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2013/12/16  22:57

キールの受難part2  そらごと

全然更新のない更新履歴にぱちぱちをいただいてしまい、心がチクリと痛いそらです。こんばんは。

・・・はい、スイマセン。


先週末、2年振りにケルティッククリスマスに行ってきました。年末恒例のアイリッシュコンサートなんですけど、去年は開催されなくて、なんとなく締まらない年末を過ごしました。

が、その分、今年は2年分楽しみました!フィドルとハープの軽快でエネルギッシュな演奏に、自分でも信じられないくらいエキサイトして、もう、もう超元気をもらいました。

で、そのとき頭の中で再生されたのが、キールの受難でした。特に文章化する予定もないまま、かれこれ2〜3年あたためていたネタのひとつでしたが、これはもう書くしかない、というか、どうにも書きたくてウズウズして、翌日一気に1と2を上げました。

最近マンネリ人生だったからね、日常と違うことをする=刺激になります。
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2013/12/11  19:51

厄災日の女神  小説

今日は厄日だ。と、キール=ダルトンは思った。

久々に訓練生時代の悪夢に魘され、全身汗まみれで飛び起きたと思ったら、時刻は出仕するギリギリ。慌てて頭から水をかぶって駆け出したところで、今度は床に落ちた水滴に滑って転んだ。お陰で、元よりそう高くはない鼻が益々つぶれた。

どうして自分はこうも間が抜けているのだろう。微かに腫れた鼻の頭を撫でながら、キールは自虐的に問うた。

「おい貴様!」

「は!」

目前を通過しようとした上官が突然罵声を浴びせた。些かぼんやりとはしていたが敬礼はしたし、訓練の甲斐あって、こんなときでも服装に乱れはない。だとすると、一体何だろう。

「貴様、俺を笑ったな」

「は?」

「今、鼻で笑っただろう!何がおかしい!」

「い、いえ…」

自分はただ己の間抜けさをひとりで笑っていただけです。などといったところで、納得するような相手ではなさそうである。

贅肉のついた腹は胸よりせり出し、髪は薄く、そのくせ髭はまめに手入れされている。極めつけに襟に付いた星の数がやたらと多い。

この手のタイプ、星だけのデブに因縁をつけられたら、何でもいいからとにかく謝れと、上官から言われたことがある。

「申し訳ごさいません!」

「何ぃ?謝るってことはやっぱり笑ってたんじゃないか!この無礼者!」

「も、申し訳ごさいません」

星だけデブの金切り声が耳の奥でグワングワン響いた。

「貴様、新兵だな。俺をおちょくりやがって、誰に行儀を習っている!」

「申し訳…」

「答えろ、クソガキ!」

「ミルズ中佐です」

「ミルズ?馬鹿!誰が教官を言えといった。貴様の上官だ」

「いえ、自分が仕えているのは、ミゼット=ミルズ中佐でして…」

「ああ、ミゼット…」

そこで、星だけデブの声音が変化する。自分の上官は、方々に顔が利き、噂ではとんでもなく高位の軍人とも知り合いと聞いたことがある。この男もそうした上官の顔馴染みなのだろうか。ともあれこれで助かったと思った。

「あの売女か」

しかし、続く台詞に耳を疑った。

「貴様もあんな馬鹿売女に付いたのが運のつき、なってないところまで見習ったのか?」

「…れいなのはそちらです」

口の中がカラカラに渇いて、唸るような声を出すのがやっとだった。

「うん?」

「自分は笑っていませんし、無礼を働くつもりもありませんでした」

怒りと緊張で全身が震えた。

「でも今から無礼を承知で言います。確かにミルズ中佐は変わったところのある方ですが、それでも上官をそのように悪し様に言われて黙っていられません。無礼なのはそちらです…」

「ガキが調子に乗るな!!」

言い終わるか終わらないかのところで頬を殴られた。派手な音が鳴って、身体が後ろに倒れる。口の中に鉄の味が流れ込むが、さして痛みは感じなかった。

「この馬鹿者!無礼者!」

身体が低くなったところで今度は腹を蹴られた。流石に息が詰る。

かつてなく気分が高揚している筈なのに、一方では極めて覚めた自分がいて、まるで他人事のように自身が蹴られるのを見ていた。

そんなことがどのくらい続いたのだろう。騒ぎを聞いて駆け付けた兵士によって、ふたりは引き離された。その段になってもなお、暴れながらわめき散らす上官に兵士たちも辟易しているようだった。

「おいお前、名前と階級は?」

血まみれで床に転がる自分に掛けられたは、安否の確認などではなく、無機質な尋問であった。



それから兵士たちに促されるまま詰所のようなところへ連れていかれ、簡単に傷の手当てがなされた。

どの道すべてが自分のせいにされるのだろう。そう思い、なんの申し開きもしなかった。ただ最後に、何故こんな馬鹿なことをしたと問われ、上官が愚弄されたからとだけ答えた。

しばらくはまるで夢をみているかのように、現実が遠く思えた。

「夢なら覚めて欲しいんだけど」

しかし、扉から現れた上官の姿に、はたと我に帰る。疲れ切った瞳が力なく笑うのを見て、自分がとんでもないことをしでかしたという実感もまた、徐々にしてきた。

「申し訳ごさいません!ご迷惑をお掛けして…」

「倉庫の整理でもしていなさい。沙汰があったら呼びに行くから」

「は!」

それしか言えなかった。もちろんいろいろと思うところはあったが、考えがまとまらない上に、とても聞いてもらえる雰囲気でもなかった。


沙汰はなかなか来なかった。途中で昼をまわったが、食事が摂れるような心境ではなかったし、そうしている間にも動きがあるかもしれないと思うと、この場を動けなかった。

結局、日が暮れるまでの間、キールは黙々と倉庫を片付け続けた。

「それってつまり…」

「お咎めなしってヤツだ。少なくともお前はな」

日暮れを過ぎても上官は現れなかったが、代わりに情報通の同期が良い報せを持って倉庫の戸を叩いた。

「何で?」

「何でって、そりゃあ引退間近のオッサン将校が新兵と喧嘩なんてみっともなさ過ぎるだろ。しかも、お前は無抵抗だ。相手のほうがこれ以上騒ぎ立てるなって言ったんだろ」

「ふうん」

「あとは、お前んとこの上官あちこち顔が利くって話だし」

「まあね、って、ちょっと待って。さっき少なくとも俺はって言ったよな。ミルズ中佐は?まさか処分される?!」

それこそ最悪のシナリオだ。キールは旧友に迫った。

「処分ってほどじゃないけど、今頃オッサンのところに頭下げに行ってる筈だ。それが向こうの条件だったみたいだから」

「条件って、何だよそれ!」

「知らねえよ」

「俺もオッサンのとこ行ってくる」

「は?お前は呼ばれてねえよ。やめとけって、話がこじれる。おいキール、いつからそんな熱い男になったんだよ」

「熱くなんかなってないよ」

果たして本当にそうだろうかと自問しながら、キールは倉庫を後にした。

途中までは小走りで、目的の階まで来ると忍び足で廊下を進んだ。心臓の音がやけに大きく聞こえた。

「上官には絶対服従だなんてことは、我々の世代じゃ当たり前のことだった」

部屋の外まで漏れ聞こえる金切り声のせいで場所はすぐに特定出来た。

「だいたい最近の若い者は礼儀がなってない。まずは上官である君が手本を示すべきだと思わないか」

「御説ごもっともです」

「そうか、ならば話が早い。長靴にキスを」

全身から血の気が引いた。キールが我を忘れて扉に手を掛けた瞬間、反対側から強く引かれた。

「倉庫を片付けろと言った筈よ」

「もう終わりました」

「そう」

ミゼット=ミルズはさも不愉快そうに手の甲で唇を拭った。

「申し訳ごさいません!」

上官のためと思って取った行動のせいでかえって彼女を陥れてしまった。どんなに後悔してもしたりない。浅はかで幼稚な自分を呪えるだけ呪いたい。

「付いて来なさい」

茫然と立ち尽くすキールをミゼットが呼んだ。

もしも許されるならば泣いて詫びたかった。だが、無論そんなことは出来ず、キールは黙々と上官の背中を追った。

そうしている間にも、先程の男の言葉が耳について離れない。プライドの高い上官がまさか命令通り動くとは思わなかった。そうかといって、あの場で命令に背けば、また振り出しに戻るだけだ。上官の判断は間違っていない。

間違っていたのは自分だ。

そんな自分の胸中を知ってかしらでか、上官は足早に階段を下り、回廊を抜け、城下へと出た。途中、頭に手をやり纏め髪を解いた。

一体どこに向かっているのだろう。話し掛ければ答えてくれるだろうが、それをする勇気がない。

まず真っ先に思い付いたのが、古巣である。某かの失敗をした時、仕官学校へ帰れと罵られたのは、恐らく自分だけではあるまい。だが、本当に送り返されたひとなどいるのだろうか。

いや、彼女を普通のくくりで考えてはいけない。本当に送り返さないまでも、教官であり連れ合いでもある鬼の親玉に、何でこんな奴を卒校させたのかと詰め寄るかもしれない。考えただけで地獄だった。

そんなキールの予想に反し、ミゼットは大通りを外れ、いりくんだ路地の中を時折立ち止まりながら進んだ。そして、一軒の店の前で歩みを止めた。

暗がりの中、ぼんやりとした灯りが照らすのは、古びた酒樽だ。

カランという音と共に、店内の注意が一斉に集まった。

「おいおい、どこのねえちゃんかと思ったら、ミルズの奥様じゃないか。珍しいな」

「そこ、空いてるかしら?」

彼女の一言で、軍服を着た男たちが数人、グラスを持ったまま席を立ち、空間を空けた。

「連れがいるのか?」

男たちの視線がキールに注がれる。どうしたら良いかわからず、先程から入口で突っ立ったままだ。

「ええ、私の部下なの」

「ひでえ顔だな、こりゃ」

「おい、お前ら。こいつもそっちに混ぜてやれ」

入口からはよく見えなかったが、店の奥のテーブルには、比較的若い兵士たちが陣取っていた。彼らが座るのは椅子ではなく、酒樽や空き箱の類いである。

「ほら、こっちだ」

キールは促されて、恐縮しながら席に付いた。よく見ると知った顔もチラホラあり、中には訓練生時代の先輩もいた。

「火を貸して頂戴」

「何だ、止めたんじゃなかったのか」

「消毒よ、消毒。吸わずにやってられるかっての」

ミゼットは隣から拝借した煙草をためらいなく口へくわえた。

キールにとって上官が煙草を吸うところを見るのはこれが初めてだ。やはりそれだけ屈辱的な出来事だったのだ。

「ほらよ、駆けつけ一杯」

「ありがとう。って、甘っ!ちょっとレックス!」

彼女はグラスに口をつけるなり顔をしかめた。

「好きだろう、お子様カクテル」

「一体何を入れたんだ?」

「こいつ下戸でさ、オレンジでワイン割ってたんだぜ」

「何年前の話よ!」

「おい、レックス!伝説の酒豪女剣士が同期にいたっつうの、あれはだてか?」

「いや、そいつはこいつじゃない」

「こいつじゃないって、じゃあそいつは…」

「そんなことよりだ。ミゼット、そろそろ話せよ。一体何があった?わざわざこんなところまで来たんだ。さぞ面白い話があるんだろう?」

「あらファルコン、いきなりそこ聞いちゃう?」

「何言ってんだよ。てめえはそれ喋りにきたんだろ」

「そうね…」

終わりだ。周囲の注目を存分に浴び、ようよう口を開く上官を前に、キールは項垂れた。

「まあ飲めって」

先輩のひとりがワインをグラスに注いで、こちらに渡した。

「すいません」

彼はグラスを掲げ、ひとしきり礼を言った後、一気にそれをあおった。

「飛ばすな、新兵」

言いながら、早くも次を注いでくれた。

「ダルトンです。飲まなきゃやってられないんです」

「何で?」

「だって、これじゃ針のむしろです」

キールの視線の先には、昼間の自分の大失態を聞き、大仰に笑い転げる男たちがいた。

しかも、長靴にキスをする場面まで入ったノーカット版である。自分が笑い者になる分にはまだ良いが、上官のこととなると話は別だ。

「そうか?めっちゃ楽しそうに見えるけど」

それはその他大勢の話だ。当の本人は、苦虫を噛み潰したような顔をしているに決まっている。

キールは覚悟を決めて、視線を上官に合わせる。

「笑って、る?」

男たちの重低音に混じって、カラカラと楽しそうにさえずるのは、ミゼット=ミルズである。

「お前のこと自慢してるようにしか聞こえないけど」

「そ、そんなことは…」

「おいお前!大人しそうな顔して、類が友を呼んじまったのか、こいつに感化されちまったのか知らないが、面白いな。うちのと交換してくれよ」

「ブッ…!」

発言者の部下と思われる青年がむせ、上官チーム、部下チーム共に一斉にわいた。

「嫌よ、絶対ダメ」

そんな上官の言葉に泣きそうになるのも束の間。

「レックスには犬の子一匹あげたくない」

「仔犬扱いかよ」

再びみんなが笑い、今度はキールも笑った。笑いながら、またしても泣きそうになった。

「ちょっとダルトン。いい加減顔上げなさい」

ミゼットの声にキールははっとして顔をあげた。

「結局、あんたは後悔してるの?あんなこと、言わなきゃ良かったってまだ引きずってんの?」

いくら上官を愚弄されたからといって、親子以上に年の離れた上官に意見するとは正気の沙汰ではない。

しかし、たとえ何回やり直したところで、あの場で黙っていられる自信はない。

そうだとすると、間違っていたのはその次だ。

旧友、テイラーに言われたとおり、倉庫で待つべきだったのだ。そうすれば、あの屈辱的なシーンに遭遇することもなかった。

だが、それでは上官が受けた屈辱的な扱いについて知る由もなくなる。それこそ自分本意というものだ。

「ご迷惑を掛けたことは反省しています。でも、後悔はしていません」

「だったら、凛としていなさい」

「はぃ」

涙が口に入ってしょっぱかった。いつから泣き上戸になったのだろう。

「だいたいねえ、ブーツにキスなんてそれこそ何回やらされたか覚えてないわ。ああいうのは嫌がれば嫌がるほど相手の思う壺なんだから、何でもないって顔でさらっとすれば良いの」

「そういう、ものなんですか」

「そうよ。でも、あんたのためにするのは、これが最初で最後だからね」

「くどい!そんなことはこいつだってわかってるって。お前のそういうところは先生譲りって言うか、似た者夫婦だな」

「先生は関係ない」

「なあ、あの人の旦那って、もしかして…」

「えーと、ミルズ先生です。中央士官の」

「嘘だろ!あんな若くて綺麗なひとが先生の奥さんだなんて!!」

突如上がった素頓狂な声に、その場が凍りついた。

「前言撤回。あれ、誰の部下?ダルトンと取っ替えて」

「そんなあ…」

「わはははは!そいつは、ファルコンのだ」

「馬鹿野郎!何だってあいつを助長させるようなことを言うんだ!」

「すいません!」

「良いじゃない、正直なことは少しも罪じゃないもの」

「若いったって、怪しげな化粧でそう見えるだけだ。実際には俺と4つしか変わらん」

「4つも、よ」

「あの、すいません。確かトレーズ少佐は18で仕官されたんですよね」

ファルコンの部下が左手で数を数えながら両目を瞬く。

「そうだ。自慢じゃないが、年かさだったせいで監督生も努めたんだ」

「ってことは、ミルズ中佐が仕官されたときは、14?」

一般的に訓練生の資格があるのは15歳からだが、同程度の実力があればそれに満たなくても良い。しかし、言うまでもなく相当に高いハードルである。

「そうよ。言わなかったかしら」

「聞いてません」

「スゲー!神童だ!」

「何が神童だ。こいつのせいでどれだけ俺らが迷惑を被ったか!トラブルメーカーと書いて、ミゼット=モリスンて読むなんて話はみんな知ってる。そりゃあ鬼のミルズだって、責任とってお前をもらうくらいするだろう」

「レックス、やめてってば」

「試験は通らない、課題は終わらない、門限は守らない、それで外禁になれば、エレインになり済まして出掛けるなんてこともあったな」

「ああ、ファルコン、もう勘弁して」

部下の前で次々と飛び出す暴露話にミゼットが慌てた。キールが上官のこんな姿を見るのは初めてだった。

「いつもいつも俺らのお荷物だったくせして、今じゃ一番の稼ぎ頭だ。世の中ってのは不公平だなあ、レックス」

「本当だぜ。だいたいこいつは薄情だから、近衛になったらもう口も聞いてくれねえかもしれねえ…」

「もう!わかってるって!ふたりには感謝してる。ここの払いは私が持つ。それで良いでしょ」

「流石ミルズの奥様。給料日前だってのに気前がいいな」

「白々しい。けどそんなことはどうだって良いのよ。だから、その代わり…」

ミゼットは、ファルコンに向けて何やら耳打ちをした。ファルコンはファルコンで更にレックスに耳打ちをする。

「じゃあ私、ちょっと寝るから」

「はっ?どこまでマイペース…」

ミゼットは唐突に机に突っ伏し、やがてくうくうと寝息を立て始めた。キールは目が点になったまま動けない。

「本当意味わかんないわ、こいつ。エレインを超えたな」

「ああ。お前も大変だろうがもういちいち気にするな。時期に慣れる」

「でもって、こいつに愛想が尽きたらまたここへ来い。週末は大概ここで飲んでっから」

「えーっと…」

「いつでも来て良いって意味だ」

キールが答えに窮していると、隣の先輩が小声で通訳をしてくれた。

「あ、ありがとうございますっ!」

全く今日は散々な一日だった。だが、好運の女神は教えてくれた。今日という日はまだあと少し残っている。


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