囲の視線を集め掛けたが、彼女が微笑み事なきを得る。

「もう結構です。魔が差したのでしょう。それからこれを。時間を作って読んでみて」

教師は他の訓練生にしたのと同じように、ヒースにも封書を手渡した。評価などしようもないというのに。


「その返事がこの手紙ですか」

「ええ、と言っても中身は学期末の課題ですけど。ラブレターだと思いました?」

ユリアがクスクスと笑った。

「いえ、他の者ならともかく、ターナーに限ってそれは」

「そうだとしても、よくあなたに渡しましたね。信頼されている証だとは思いますが」

「是が非でもあなたに届けたかったのでしょう。そこはターナーらしいが、不正については、正直意外でした。普段のターナーはかなりの完璧主義です」

「完璧主義ゆえです。適当に書いて適当に出すということが出来なかったのでしょう。そこにたまたま誘惑があった」

「盗まれたレポートの出所に心当たりが?」

「エッガーでしょうね」

ユリアはこともなげに言ってのけた。

「何故そう思ったんですか」

「何故って、例のレポートのオリジナルを書いたのがエッガーの兄だからです」

ユリアはタリウスが着任する前から中央士官学校で教鞭を執っている。どうやら彼女がエッガー家の人間と接触するのは、今回が初めてではないらしい。

「いろいろと問題のある兄弟ですが、語学には堪能です。実際、些かお節介な兄が送ったレポートを、弟、カーンは使わなかった。使う必要がなかったのでしょう。兄に劣るとも勝らない良いレポートを書いていましたよ。ターナーとエッガーは親しいですか?」

「仲は悪くないと思います。それに二人は同じ居室です」

「そうですか。いずれにしても、すべては私の記憶の中での話です。裏はとれていませんので、そのおつもりで」

「あなたが決着を着けたのなら、今更深追いをするつもりはありません」

ユリアのお陰で、なかなか興味深い話が聞けた。それだけで充分だった。


まずは前半、お仕事パートから。

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2021/1/18  18:00

感謝感激!  そらごと

先日こちらでもちょこっとご紹介申し上げた星梅さまに、pixivリクエストでなんとなんとうちの父子を描いていただきました!

pixivで公開されていますが、掲載許可をいただきましたので、拙サイトにも飾らせていただきました。本編「重石」からの1コマです。

元々激しく自分好みの作家さんだったこともあって、一目見てズキューン!

とにかくタリウスが、タリウスが…!


私の陳腐な表現では作品の素晴らしさが全く伝わらないと思うので、興味をおもちの方はぜひおもちゃ箱本体の「NEWS」タブからご覧ください。ジョージア家のお仕置きの様子が垣間見れます。



閑話休題。さて、お題を二つ上げました。

「森」は、シェールにとって、タリパパは自慢のお父さんなんだよ的なお話です。

シェールは、小さい頃からお父さんというものに対して、漠然としたあこがれを抱いていました。なので、タリウスと親子関係になったときに、これまで通り「お兄ちゃん」と呼んで良いと言われても、結局は自分の意思で「とうさん」と呼ぶことを決めました。

作中、やたら「とうさんとうさん」言っているのも、今までの分を取り返そうとしてるのかななんて思ったり。

タリウスのほうも、シェールに「とうさん」と呼ばれる度に、少しずつ父親になっていっているんじゃないかと思うのです。

たかが呼び名、されど呼び名ですね。


「犠牲」のほうは、久々に拍手SSを更新しようと思ったところ、予想外に長くなってしまったのでお題としました。時代的にキールはもはや新兵ではない筈なんですが、こちらもいくつになってもかわいいご様子。

というわけで、いい加減新しい拍手SSを書きたいのですが、なんか書き始めると無駄に長くなってしまい、結局SSにならず。こうなったら橘先生ネタ(覚えていらっしゃいます?)でもと思うも、それこそちょっとした短編が書けそうなボリュームになり、ひとまずベンド。

ちょっと読んでみたいと思われるような小ネタ、ありますか?もし何かございましたらこっそりお知らせください。
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2021/1/13  21:58

【森】2  小説

シェールはランタンを片手に先陣を切って歩いた。時折、リュートを背負った父を振り返りながら。

森の入口付近まで来ると、俄に辺りが明るくなった。松明や手燭の炎に照らされて、知った顔がいくつも浮かび上がってくる。

「シェール?リュート!!」

シェールはその中のひとつに向かって駆け出した。

「おばさん、ごめん。リュート怪我してて、僕が悪いんだ」

「何馬鹿なこと言ってるの。そんなことあり得ないわよ。第一、あんただってボロボロじゃない」

リュートの母親である。彼女はつい数秒前まで悲壮に満ちた表情をしていた。

「母さん、ごめん」

「ごめんじゃないわよ。人様に迷惑ばっかり掛けて。本当にもうすみません」

彼女はリュートを睨み付け、それからタリウスにペコリと頭を下げた。

「足を痛めているようなので、良ければこのままお宅まで送ります」

「そんな、申し訳ない。もうどこまで馬鹿なのよ、あんたは」

「かまいません。それに、馬鹿なのはうちも同じです」

言葉とは裏腹にタリウスの表情はどこか柔らかである。だが、次の瞬間、思い直したかのように息子へ厳しい視線を向けた。

「シェール、きちんとお詫びをしなさい。皆こんな時間までお前たちを捜し回ってくれたんだぞ」

シェールははっとして、周囲の大人たちに頭を下げた。リュートもまた一旦父の背から降りて、それに倣った。


「うちの人、今夜は遅いから送ってもらって助かったわ。その上、リュートの手当てまでしてもらって」

リュートの家に着くと、父は改めて傷の具合を確認し、簡単な処置を行った。仕事柄、怪我の手当てくらい、父にとっては慣れたものなのだろう。

「あくまでも応急措置です。明日にでも医者に診てもらってください」

「出来たら泊ってってもらいたいところだけど、うちはエレインのとこみたいに広くなくて」

「それには及びません」

それから、父とふたりリュートの家から辞し、今夜の宿に向かった。本来なら今日のうちに王都へ帰り着くはずだったが、一連の騒ぎですっかり遅くなり、これでは閉門に間に合うかどうか定かではない。

「ひとつ聞かせろ」

「何?」

「お前はあの崩れた崖を一人で登れたんじゃないのか。もしそうなら、一旦お前だけ戻って助けを呼びにくれば良かったのでは?」

「それは僕も考えたけど、でも。リュートの具合が悪そうで心配だったんだよね。もしひとりにしてその間に何かあったらって思ったら、あの場を離れられなくなった。間違ってたかな」

「悪い選択だとは思わない。だが、そこまで考えられるのなら、事を起こす前にそれがどういう結果を生むか、よく考えなさい」

「ごめんなさい。ここに来る度、リュートとその、問題ばかり起こして。もうここには来ないほうが良いのかな」

毎度のことではあるが、どうも郷里の水に触れると途端にたがが外れるのだ。

「お前は諸悪の根元がリュートにあるとでも言うつもりか」

「そんなこと言ってない!ただ、リュートと一緒にいると楽しくて、つい無茶したくなるっていうのは、あるんだけど…」

「いいか、シェール。リュートのお母さんの顔を見ただろう。あれがお前のしたことだ」

シェールの脳裏に、先程見たリュートの母親の様子が映し出される。思い出しただけで胸が苦しくなった。

「とうさんも心配してくれた?」

「当たり前だ」

大きな手がくしゃくしゃと髪をかきまぜた。

「王都に戻ったらしばらくは外出禁止だ。それから、今夜は食事抜きだ」

「はい…ってことは、お仕置きしないの?」

どんなに悪いことをしたとしても、全ての罰を一度にもらうことはない。

「こんな傷だらけの状態で叩けるわけがない」

崖の登り降りを繰り返した結果、手の爪はボロボロに欠け、指先には所々血が滲んでいる。その上、頬にはいくつも擦り傷を作っている。見えない部分にも傷を負っていると容易に想像出来たのだろう。

「全く無茶ばかりして」

頬の傷のひとつに父の手がそっと触れた。


翌朝、夜明けと共に彼らは宿を出た。その際、一瞬の隙をついて、シェールはひとりリュートの家へ向かった。

いくら気心が知れているとは言え、流石にこの時間に正面から訪ねていくのは気が咎める。そこで、先程から小石を拾っては、リュートの部屋の窓にぶつけていた。

「シェール?!一体どうしたんだよ」

リュートは自分の姿をみとめると、すぐさま窓を開けてくれた。

「ごめんね、こんな朝早く。でも、どうしても言いたいことがあって」

「何?」

リュートが身構えるのがわかった。

「昨日は変なこと言ってごめん」

「昨日って、ほぼ丸一日一緒にいたじゃん。どの話?」

「あ、確かに。えーと、その、リュートが士官学校に行きたいって言ったときに、うらやましいとか言っちゃって。そんなこと言われたら、受けにくくなるよね。そうじゃなかったとしても、何か変なこと言って、ごめん」

「それ言いにわざわざこんな朝から?」

「いや、だって。とうさん仕事だし、僕も学校あるから、今出ないと間に合わなくて」

「ならこんなとこで油売ってたらヤバイんじゃないの?昨日の今日だし」

「まあそうなんだけど。でも、昨日は奇跡的にあんまり怒られないで済んだんだよね」

ふぅと、リュートが溜め息を吐いた。

「シェールはさ、あの人のことが、おじさんのことが大好きなんだね。だから、おもしろくないんだよ」

「そんなんじゃなっ…!」

シェールは思わず大きな声を上げ掛け、慌てて口を押さえた。

「おじさんがいい人なのは何となくわかった。けど、シェールには悪いけど、オレは二年間あの怒鳴り声を聞くのは無理だって思った。だから、オレも中央は受けない」

「リュート」

どこから突っ込んで良いやらかわからないが、ともかくリュートなりに自分の意を汲んでくれたようである。

「昨日あれから父さんにも怒られんだけど、正直おじさんよりマシって思った。だから、シェールも早く帰んなって」

「うん。そうする」

確かに、折角父が情けを掛けてくれたというのに、これでは元の木阿弥である。

「気を付けて帰んなよ」

「うん。リュートもお大事に。また来る!」

そこからは全力疾走である。


「シェール!一体何のつもりだ!」

思ったとおり、父はまさに怒り心頭だった。

「ごめんね、とうさん。どうしてもやり残したことがあって」

「いい加減にしろ。もっと考えて行動するよう、昨日言ったばかりだろう」

「考えたよ。考えた結果、譲れなかった。だから、ちゃんと罰は受けるよ」

「開き直る気か」

「そんなんじゃないけど…」

「もう良い。ともかく今は時間がない。その代わり帰ったら覚悟しておけ」

「うん」

先程までの威勢はどこへやら。途端に胸がきゅっとして、急激に情けない声になった。

「痛った!!」

バシンという音と共にお尻が熱くなる。あまりのことに、シェールは思わずつんのめりそうになった。間違いなくフルスイングである。

「こんなものは叩かれたうちに入らない。ほら、早くしろ」

「はい!」

ひとまず良い子に返事を返し、それから、ずんずんと進む父の背中を懸命に追った。

← 打ち忘れてました

何だろう。ひたすらベタベタする父子が書きたかったのです。そして、リュートを脅すだけ脅して、息子には甘いっていう…


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