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2021/10/21  22:56

☆彡☆彡☆彡☆彡  小説

「何故呼ばれたかわかるか」

翌朝、イサベルは再び教官室にいた。ただし今回は自らの意志とは無関係だ。

「すみませんが、見当もつきません」

本当はこれでもかというくらい思い当たる節があるが、あくまで平生を装う。緊張で心臓が飛び出しそうだった。

「紅白戦のことだ。もしお前に指揮官をやれと言ったら、どうするか」

「指揮官?!私がですか?」

まるで予想し得なかった問い掛けに、イサベルが目を見張った。

「そんなこと、無理です。出来ません」

「何故そう思う」

ぶんぶんと頭を振るイサベルに、教官が静かに問うた。

「指揮官をするには、情報が全然足りません」

教官は無言で頷き、先を促した。

「同じ班の仲間の顔と名前は一致していますが、特性まではよくわかりません。敵陣に至っては、アグネス以外さっぱりですし、地形も、訓練で見聞きしたことがすべてで、それだって、天候によってどう変化するのか、私にはわかりません」

見知らぬ任地で、さして知りもしない部下たちを率いて、ひとり手探りで指揮を執る。士官学校を卒校した後、ひょっとしたら、そんな状況に遭遇することがあるかも知れない。

だが、いずれにしても遠い未来の話だ。少なくとも今ではない。

「そんな状況で指揮なんて出来るわけがないです。第一、誰もついてこないと思います」

「なら、お前は指揮官をやりたいとは思わないのか?」

「それは…」

やりたくないと言ったら嘘になる。ここが北部士官学校ならば、臆面もなくやりたいという局面である。

「誰にでも平等にチャンスがあるというなら、やらせていただきたいとは思います。ですが、紅白戦は年に一度きり、結果を求められる大事な一戦です。私では役不足です」

「そうか」

「先生、これは何かの陰謀か何かでしょうか」

イサベルは落ち着かない様子で、教官へ詰め寄った。

「そんなものはない」

「では、どうして私なんかにそんなことを」

「お前を指揮官に推したいという声が上がったから、さしあたって意思を確認しただけだ。お前にその気がないのなら、この話は終わりだ。下がれ」

「せんせい」

アグネスは混乱し、すがるような目を向けた。タリウスは苦笑いをひとつすると、立ち上がって彼女の傍に寄った。

「お前が気に病むようなことは何もない。安心して励め」

未だ疑心暗鬼に駆られているイサベルに、大丈夫だと駄目押しし、タリウスは廊下へと続く扉を開けた。

「失礼します」

扉からイサベルの姿が消えるのを見届けると、タリウスは部屋の隅にある書庫へ移動した。

「聞こえたか」

教官の声に内側から書庫が開き、中から少年が二人、順に這い出してきた。

「至極全うなことを言っていたように思うが、お前たちはどう思った?」

「はい。自分の予想したとおりでした」

初めに口を開いたのは、コナーである。タリウスは頷き、それから彼の背後にいるもうひとりの少年に目を向けた。

「ガイルズ、これで気が済んだか」

「はい………」

教官の言葉に何か言いたげではあったが、それきりノアは押し黙った。

「ここまで付き合ってやったんだ。今後は余計なことは考えず、今すべきことに集中しろ」

従順な返事が返され、足音が二つ去って行った。教官の深いため息が朝の光に溶けていった。


「ジョージア先生、一体朝から何だって?」

未だ混乱したままの頭で居室に戻ったイサベルを、級友が好奇に満ちた瞳で出迎えた。

「それが本っ当意味わからないの。誰かが私を指揮官に推したとかで、それで呼ばれた」

「はぁ?何であんたが指揮官なのよ」

アグネスは噛みつかんばかりの勢いである。昨日居室であった事の顛末を彼女もまたイサベルから伝え聞いていた。朝から教官に呼ばれたと知り、タイミング的にどう考えてもその話だと予想した。

「そんなのこっちが聞きたいよ。何?新手の嫌がらせ?」

「さあね。それで、どうしたわけ?」

「どうって、断ったに決まってるじゃない」

「何で?どうせならやれば良かったじゃない。私なら絶対そうする」

「そりゃアグネス、あんたならそうするでしょうよ」

一緒にしないでと、イサベルは力なく笑った。

「ああ、それにしても、一体誰がそんなこと言ったんだろう」

「ひょっとしたら、あの人の良さそうなリーダーじゃない?」

「まさか!ノアはそんなワケわかんないことしないわよ。まともな人だもん。だいたいあんたのとこのリーダーは、大人しそうに見えて、吹っ飛んだことしてるわけ?」

「ノーコメント」

「ちょっと?!」

「模擬戦についてはお互い干渉しない協定よ」

級友の台詞にぐうの音も出ない。イサベルは制服のまま、パタリとベッドに倒れ込んだ。


ひとまずこんなところでご容赦ください。近年希に見るボツ原稿ラッシュ💦

5

2021/10/8  1:14

☆彡☆彡☆彡  小説

ノア=ガイルズが緊張した面持ちで教官室にやってきたのは、その日の夕刻のことだ。

「一体どういうことか説明しろ」

開口一番、紅白戦のリーダーを降りたいと言うノアを、タリウスは鋭く威嚇した。

「申し訳ありません」

「謝れとは言っていない。この期に及んで、何故お前は自分の役目を放り出す?無責任にも程があるだろう」

「すみません、先生。でも決して、指揮官をやりたくないわけではないんです。ただ自分よりもふさわしい人がいるように思えて…」

「相応しい人?誰のことだ」

ノアは当代きっての頭脳派で、温厚な人柄とあいまって仲間からの信頼も厚い。成績優秀で周囲から好かれているという点では、ポーター=カヴァナーも同じだが、あいにくポーターは敵陣営のリーダーである。彼らに代わる存在がすぐには思い付かなかった。

「オーデンです」

「オーデン?」

予期せぬ名前にタリウスは思わず聞き返した。くだんの人物は、つい二日前まで作戦会議にすら出席していなかった筈だ。

「最新の戦略図です」

ノアは手にしていた紙の束を教官に手渡した。それは紆余曲折を経て、イサベルと共に形にしたものだ。

受け取った戦略図に、タリウスは黙々と目を落とした。模擬戦の作戦表は、要所要所で教官に提出する決まりになっていたが、今目にしているものはほぼ初めて見ると言って良い。

「最後に見たものから随分と変わっているようだが」

そこには、授業では教えたことのない戦術や、ここ最近誰も使わなかった類いの戦術も多数あり、正直なところ目を見張るものがあった。

「半分以上、オーデンが考えました。誰が書いたかは言わず、自分の案と比較検討するよう言ったところ、ほとんどの者がこちらを選びました。これを自分が指揮するのは違うと思いました」

「オーデンがそう言ったのか」

「いえ、彼女は何も」

「他の者は?何と言っている」

「みんなにはまだ何も言っていません」

「話にならないな」

タリウスは露骨にため息を吐いた。

「今指揮官が変われば、間違いなく勝敗どころの騒ぎではなくなる。それどころか、お前の班は壊滅的な状況になるだろう。そんなものを統括にお見せするつもりか」

「で、ですが…」

「それともお前はオーデンに恥をかかせたいのか」

「違います!そんなつもりは…」

「紅白戦は遊びではない。今指揮官を降りると言うなら、二度と指揮棒を握ることは許さない。これがどういう意味かわかるだろう」

本来、指揮棒を手にすることが出来るのは士官以上に限定される。指揮棒を握れないということは、すなわち士官を諦めざるを得ないということだ。

「でも、先生。もし、自分が指揮することにみんなが反対したら…」

「オーデンが指揮することに全員が納得したのなら、そのときは指揮官の交代を認めてやっても良い」

「わかりました」

言い終わるや否や、ノアは一礼して踵を返した。その姿に一抹の不安がよぎる。

「ガイルズ」

遠ざかる背中に向かい、タリウスは声を発した。振り返ったノアは浮き足立ち、見るからに焦燥に駆られているのがわかった。

「一時の感情に流されるな。冷静になれ」

教官の言葉に、ノアははっとして動きを止めた。まるで胸の内を見透かされているようだった。


「ノア!どこに行ってたんだよ」

教官室から食堂に向かう廊下で、ノアは級友たちに取り囲まれた。

「ジョージア先生のところに、ちょっと」

「えっ?!」

「オーデン、違う。あの件じゃない」

明後日のほうから聞こえた小さな悲鳴に、ノアは慌てて頭を振った。あの後、ノアはイサベルが時間稼ぎをしている間に、窓から塀伝いに脱出を図り、事なきを得たのだ。

「何だよ、あの件って。だいたい、何だって急に食堂なんかで作戦会議するんだよ」

急ぎイサベルを取りなしたいところだが、級友に阻まれ今はかなわない。ひとまず大丈夫だと目で合図し、ノアは級友に向き直った。

「居室でやったらオーデンが出られない」

「は?」

「とにかくみんなに食堂に集まるように言って。そんなに長くはかからないから」

らしからぬ強い物言いに、級友たちはこぞって食堂に移動した。


「どういうことだよ。この戦略図はノアが書いたんじゃないのか?」

「書いたのは俺だよ。ただ元はオーデンの案だし、手伝ってはもらった」

「何でそんな勝手なことするんだよ」

「勝手?みんなには両方見せて、その上で選んでもらったじゃないか」

イサベルを伴い初めて開いた作戦会議は、予想したとおり紛糾した。これまで彼女とは個別にやり取りをしており、その存在を表に出してこなかったが、流石にそれでは良心が咎めた。

「それはどっちもお前が書いた前提だからだよ」

「作戦の内容より誰が考えたかで良し悪しを判断するのか」

「そりゃそうだろう。女が考えた戦略なんか、読む分には面白くても、実際に使えるかどうか話は別だ」

「ちょっと…」

「どういう意味だよ」

イサベルが異を唱えようとするが、それに被せるようにしてノアが声を荒らげた。

「別にそのままの意味だよ」

「意味がわからない!」

「ちょ、ちょ、ちょっと待って」

一触即発の空気を破ったのは、それまでおろおろと事の成り行きを見守っていた、コナー=デリックである。

「先輩たちの戦略図の中で、これと似たようなのやつを見たような気がする。だから、そこまで的外れじゃないし、むしろ実効性は高いんじゃないかと思う」

「コナー!?いつの間に?」

ノアの問い掛けに、コナーは些か興奮気味に更に続けた。

「最初に資料室で記録を漁ったときに、結構古いのまでいろいろ見たんだ。切れ端とかしか残ってないのもあったけど、参考になると思ってだいたいのやつは見た」

紅白戦の戦略図は、公平を期すため、すぐ下の後輩に譲ることは禁じられている。だが、時期が過ぎれば解禁になり、一部は資料室に所蔵される。ただし、どれもかなりの悪筆で、解読するにはなかなか骨が折れた。

「けど、前の案もバランスがとれてて、悪くなかった。せっかく固まりかけてたのに、わざわざ書き換えたのは何で?」

コナーの疑問はもっともである。皆の視線が再びノアに集中する。

「向こうにはラサークがいるからだよ」

「ラサーク?!」

以外な人物の名に、イサベルを含め皆が耳を疑った。

「彼女はあのミルズ先生に何を聞かれても、どう突っ込まれても、整然と答えてた。半端ない知識があるからだ。カヴァナーがどう考えているかわからないけど、あっちだって奇をてらった作戦でくる可能性はある。今年はいつもと同じ、並みの作戦じゃダメだ」

言われてみれば確かに一理あると、少年たちは互いに頷き合った。

「オーデンの作戦も、本から拾ってきたのか?」

「もちろん本も読んだけど、私もあっちで先輩たちの作戦を何年分もあたった」

「北の演習場のことはわかんないんだけど、こっちでも応用効くんだよね?」

「それは…」

「それについては、今俺が調整してる」

口ごもるイサベルに代わり、またしてもノアが助け船を出した。

「なら、大丈夫じゃないか?」

コナーの一言を皮切りに、気付けば辺りの空気が弛緩していた。

「この際、使えるものは何だって使ったほうが得策だし、それに向こうにだって女はいるし」

「まあ、コナーがそう言うなら…」

何となくの着地点が見えたところで、この夜はお開きとなった。


「コナー」

居室へ引き上げる途中、ノアはコナーの背中に声を掛けた。

「さっきは助かったよ」

「別に、思ったことを言っただけだよ。ねえ、ノア。一体どうしちゃったの?」

「どうって?」

「いきなり怒って喧嘩するとか、らしくないよ」

「あんなこと言われたら、怒って当然じゃないか。ろくに勉強してない人には、あの戦略の凄さがわからないんだよ」

よくもまあ恥ずかしげもなく、あんな無礼なことを言えたものだ。思い出したら、再び怒りが戻ってきた。

「確かにすごいとは思うけど、けど俺はノアの戦略も良いと思った。実際に指揮するのは、ノアなんだよ」

「そうだけど」

何故だろう。級友の賞賛を素直に喜べなかった。


ここ数年、年一くらいの頻度で、前庭神経炎なる回転性のめまいに悩まされています。前述のように、毎年のことなので、多少慣れてはきましたが、始終船酔い状態なのでなかなか…
あ、でも。日々小さなしあわせを糧に、おもしろおかしく生きています♡
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