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2021/11/22  0:58

鬼神  そらごと

約二か月ダラダラとお送りしました「鬼の本領」スピンオフですが、どうにか終焉を迎えました。

なんだろう。この二か月の間に、ノアさんの性格がおかしな方向にいきましたね。当初はあんなぶっ飛んだキャラではなく、フツーに頭良くて性格も良い、未来の監督生の予定だったのですが。まあ、いきなり男子校に女の子来たらおかしくなりますわね。

そのうちオマケ的な感じで、イサベルとの最後の絡みも書けたらと思います。


さて、続いて本編です。今秋はネタが何も降ってこないと言っていた矢先、ザクザクとものすごい勢いでいろいろやってまいりまして、↑と並行してチマチマ書いておりました。

【きしん】とは、目に見えない、聞こえもしないけど、確かに存在する恐ろしい力をもった精霊のことだそうで、今回の話のキーとなる存在です。↑の呑気な雰囲気とは違い、結構ドローっとした話に仕上がる予定です。おとうさん、またしても受難な予感。
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2021/11/21  2:23

☆彡☆彡☆彡☆彡☆彡☆彡  小説


頭の中で、先程イサベルが言ったことがリフレインする。まさか彼女があんなことを言うとは思わなかった。

自分は純粋に、イサベルの知識やそれに基づく考え方に感銘を受けた。だからこそ、彼女に指揮官の座を譲ろうと考えた。当然、彼女自身もまたそれを望んでいると思ったからだ。

しかし、級友と教官の見守る前で、彼女はあまりに淡々とそれを否定した。ノアは、自分自身の熱量との差に愕然とし、それから無性に馬鹿馬鹿しく思った。

それがここへ来て、今度は真っ向から賞賛を浴びせられ、もはやどう処理して良いか見当もつかなかった。

「…ノア。ねえ、ノアってば。おい!聞けよ!」

ノアが完全にひとりの世界に没頭していると、自分を呼ぶ荒々しい声が聞こえた。

「コ、コ、コ、コナー?!」

声の主を見るなり、ノアは素頓狂な声を上げた。これではまるで鶏である。

「い、いつの間にそこに?」

「さっきからずっといたよ。どうしたんだよ。疲れてるだけ?それとも…」

間近に迫った級友の瞳は、怒りを通り越して呆れているように見えた。

「平気だよ、全然」

「もしかして、またオーデン?」

「えっ?!何で?」

ノアがあたふたして級友を見返すと、これでもかと言うくらい大きなため息を吐かれた。

「わかりやすいな、本当」

「な、何が?」

「頼むよ、ノア。今は余計なことを考えてる場合じゃない。わざわざジョージア先生に頼み込んで、オーデンの本音だって聞き出したんだ。もう充分だろう」

イサベルに指揮官を譲りたい。そう息巻くノアに、コナーはひとまず彼女の意思を確認すべきだと主張した。そして更に、自分たちでは彼女の本心を聞き出すことが出来ないと言って、その役を教官に託した。

「感謝してるよ、コナーには」

「そう思うんなら、集中して。わかってると思うけど、オーデンもラサークも、紅白戦が終われば北へ帰るんだよ」

何故だろう。級友の言葉に、胸をえぐられたような心地がした。そんなことは、端からわかりきっていたというのに。

「わかってるよ。それが何だったって言うんだよ」

「オーデンを勝たせたいなら、今この瞬間、やるべきことをやるしかない」

刹那、胸の傷はふさがれ、むしろ心がたぎるのを感じた。


数日後、様々な思いが交錯する中、彼らは紅白戦の朝を迎えた。

屋外演習場には、観覧席が設けられ、お偉方がずらりと並んだ。例年であれば、統括を筆頭に、見知った顔ぶれが二三並んで終わりであるが、今年は事情が異なる。統括の横には、見知らぬ賓客がつらなった。

客人と統括とが何事か言葉を交わし、主任教官に目で合図する。そして、ゼイン=ミルズもまた、即座に自身の部下を呼びつけた。

「ジョージア教官」

苛立った声に一気に緊張が走る。

「何故赤軍は副官が二人いる。今すぐどちらか下がらせろ」

言われて、タリウスははっとした。ノア=ガイルズ率いる赤軍には、どういうわけか参謀として、コナー=デリックとイサベル=オーデンの二名が付いていた。

「ガイルズ、副官は一人までだ」

「で、ですが、せんせい」

ノアは見るからに狼狽えた。来賓の手前、言い合っている時間はない。あくまで指揮官の決定を尊重するつもりだったが、この際やむを得ない。

「ルールを順守しろ。オーデン、お前は下がれ」

「わかりました」

イサベルが一礼して踵を返す。だが、彼女が立ち去り掛けたときだ。

「待って!」

ノアが叫んだ。

「オーデンは残って」

「おい!ノ…」

「俺が下がる」

発言の真意がわからず、一同沈黙する。

「ふ…」

ふざけるな。タリウスが怒鳴るより前に、甲高い声が割って入る。

「ばっかじゃないの!!」

「オーデン、落ち着け」

「落ち着いています。こんな無責任な指揮官の補佐は出来ません。失礼します」

一気に捲し立て、イサベルは回れ右で撤退した。

「デリック、いざというときはお前が指揮を執れ」

淡々と言い放ち、教官もまた離脱した。

「どうする、ノア」

級友の冷ややかな声でようやくノアの意識が現実へと返る。

「俺が代わったって良いけど、それで良い?一生後悔すると思うけど」

「…る」

「え?何?」

「やる。俺がやる。どんな結果になっても俺がやる」


予想したとおり、紅白戦の結果は赤軍にとって思わしいものではなかった。それというのも、冒頭のいざこざが引き金となり、一時的に士気が下がったからに他ならない。それでも惨憺たる結果にならなかったのは、作戦自体がそう悪いものではなかったことを物語っていた。


その夜、未だ興奮冷めやらぬうちに、ノアは昼間の失態に関して、それはもうこっぴどく叱られた。

「ノア!やっと解放されたんだ」

ほうほうの体で解放されたノアをコナーが出迎えたのは夜も更けてからだ。

「どうにかね。ジョージア先生に、一年分まとめて叱られたって感じ」

「それって、普段怒られてないから言えるんだよ」

「そうかな。そんなことより、コナー。本当にごめん。どうかしてた」

「もう良いよ。散々しぼられたんでしょ」

「それは俺が悪いからだよ。器じゃなかったんだ」

「そんなことない。確かに今日のノアはいろいろといただけなかったけど、だからって他の人がやれば勝てたかって言えばそんなことない。みんなだって、それがわかってるから何も言わないんだよ」

友人の言葉に、危うく泣きそうになるのをノアはどうにか堪えた。

「最初から迷わずコナーを選ぶべきだった」

「どっちも選びきれずに自分を捨てるとか、斜め上過ぎ」

コナーが笑い、ノアもまた苦笑いを返した。


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2021/11/7  0:44

☆彡☆彡☆彡☆彡☆彡  小説

「ねえ、今ちょっと良い?話したいことが…」

見る見るうちに遠ざかる背中を、イサベルは懸命に追いかけた。

「急いでるんだ。悪いけど後にしてくれないか」

「後って、いつぐらい後のこと?」

けんもほろろに突き放され、イサベルは即座に食い下がった。

元より人望のあるノアのことだ。紅白戦の準備もいよいよ大詰めを迎えるとあって、彼の両側は常に誰かで埋まっていた。そのこと自体は致し方がない。

しかし、いつなんどき話し掛けようが、ろくに目も合わせないというのはいかがなものだろうか。少なくとも、これまでの友好的な態度からはとても考えられなかった。

「作戦会議のことなら、これから最終段階に入るから、食堂では出来ない。後で要点だけまとめて話すけど、異論はないよね」

「それはまあ仕方のないことだけど。それより、ねえ何かあった?」

「何かって?」

「だから、その…もしかして、耳に入ったのかなって。誰かが私を…指揮官に…推したこと」

そこで、ノアの歩みがぴたりと止まった。

「やっぱり。でも、私は全然そのつもりないから。誰がそんな変なこと言ったんだろう」

「変なこと?」

「だって、そうでしょ。あなた以外が指揮官をやるなんて考えられないもの」

「どうして?」

ノアは真っ向からイサベルを見返した。イサベルは久しぶりに彼の視線をとらえたことに、内心ドギマギした。

「最適だからよ。私、初めてあの作戦を見たとき、本当にびっくりした。完璧な作戦だったもの。地形のこともみんなのことも知り尽くしているから書けたんだなって。それなのに、アグネスを警戒して、余所者の私なんかの案まで取り入れてくれて…」

「良いものを取り入れるのは、当たり前だろう」

「でも、もし私が逆の立場だったとして、昨日今日現れた人間の案を使うとか、出来るかなって思って。それが仮に素晴らしいものだったとして、反対に嫉妬しちゃうかもしれないし。 どっちにしても、自信があるからなせる技なんだなって」

「別に、そんなことない」

「そう?昨日だって、揉めそうになったのに、ちゃんとおさまるところにおさまったし」

「あれは俺の力じゃない。コナーが取り成してくれたからだ」

「力があるから、ああやって見方してくれる人がいるのよ。私にあんなこと言ってくれる人、いやしないもの。それなのに、何で私なんかに。もはや、嫌がらせとしか思えない」

言いながら、イサベルは自嘲気味に笑った。

「嫌がらせなんかじゃない」

「え?」

イサベルはきょとんとして、ノアを見返した。

「確かに、ちょっと考えなしだったかもしれないけど、それでも作戦の柱になる部分を考えたのはオーデンだから、作戦を書いた人が指揮したほうが良いって純粋に思っただけだ」

「ひょっとして、あなたは誰があんなこと言い出したか知ってるの?」

「え?それは…」

「い、良いの良いの。言わなくて大丈夫。立場があるもんね」

イサベルは慌てて手を振って、それからニッコリ笑った。

「忙しいのに、時間取ってくれてありがとう」

「あ、いや…」

「じゃあね」

言うだけ言うと、イサベルは踵を返した。そうして軽い足取りで元来た道を帰っていった。

残されたノアは、たちどころに全身が上気してくるのがわかった。

毎日たくさんの拍手をありがとうございます!本当にホント元気付けられます。
やりたいことがあり過ぎて、日々時間が足りません。細切れで申し訳ないのですが、次で終わります。気長にお付き合いくだされば、ありがたいです。

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