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2021/7/17  22:46

続ジョージア先生の長い長い夜3  小説

「トレーズ殿」

教官室には客人がいた。ファルコン=トレーズ、新兵の教育隊長であり、ゼイン=ミルズの教え子である。

「ああ、教官。先生に頼まれて、ちょっとな」

ファルコンの息が荒い。たった今駆けつけてきたばかりなのだろう。

「それで、兵舎に住み込んでいる者を中心に捜索にあたらせましたが、今のところ目ぼしい情報はありません。新兵はいなくなった訓練生の顔を知っていますので、情報の精度は高いように思います」

「つまり、城下にはいないと?」

「それなんですが、レックスに、城門警備隊長に確認したところ、その可能性も低いようです。城門は、絶えず人の出入りを監視しているわけではないそうですが、それでもあの制服が外に出たら、記憶に残るだろうと言っていました。最近は荷馬車の類いは公安が検めていますし、恐らく外には出ていないかと」

「なるほど。で、ジョージア。君のほうは何かわかったのか」

「カヴァナーはいわゆる貧民街に出入りしていたようです」

「何?」

ゼインが眉をひそめる。タリウスは出来るだけ簡潔に、かつ冷静にチェイスから聞き出したことを報告した。

「スラムで公安ごっことは、素晴らしい趣味だね」

言葉とは裏腹に、声はどこまでも無感情である。空気が痛いほどに張り詰めた。

「すみません、先生。スラム街は盲点でした。ただ昼間ならともかく、日が落ちた後にあのあたりへ部下を行かせるのは…」

「至極全うな判断だ。トレーズ、君が謝ることはない」

それきり彼らは沈黙した。


「駄目だ。どこにもおらん。全く無駄足もいいところだ」

緊迫した空気を破ったのは、教官室の扉から現れた老教官だった。

「ああ、ノーウッド教官。ちょうど良いところに帰ってきた」

「おお、トレーズも来ていたのか。何かわかったのか」

タリウスは再度、先程の話を繰り返した。

「最近の若いのはお遊びが過ぎるな。全く気は進まないが仕方ない。行くぞ、ジョージア」

「はい」

「ああ、いや…」

揃って出掛けようとする部下をゼインが制した。

「主任教官殿はここで留守をお守りください」

「だが」

「指揮官は安易に本陣を離れるべきではない。 だろう?」

「あのあたりは公安の縄張りだ。二人とも心して当たるように」

老教官の言葉に、ゼインは心ならずともこの場に残る決断をしたようだった。


話に違わず、今夜は公安の動きが活発で、貧民街の入口にもそれらしい男たちが張り付いていた。そのため、彼らは一旦二手に分かれ、各々近くの路地から侵入した後、合流した。

「気付いておるか」

老教官は前を向いたまま囁いた。

「はい。四人、五人、いや、もっとでしょうか。走りますか」

先程から彼らの後を複数の足音がついてくる。

「お前さん、この辺の地理には明るいか」

「いいえ、全くわかりません」

「ならば、やめておいたほうが無難だろう。回り込まれるかもしれんし、どこに仲間が潜んでいるかもわからん」

足音との間合いが徐々に詰まる。二人は同時に歩みを止めた。そして、振り向いた瞬間、顔面に固い雨粒のようなものが降り掛かった。

目深にフードを被り直し、どうにかすべてを避けきる。攻撃が止んだところで、タリウスは腰の得物に手を掛けた。

「やめろ!ジョージア、剣を退け」

上官の叫び声に、タリウスは咄嗟に剣を下ろした。代わりに左手を伸ばし、目の前に突き出された角材を掴んだ。へし折るには硬すぎるが、敵から奪うことには成功した。

「よく見ろ。子供だ」

「な…」

暗くてよく見えないが、言われてみれば、目の前の男も石を投げつけてきた男も随分と小柄だ。老教官が止めてくれなければ、危うく後味の悪い思いをするところだった。

「よくわかりましたね」

だが、そうなると、普段、何かにつけて目が見えないだ、耳が遠いだの言っているのは何なのだろう。

「なに、あいつらからは若い匂いがする」

そんな心中を見透かすように、老教官はのたまった。

「何をぐちゃぐちゃ言ってやがる。盗んだ金を返せ」

「金?何やら人違いをしていないか」

「しらばっくれるな!泥棒を捕まえるとかなんとか言って、うちから金をかっぱらって行っただろうが」

「捜査にかこつけて、小金をくすねていきおったのか」

「最低だな」

「だから、うるさいって言っているんだ!」

「ああ、わかったわかった。よし、この老いぼれが小遣いをくれてやろう。その代わり、教えて欲しいことがある」

老教官は財布から硬貨を取り出し、年かさであろう少年に差し出した。少年は驚きながらも、それを受け取った。

「昼間、ここに士官候補生が来ただろう。軍服を着た、年若い少年だ。どこに行ったか知らんか」

「ああ、あの変な奴なら公安が…」

少年が硬貨をしまい、口を開き掛けたそのときだ。突然、夜空をつんざくようなかん高い音が耳に響いた。

「ヤバイ!ずらかるぞ!」

少年たちがどよめき、あっという間に散り散りになる。タリウスは、先程取り上げた武器を持ち主の少年に向かって放り投げた。少年は一瞬こちらを見やったが、すぐさま闇に向かって走り出した。

「やれやれ、子供より厄介なのが来たぞ」

笛の音と共に複数の灯りが近付いてくる。二人は心底うんざりした様子でため息を吐いた。

「軍人がこんなところで何をしている。よもや協定を忘れたわけではないだろうな」

「すまんすまん。別にお前さんたちの縄張りを荒らそうってわけじゃないんだ。ただ少々迷子を捜しておってな」

「迷子だと?ああ、ひょっとしてあの間抜けな士官候補生のことか」

教官たちがはっとして顔を見合わせる。

「あいつなら、我々が保護している。適正にな」

男の言葉に一応の安堵を得た直後、タリウスは腸が煮えくり返るほど激しい怒りに見舞われた。

「それにしても、士官の卵にこんな風紀の悪い場所の出入りを許しているとは、天下の中央士官学校も落ちたものだな」


なんだろう。めっちゃ楽しく書いています!こういうのひさしぶり。好きなこと出来るって、しあわせ〜。

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