ダラダラ中につきカメ更新 感想など、ちょろっとでも書き込んでいただけましたら泣いて喜びます🎵

2019/11/24  1:16

鬼の本領4  小説

「本物に会えるかな?会えなくても、せめて一目くらいは見れたら良いな」

「でも、今はお城にいるんでしょ。そう簡単に会えるかな」

アグネスは、級友イサベルと共に駅舎で迎えを待っていた。時刻は夕刻を通り越し、既に夜である。彼女たちの脳裏にあるのは、故郷で見た士官募集のポスターである。

教官から交換訓練生制度について聞いたとき、アグネスは、これは運命だと思った。

子供の頃、たまたま通り掛かった町で士官募集のポスターを見たときから、たちまちアグネスは彼女の虜になった。

ポスターの中の彼女は、均整のとれた顔立ちをして、深い色の軍服を身にまとい、騎馬に跨がり鬨の声を上げていた。

キャッチフレーズはたったひとこと―闘え。

アグネスはその声に応えるべく、学校を出たら迷わず士官候補生の試験を受けた。一年目は予備試験でふるい落とされ、翌年も最終選考で敗退したが、更にその翌年には執念で合格を勝ち取った。

そうしてめでたく士官候補生になったアグネスを、地獄の日々が待っていた。元々身体を動かすことは嫌いではなかったが、それよりも読書や調べものをしているほうが好きだった。特に戦術や戦法といった軍学はには目がなく、予科生ながら分厚い専門書を何冊も読破しており、当然成績も良かった。

問題は実技である。いかに女子訓練生を採用しているとはいえ、訓練生の九割が男である。どんなに足掻いても、彼らと肩を並べることは到底不可能で、それどころか何度も音をあげそうになった。

そんなときにはいつだって、彼女のことを想った。きっと彼女も今の自分と同じ苦難を乗り越えたに違いない。

ところがある時、予想外の事実がアグネスの耳に入った。てっきり北部士官学校を出たとばかり思っていた彼女は、本当のところは中央の出身で、今現在は北部での勤めを終え、中央に帰還し城勤めをしているというではないか。

アグネスはこのとんでもない事実をしばらくは受け入れることが出来なかった。

「でも、私、なんとなく会えるような気がする」

「だといいけど…」

そのとき、何者かが息を切らせてこちらにやって来るのが見えた。二人は慌てて立ち上がった。一気に緊張が走る。

「ごめんなさいね、待たせて」

現れたのは女性士官だった。てっきり迎えに来るのは厳つい教官だと思っていただけに、多いに面食らった。

「先生ったら、急に私に迎えに行けなんて言うから。遠かったでしょう。まさかふたりで来たの?」

「いえ、途中までは教官に送っていただ…」

「相変わらず北はやることが雑ね。あり得ないわ」

その人物は、アグネスの言葉を遮り、溜め息をついた。そうして髪の毛を掻き上げる仕草に、既視感を覚えた。

「何?」

それゆえ、ついじろじろと遠慮のない視線を送ってしまった。

「大変失礼ですが、あの、あの」

口が乾いてあのしか言えない。

「ああ、まだ名乗っていなかったわね。ミルズよ。ミゼット=ミルズ」

「えー?!」

「えー!!」

盛大な悲鳴が二人分。

「あ、あの、私、北部でポスターを見ました。士官募集の」

「ポスター?うそ!まだあれ貼ってあるの?」

やめてよ、とミゼットが利き手で顔を覆った。上に命じられるまま、広報部のモデルになったのは、果たして今から何年前だろう。軍関係者以外に自分を知る者がいない地方任地だからこそ、承諾したのだ。北部に置いてきた恥ずかしい忘れ物をわざわざ届けられた気がした。

「本物はおばさんで驚いた?」

ふたりはぶんぶん頭を振った。

「いいえ!本物もお綺麗です」

「ご本人にお会いできて感激です」

アグネスは、既に涙目である。あこがれの人物との突然の対面に、心がついていかなかった。

「大袈裟ね」

言いながらも、ミゼットは悪い気がしない。彼女にとって北部の地は、士官学校を出てから数年前まで命を賭して奉職した、言わば第二の故郷のようなものである。そんな北部からやってきたこの予科生二人組に、彼女はある種の親近感をおぼえた。

「ねえ、私服持ってきた?」

質問の意図がすぐにはわからず、アグネスはイサベルと顔を見合わせた。そして、小さく返事を返した。

「明日からしばらくは、いろんな意味で地獄を見ると思う。でも、せっかく遠路遥々王都まで来たんだもの。今夜は訓練のことは忘れなさい」

「いいんですか」

「ただし、このことは絶対に口外してはだめよ。少なくとも北へ帰るまでは、秘密にしなさい。教官にばれたら、あんたたちは勿論罰せられるし、私は立場がなくなる」

もとより今回のことは仕事ではない。北部からやってきた予科生を一晩世話して欲しいという、夫からのお願いである。城下をひとまわりしてから帰宅したとして、態勢に影響はないはずだ。

それよりも彼女たちに少しでもしあわせな記憶を持ち帰って欲しいと思った。これは、今後起こり得る試練について知る者から贈る、先出しのご褒美である。
1

2019/11/16  20:06

閑話休題  小説

鬼〜のつづきも、その後のもまだ出来ていないのですが、なんかこのタイミングでまたしてもくだらない小ネタが降ってきまして。

とりあえず忘れないように書き留めていたら、完成したので先にお披露目します。いや、ホント大したことないんですが。



以下、タイトル未定の短編です。
1

2019/11/10  23:21

寄り道  そらごと

鬼〜が、ようやく盛り上がるところまできたのですが、ちょっと今別のネタが降ってきてしまい、この休みはそちらを書いていました。蔵出しではない、正真正銘の新ネタで、自分でも驚いてます。ちなみに、こっちにはシェールが出てきます。

仕方のないことなのですが、なんせ時間が足りなくて、書きたい気持ちが使える時間におさまりません。にもかかわらず、この休みは、ブログに残っている小説と書籍にしたネタなどをだらだらと読み漁っていました。

書籍は、なるべく手垢をつけたくないので、入稿用のPDFファイルをKindleで読んでいました。縦書きなのに、右にすすんでいくというのが解せませんが、それ以外はほぼストレスなしに読めています。

しかし、結構な量があるのでかなりの時間が消費されてしまいました。しかも、自分でももういろいろうろ覚えで、寝しなに「邂逅」を読み始め、超絶後悔したり。たぶん、一番長いんじゃないかな。違うかな。

そんなわけで、私自身が今またこの世界を楽しみ始めました。なるべく日常に影響のない範囲にしないとと思っているので、いつもに増してカメペースの予定です🐢

なんか最近、とにかく新旧鬼のやりとりを書くのが楽しいです。でも、スパシーンやお説教のくだりは書いていて疲弊しますね…。

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2019/11/7  0:23

鬼の本領3  小説

不安と緊張で頬を硬直させる少女と、そんな彼女とは対照的にまっすぐこちらへ視線を送ってくる少女。タリウスは彼女たちを交互に見やると、きわめて機械的に名乗った。

「ジョージアだ。中央士官学校で予科生の訓練を担当している」

だが、そこから先は記憶にない。気持ち的には、会議も打ち合わせも、その後の宴席もすべてを放り出し、早々に帰路に着きたいくらいだった。そして、上官に問い質したい。


「一体どういうことですか?これでは騙し討ちにでも遭った気分です」

一連の業務を終え、中央へと帰還を果たしたタリウスは、主任教官と対峙していた。

「騙し討ちとは聞き捨てならないね」

「騙し討ちでなかったら、何なんですか」

質問というより詰問である。不機嫌にこちらをにらみ返してくる上官に、タリウスも今日ばかりは負けていなかった。

「何が言いたい」

「交換訓練生は二名とも女子でした」

「北部が女性士官の育成に力を入れていることは君も知っていただろう」

「それはそうですが、年間数名と聞いていました。交換訓練生には精鋭を送り込んでくるものではないのですか」

「彼女らが精鋭なのだろう」

「体力的には男には及ばない。どう考えても不利です」

「不利にならないよう、走り込みでもなんでも、女子には一定の数値を掛ける決まりになっている。なまじ運動神経が良い者なら、首位になることも可能だ。知らなかったのか」

知らなかった。いや、昔旧友がそんなようなことを言っていたかもしれないが、今の今まで忘れていた。

「だからって…」

「最近、うちは女子を採っていないからその当て付けだろう。ついでに、比較対象もいないから先方にとっては好都合だ」

やはり思った通りだ。ゼインはこうなるとわかった上で自分を北部に派遣し、なおかつ担当にしたのだ。交換訓練生如きに及び腰になったのも、柄にもなく部下に称賛を浴びせたのにも、これで合点がいった。

「先生」

「よく調べもしないで安請け合いしたのは君じゃないか。それをまるで私のせいみたいに言うのはどうだろうか」

もとより言い争って勝てるわけがない。タリウスは最後の抵抗とばかりに口を閉ざした。

「この件が終わったら、今年は早めに休みに入ると良い。すまない、ジョージア。こんな厄介なこと、君以外には頼めない」

「厄介事だという認識はおありなんですね」

「ああ。だが、気を付けろ。厄介なのは彼女たちではない」

「どういういっ…。いいです。もうおっしゃらなくて結構です」

またしても頭痛が襲ってきた。タリウスは部屋から辞したい一心で、話を先に進めた。

「それで、彼女たちについて何かわかったのか」

「はい。ひとりはイサベル=オーデン。兄がいましたが、数年前の作戦で亡くしているようです」

タリウスが持参した報告書を手で繰る。

「それは気の毒に。しかし、息子を失ったというのに、彼女の親御さんはよく娘まで士官にしようとしたね」

「それが、近年北部でも戦死すること自体が珍しいようで、軍も遺族に対しては手厚い補償をしているようです」

「その恩に報いたいと?殊勝だな。もうひとりは?」

「アグネス=ラサーク。こちらは…」

タリウスが報告書に目を落としたまま、言葉を切る。

「なんだ」

「奥方に、ミゼット=ミルズに憧れてとあります。敬愛するミゼット…」

ミゼットは中央士官学校を卒校した後、北部に配属となり、そこで頭角を表し一個小隊の指揮を執るまでになった。中央の出身でありながら長年北部で功績をあげ、再び中央に戻り今では時機に近衛と噂される。そんな彼女は、士官を目指す少女たちにとって憧れの的なのだろう。

「結構。前者、イサベルが本命だろう」

北部士官学校では、その辺りの事情をうまく利用し、彼女の肖像を広報に使っていた。それ故、彼女のポスターがきっかけとなって士官を志す者も少なくなかった。
1

2019/11/5  1:14

鬼の本領2  小説

覚悟はしていたものの、北部までの旅程は長く険しかった。城下から港へ向かい、連絡船で海を渡ったまでは良かった。そこから永遠とも思えるほどの長い道程を乗り合い馬車に揺られ、終点からは更に馬を借りた。

そうして北へ北へ向かううちに、身体に吹き付ける風は徐々に冷たくなっていった。タリウスは、これまで北部という字面から、永久凍土のような土地を連想していた。が、実際には今時季は雪もなく、ことさら極寒というわけでもなかった。もっとも、これは後で知ったことだが、天候が安定している今の時季だからこそ、北部での四校会議がもたれたのだった。

北部士官学校は、建物自体は古いがよく手入れがなされており、そのことは玄関ホールから階段の踊り場に至るまで、随所に飾られた絵画の額縁に、埃ひとつないことからも見てとれた。

額縁の中身は、伝説の英雄から今もなお存命中と思われる人物まで様々である。さしずめ博物館のようなこの空間からは、一見して開放的な雰囲気を醸し出しているようにみえた。だが、その実、地方にありがちな余所者を寄せ付けない空気は健在である。

先方は、統括でも主任教官でもない自分が単身出席したことに、露骨に不服の意を示した。ところが、いざ会議が始まり、こちらがくだんの交換訓練生を受け入れる意志があると知ると、途端に相好を崩した。

「そうですか。中央は今回の件にご賛同いただけるわけですか。それで、実際に訓練生を預かる貴殿が、遠路遥々こちらまでいらしていただいたと」

タリウスは、あまりの変わり身の早さに驚きを隠しつつ、そこから先の会議が終始なごやかに終わったことに胸を撫で下ろした。

「実は言うと、もう人選は済んでいまして。折角なのでこれから会ってやってもらえませんか」

一斉部会が終わり、担当者と細かな事柄について詰めようとしていたときだった。先方の教官からそう提案があった。

「それはこちらとしてはありがたいですが、しかし」

会議の開催期間中、訓練は休みになり、訓練生たちはよほどの理由がない限り不在にしている筈だ。

「ええ、います。ちょうど外禁中なんで」

「がい…」

タリウスは思わず耳を疑った。

「ああ、ご安心ください。そんな素行の悪い者じゃない。むしろ精鋭です。ただ、こんなこともあろうかと、難癖をつけてこいつをね」

教官は、ポケットから手のひら大のカードを二枚、取り出して見せた。言わずと知れた身分証である。訓練生はこれがないと身動きが取れず、当然外出も出来ない。

事情はわかるが、非のない相手から身分証を取り上げることに、タリウスは不条理を感じた。そのとき、一瞬視界の端に入った身分証に、彼はある種の違和感を感じたが、不条理とあいまってそのまま目前を通過していった。

「こちらでお待ちください」

すぐに呼ん来ると言って、教官は席を立った。残されたタリウスは、先程感じた違和感がにわかに気になり、居ても立ってもいられない心地になった。だがすぐに、いかに見知らぬ地にいるとは言え、予科生ごときに心を乱されてたまるかと思い直した。

それ故、部屋の戸がぎこちなくノックされたときには、もはや平生を取り戻していた。

「入れ」

が、次の瞬間、タリウスは言葉を失った。

「アグネス=ラサークです」

「イサベル=オーデンです」

現れたのは、中央のそれとは若干デザインの異なる制服を身にまとった二人の少女であった。
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