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2021/4/4  8:32

♪  小説

ときは夕暮れ、タリウスはひとり自室でまどろんでいた。

目蓋の裏に映し出されているのは、在りし日の息子である。息子は、今よりも格段に小さく頼りない身体で、奔放に動きまわっては、よく迷子になった。

そうして発見したときに、泣きながら自分を追い求めていることもあれば、我関せずであそびに熱中していることもまたあった。いずれにせよ、見付かるまで気が気ではなかったと記憶している。

「ただいま!」

「ああ、おかえり」

成長した息子の声に、意識が現実へと返る。タリウスはベッドから身体を起こすと、シェールの姿をまじまじと見詰めた。

「何?」

「いや、大きくなったなと思って」

「どうしちゃったの?急に」

「昔のことを思い出していた。ここへ来た頃は、ほんの子供で、暇さえあれば迷子になっていたというのに」

「今だって子供なんだけどな。 迷子には、なんないけど…」

言いながら、シェールは頭をかいた。

「あ、そうだ。とうさん、これ」

シェールは思い出したとばかりに、自分の引き出しから小さな袋を取り出し、こちらに寄越そうとした。

「今月分と、あと先月の分もちょっと入ってるって」

「それはお前が働いて、稼いだお金だろう?」

「そうだけど」

「いくらか欲しいとは言わないのか」

無造作に差し出された袋に、タリウスは手を伸ばさない。この袋の重みを理解しているからだ。

「別に。今欲しいものないし」

「欲のない奴だな」

「そんなこともないけど、たまたまだよ」

これ以上、孝行息子の好意を無下にするわけにもいかず、タリウスは袋を受け取った。

それは、少し前の自分には考えられないことだった。無論、息子を働きに出し、稼ぎを得ることには、今でも抵抗がある。自らの不甲斐なさの象徴だとすら思う。だが、それが本人の望むところであるのなら、尊重するより他ないと思った。

「シェール。ありがとう」

自分の言葉に、はにかむ顔が昔と寸分たがわず愛おしかった。


続くかも?


日々ご来場&パチパチありがとうございます!
怒涛の年度替わりです。身体がおかしいのとヤル気スイッチがどっかいってしまった関係で、作業効率が落ちまくりですが、時々癒されに来ます…

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