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2021/7/18  2:03

続ジョージア先生の長い長い夜4  小説

「全く公安は、どこまで人を虚仮にすれば気が済むんだ!!」

勢い良く教官室の扉を開き、ゼイン=ミルズは息巻いた。

「公安にいなかったのか」

絶句するタリウスを横目に、老教官はかまわず上官に詰め寄った。あの後、部下たちから報告を受けたゼインは、単身公安に向かった。

「いるにはいるが、血縁者にしか身柄を渡せないと言ってきた」

「血縁者って、そんな馬鹿な。ここにいる間は、教官が保護者みたいなものだ」

「同じことを何度も説明したが、頑として聞き入れようとしない。奴らは、我々がカヴァナーを退校にすると思っているようだ」

「カヴァナーを退校にするのか」

「そんなことは今ここで私が決めるようなことではない。だが、もしそうなれば、カヴァナーが自暴自棄になり犯罪に走るやもしれない。そうなったときに我々では責任がとれない。そういう理屈だ」

「よくもまあ、いけしゃあしゃあとそんな屁理屈を思い付いたものだ。単なる嫌がらせだろうに」

「あとはひたすら、規則だと繰り返すだけだ。全く忌々しい。それと言うのもジョージア、すべては君の指導が悪いからだ」

「大変申し訳ございません」

もはやタリウスには、平身低頭して許しを乞う以外に出来ることはない。

「申し訳ないと思うのなら、徽章を外せ」

「はい?」

タリウスは思わず顔を上げた。恐る恐る上官を窺うと、その瞳が妖しく光る。

「聞こえただろう。徽章を外し、直ちに軍装を解け。その上で公安に行き、カヴァナーを連れ帰れ。教官としてではない。血縁者を装え」

「は?」

上官の命令が頭で処理しきれない。

「そんな無茶苦茶な」

タリウスが困惑していると、老教官が何とか上官を取り成そうと試みていた。

「ノーウッド教官が行ってくれたところで、一向に構わない。さすがに父親では董(とう)がたちすぎているだろうから、そうだね、伯父上でどうだろうか」

「行け、ジョージア」

が、すぐさま翻意したようだった。

「本気で仰っているんですか」

「私はいつだって本気だ」

確かに、ゼインは相変わらず口許に笑みをたたえているものの、目は笑っていなかった。


ポーター=カヴァナーは、石造りの床に身体を沈め、夢と現を行ったり来たりしていた。身体が凝り固まり、鉛のように重く感じる。だが、心の重さのほうはその比ではない。

一体どこで道を過ったのだろう。ポーターは、冷たく硬い独房の中で、ひとり過去の自分に思いを馳せていた。

ポーターは物心ついた頃から曲がったことが嫌いで、正義の味方なるものに憧れていた。そして、少し大きくなってからは、将来公安に入りたいと思うようになった。

だが、そんな彼に転機が訪れた。その日、家族と共に王都を訪れていたポーターは、不注意から両親とはぐれてしまう。

当然のように助けを求めた公安で、信じられないくらい冷たい待遇を受けたポーターは、絶望し、人目も憚らず泣いた。

そのとき、彼に手を差しのべてくれたのが将校の軍服を身に纏った青年だった。青年は、泣きじゃくるポーターをなだめ、家族の元まで送り届けてくれた。そして去り際に、困ったような表情を浮かべ、言った。

「あまり家族を心配させるなよ」

その日を境に、将来の夢が公安から軍人に変わった。それが何故、自分が公安に囚われるような事態になったのだろう。


「おい、お前。起きろ!」

突然、耳元で叫ばれたと思ったら、今度は身体を揺り起こされた。お陰で頭がガンガンする。

「喜べ、父上が迎えにきたぞ」

「父が…ですか?」

身体を引きずるようにしてどうにかこうにか起き上がると、目の前に手燭の光を当てられた。闇に慣れていたせいで目が眩んだ。

「何で?そんなわけは…」

実家はここから半日以上掛かる場所に位置している。今が何時なのか定かではないが、たとえ朝を迎え、開門していたとして、こんなに早くは着かない筈だ。

「知るか。こっちは忙しいんだ。早く出ろ」

乱暴にせっつかれ、ポーターはふらふらと男の後を追った。そこから数歩歩いたところで、向かい側から見知った影が近付いてきた。

「せん…っ?!」

「この馬鹿息子が!!どれだけ心配したと思っている!!」

ポーターが影の主を呼ぼうとした瞬間、雷に撃たれたような衝撃が走った。そうして気付いたときには胸ぐらを掴まれ、右頬に焼けるような痛みがあった。

「何とか言ったらどうだ」

「えっと…?」

状況がわからなすぎて、夢をみているのか、もしくは光に目が眩み、幻覚を見ているのだとおもった。だが、それにしては頬の痛みが強烈だった。

「ここから帰りたくば、先生と呼ぶな。息子のふりをしろ」

『父』は、耳元で囁いた。

「こっちはこんな時間までお前を捜し回っていたというのに、お前のほうは呑気に高いびきか」

「すいま…」

反射的に謝罪を口にしようとすると、首もとに圧をかけられた。これでは苦しくて声が出せない。

「だいたいお前は…」

「まあまあ、お父さん」

更なる怒声を浴びせかけようとするのを男が制する。

「気持ちはわかるけど、もう夜中なんで」

「失礼。連れて帰っても?」

「ああ、どうぞ」

「とっととしろ」

ひとまず首もとは解放されたが、今度は右腕を痛いくらいに掴まれた。そのまま『父』に引きずられるようにして、ポーターは公安の中をずんずんと進んだ。

「ああっと、ちょっと待ってお父さん」

「何か」

背後から呼び止められ、彼らはぴたりと歩みを止めた。

「参考までに聞きたいんだけど、お父さん仕事は何を?」

「教師だ」

「ああ、そう。先生か、どうりで…」

男は未だぶつぶつ言っていたが、『父』は構わず歩き始めた。自動的にポーターもまた連行された。


「せんせい」

公安から脱出し、しばらく行ったところで乱暴に縛めが解かれた。

「この恥さらしが。言っておくが、ミルズ先生の怒りはこんなものではない。帰ったら覚悟しろ」

「先生、本当に申し訳ありませんでした!!」

「申し訳ありませんで済んだら、公安は要らない。教官もだ」

教官の顔をまともに見たところで、堪えていたものが一気に噴き出した。どう足掻こうとも、一度溢れだした涙が止まることはなかった。


ほっぺの一発は『父』からの愛のムチ。昔、シェールにも同じことしていましたっけね。

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