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2021/11/21  2:23

☆彡☆彡☆彡☆彡☆彡☆彡  小説


頭の中で、先程イサベルが言ったことがリフレインする。まさか彼女があんなことを言うとは思わなかった。

自分は純粋に、イサベルの知識やそれに基づく考え方に感銘を受けた。だからこそ、彼女に指揮官の座を譲ろうと考えた。当然、彼女自身もまたそれを望んでいると思ったからだ。

しかし、級友と教官の見守る前で、彼女はあまりに淡々とそれを否定した。ノアは、自分自身の熱量との差に愕然とし、それから無性に馬鹿馬鹿しく思った。

それがここへ来て、今度は真っ向から賞賛を浴びせられ、もはやどう処理して良いか見当もつかなかった。

「…ノア。ねえ、ノアってば。おい!聞けよ!」

ノアが完全にひとりの世界に没頭していると、自分を呼ぶ荒々しい声が聞こえた。

「コ、コ、コ、コナー?!」

声の主を見るなり、ノアは素頓狂な声を上げた。これではまるで鶏である。

「い、いつの間にそこに?」

「さっきからずっといたよ。どうしたんだよ。疲れてるだけ?それとも…」

間近に迫った級友の瞳は、怒りを通り越して呆れているように見えた。

「平気だよ、全然」

「もしかして、またオーデン?」

「えっ?!何で?」

ノアがあたふたして級友を見返すと、これでもかと言うくらい大きなため息を吐かれた。

「わかりやすいな、本当」

「な、何が?」

「頼むよ、ノア。今は余計なことを考えてる場合じゃない。わざわざジョージア先生に頼み込んで、オーデンの本音だって聞き出したんだ。もう充分だろう」

イサベルに指揮官を譲りたい。そう息巻くノアに、コナーはひとまず彼女の意思を確認すべきだと主張した。そして更に、自分たちでは彼女の本心を聞き出すことが出来ないと言って、その役を教官に託した。

「感謝してるよ、コナーには」

「そう思うんなら、集中して。わかってると思うけど、オーデンもラサークも、紅白戦が終われば北へ帰るんだよ」

何故だろう。級友の言葉に、胸をえぐられたような心地がした。そんなことは、端からわかりきっていたというのに。

「わかってるよ。それが何だったって言うんだよ」

「オーデンを勝たせたいなら、今この瞬間、やるべきことをやるしかない」

刹那、胸の傷はふさがれ、むしろ心がたぎるのを感じた。


数日後、様々な思いが交錯する中、彼らは紅白戦の朝を迎えた。

屋外演習場には、観覧席が設けられ、お偉方がずらりと並んだ。例年であれば、統括を筆頭に、見知った顔ぶれが二三並んで終わりであるが、今年は事情が異なる。統括の横には、見知らぬ賓客がつらなった。

客人と統括とが何事か言葉を交わし、主任教官に目で合図する。そして、ゼイン=ミルズもまた、即座に自身の部下を呼びつけた。

「ジョージア教官」

苛立った声に一気に緊張が走る。

「何故赤軍は副官が二人いる。今すぐどちらか下がらせろ」

言われて、タリウスははっとした。ノア=ガイルズ率いる赤軍には、どういうわけか参謀として、コナー=デリックとイサベル=オーデンの二名が付いていた。

「ガイルズ、副官は一人までだ」

「で、ですが、せんせい」

ノアは見るからに狼狽えた。来賓の手前、言い合っている時間はない。あくまで指揮官の決定を尊重するつもりだったが、この際やむを得ない。

「ルールを順守しろ。オーデン、お前は下がれ」

「わかりました」

イサベルが一礼して踵を返す。だが、彼女が立ち去り掛けたときだ。

「待って!」

ノアが叫んだ。

「オーデンは残って」

「おい!ノ…」

「俺が下がる」

発言の真意がわからず、一同沈黙する。

「ふ…」

ふざけるな。タリウスが怒鳴るより前に、甲高い声が割って入る。

「ばっかじゃないの!!」

「オーデン、落ち着け」

「落ち着いています。こんな無責任な指揮官の補佐は出来ません。失礼します」

一気に捲し立て、イサベルは回れ右で撤退した。

「デリック、いざというときはお前が指揮を執れ」

淡々と言い放ち、教官もまた離脱した。

「どうする、ノア」

級友の冷ややかな声でようやくノアの意識が現実へと返る。

「俺が代わったって良いけど、それで良い?一生後悔すると思うけど」

「…る」

「え?何?」

「やる。俺がやる。どんな結果になっても俺がやる」


予想したとおり、紅白戦の結果は赤軍にとって思わしいものではなかった。それというのも、冒頭のいざこざが引き金となり、一時的に士気が下がったからに他ならない。それでも惨憺たる結果にならなかったのは、作戦自体がそう悪いものではなかったことを物語っていた。


その夜、未だ興奮冷めやらぬうちに、ノアは昼間の失態に関して、それはもうこっぴどく叱られた。

「ノア!やっと解放されたんだ」

ほうほうの体で解放されたノアをコナーが出迎えたのは夜も更けてからだ。

「どうにかね。ジョージア先生に、一年分まとめて叱られたって感じ」

「それって、普段怒られてないから言えるんだよ」

「そうかな。そんなことより、コナー。本当にごめん。どうかしてた」

「もう良いよ。散々しぼられたんでしょ」

「それは俺が悪いからだよ。器じゃなかったんだ」

「そんなことない。確かに今日のノアはいろいろといただけなかったけど、だからって他の人がやれば勝てたかって言えばそんなことない。みんなだって、それがわかってるから何も言わないんだよ」

友人の言葉に、危うく泣きそうになるのをノアはどうにか堪えた。

「最初から迷わずコナーを選ぶべきだった」

「どっちも選びきれずに自分を捨てるとか、斜め上過ぎ」

コナーが笑い、ノアもまた苦笑いを返した。


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