2011/2/26 19:11
up そらごと(音あり)
やっと「出航」です。時代的には、これまでの流れよりも少し先の話なので、これを書いたら時間を巻き戻せないのだと思い、若干悩んだり。でも、このネタを書かないと、いくら考えても他のが出てこなくて、もはや観念するしかないかと思った次第であります。
結婚は思い切りかなと。
今回の話を書きながら、自分自身のことをたくさん思い返しました。いろいろいろいろあるけれど、最終的に絶対手放せない、譲れないものってなんだろう。そんなことをたくさん考えました。
カップルスパも師弟スパも(笑)なくて恐縮ですが、、、私の中では、オニ先生のプロポーズより、タリタリの啖呵のがツボでした。
さて、ここ数日の話。基本的に、どんなに疲れていても、嫌なことがあっても、自分の好きなことをしている分には楽しく生きられる、筈だったのですが、どうやら臨界値を超えたようです。
年末から、いわゆるフラッシュバックというやつに悩まされていました。回数は少ないのですが、一度起きると目も当てられない状況になってしまい、ともかく感情のコントロールが利かない。折角ここまで順調に回復したのにと、どんどん自信を失くして、正に悪循環でした。
引き金になるのがある種の声だけに、自分に全然関係ないことでも、怒鳴り声とか一切受け付けない感じで、多分あのときの自分は、どこぞの「鬼教官」を聴いてもパニくったと思います(汗)。今はもうどこ吹く風です。
お話の中には、平気で他者を怒鳴り散らし、一方的に持論をぶちかまし、果ては力で制圧しようとする人々が出てきますが・・・実際そんな目に遭った日には、心が折れてしまいます。所詮ツクリゴトだからと、都合良く開閉できる目と耳を私は持っていなかったようです。
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結婚は思い切りかなと。
今回の話を書きながら、自分自身のことをたくさん思い返しました。いろいろいろいろあるけれど、最終的に絶対手放せない、譲れないものってなんだろう。そんなことをたくさん考えました。
カップルスパも師弟スパも(笑)なくて恐縮ですが、、、私の中では、オニ先生のプロポーズより、タリタリの啖呵のがツボでした。
さて、ここ数日の話。基本的に、どんなに疲れていても、嫌なことがあっても、自分の好きなことをしている分には楽しく生きられる、筈だったのですが、どうやら臨界値を超えたようです。
年末から、いわゆるフラッシュバックというやつに悩まされていました。回数は少ないのですが、一度起きると目も当てられない状況になってしまい、ともかく感情のコントロールが利かない。折角ここまで順調に回復したのにと、どんどん自信を失くして、正に悪循環でした。
引き金になるのがある種の声だけに、自分に全然関係ないことでも、怒鳴り声とか一切受け付けない感じで、多分あのときの自分は、どこぞの「鬼教官」を聴いてもパニくったと思います(汗)。今はもうどこ吹く風です。
お話の中には、平気で他者を怒鳴り散らし、一方的に持論をぶちかまし、果ては力で制圧しようとする人々が出てきますが・・・実際そんな目に遭った日には、心が折れてしまいます。所詮ツクリゴトだからと、都合良く開閉できる目と耳を私は持っていなかったようです。

2011/2/23 1:07
中途半端ですが おしらせ!
しばらく更新が滞りそうです。
意外に早く戻れるかもしれないし、ちょっと間を置かないとムリかもしれない。楽しみにしてくれる方がいらっしゃると思うと心苦しいのですが、いい加減なものを上げるよりかはマシかなと。
珍しく体調を崩しまして、メンタルにフィジカルに、躁鬱かってくらい波があって、流石に疲弊しました。何事においても全然集中出来ないので、ともかくしばし休もうと思います。
さっき、職場の休憩室でちょっとのつもりで横になったら、いつのまにか2時間も爆睡してしまい、上司&同僚が「もう帰るよ」と迎えに来てくれたという。仕事は休める状況にないので、とりあえず同期とでも飲み歩いて発散しようかと思います。
最近、またしても身体がある種のスパ小説を拒絶するようになってきました。ときどきお気に入りの作家さん以外の作品もふらっと読みに行くのですが、今は地雷を踏みそうで足が遠のいています。ホント、難儀な趣味だわ。
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意外に早く戻れるかもしれないし、ちょっと間を置かないとムリかもしれない。楽しみにしてくれる方がいらっしゃると思うと心苦しいのですが、いい加減なものを上げるよりかはマシかなと。
珍しく体調を崩しまして、メンタルにフィジカルに、躁鬱かってくらい波があって、流石に疲弊しました。何事においても全然集中出来ないので、ともかくしばし休もうと思います。
さっき、職場の休憩室でちょっとのつもりで横になったら、いつのまにか2時間も爆睡してしまい、上司&同僚が「もう帰るよ」と迎えに来てくれたという。仕事は休める状況にないので、とりあえず同期とでも飲み歩いて発散しようかと思います。
最近、またしても身体がある種のスパ小説を拒絶するようになってきました。ときどきお気に入りの作家さん以外の作品もふらっと読みに行くのですが、今は地雷を踏みそうで足が遠のいています。ホント、難儀な趣味だわ。

2011/2/16 21:26
折り返し そらごと
やっと、折り返しです。
段々「スパサイト」を冠しているのが申し訳なくなりつつありますが、走り出してしまったものは止まらず・・・最後までお付き合いいただけましたら幸いです。
というわけで「出航」です。なんかもう、本っっっ当にものすっごい葛藤があって。一昨年の冬くらいには既に頭の中に筋書きがあり、バカップルはこの話を目掛けてばく進していたわけですが、ああもう書きたいけど書きたくない、みたいな。。
で、今日の分までは一応ストックがあったので、手直ししつつすんなり上がりましたが、この先はまだ700字くらいしか書いていないので、続きはもうちょいお待ちくださいませ。
さて、この連休はうれしはずかしバレンタインてなわけで、携帯トップがラブリィな仕様になっておりました。ついでに拍手SSもどうしようもないネタですが更新しています。今だと1/9の確率で出現しますので、運試しにでも(笑)。
私は誰かにサプライズプレゼントするっていうのがたまらなく好きで、特に両実家には、お歳暮もお中元も贈っていない代わりに、母の日やバレンタインなどのイベント日にちょっとしたスウィーツを贈りつけています。びっくりした〜と言われるのが快感で。
ついでに、今年は職場でも普段お世話になっている方々に付け届け。九分九厘、今年度末で今の事業所とはお別れになるので、それなりに奮発しました。おじさまたちの「残れるよ!」「残って!」のセリフが嬉しかったり、やっぱり淋しかったり。。
まとまりのないまま今夜は終わります。
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段々「スパサイト」を冠しているのが申し訳なくなりつつありますが、走り出してしまったものは止まらず・・・最後までお付き合いいただけましたら幸いです。
というわけで「出航」です。なんかもう、本っっっ当にものすっごい葛藤があって。一昨年の冬くらいには既に頭の中に筋書きがあり、バカップルはこの話を目掛けてばく進していたわけですが、ああもう書きたいけど書きたくない、みたいな。。
で、今日の分までは一応ストックがあったので、手直ししつつすんなり上がりましたが、この先はまだ700字くらいしか書いていないので、続きはもうちょいお待ちくださいませ。
さて、この連休はうれしはずかしバレンタインてなわけで、携帯トップがラブリィな仕様になっておりました。ついでに拍手SSもどうしようもないネタですが更新しています。今だと1/9の確率で出現しますので、運試しにでも(笑)。
私は誰かにサプライズプレゼントするっていうのがたまらなく好きで、特に両実家には、お歳暮もお中元も贈っていない代わりに、母の日やバレンタインなどのイベント日にちょっとしたスウィーツを贈りつけています。びっくりした〜と言われるのが快感で。
ついでに、今年は職場でも普段お世話になっている方々に付け届け。九分九厘、今年度末で今の事業所とはお別れになるので、それなりに奮発しました。おじさまたちの「残れるよ!」「残って!」のセリフが嬉しかったり、やっぱり淋しかったり。。
まとまりのないまま今夜は終わります。

2011/2/10 22:51
ぽつぽつと そらごと
取り急ぎ、更新しました。
なんとなく書いた「序章」をなんとなく上げ、続いて、長いこと半端に書いて放置していた「敬礼」をアップ。ふたりして昔語りするだけの話が、どういうわけかあんな展開に(汗)。シェールのお尻を見ると、叩きたくなるのかも?まあ、なんだかんだで自慢の息子なのね。
それから、メディスパさんと相互リンクさせていただきました。かれこれ10年来お世話になりまくりのサイトさまで、こちらの情報を元に、本屋に走ったり、ヤフオクしたり、お陰でスパコレクションが増えました。
そうそう、お気に入りのスパメディアネタをひとつ。かーなり古い本ですが、X文庫から出ている「ぶっとびベイビー」(青山えりか著)という小説に、なかなかナイスなM/Fがあります。作中に「連続スパンキング」という記述があってドッキリ!今読むと時代だなぁと思うかもですが、ストーリーもなかなか面白いです。
それから、キールの受難にパチパチをいただきありがとうございます。後から読み返してみたら、彼以外みんなspankerなんだと思って、笑ってしまった。しかし、キールにとっておっかないばかりだったタリウスも、これでちょぴっと見方が変わったハズ。
さて、そろそろmixi断ちの禁断症状が出るかな〜と思っていましたが、なんか平気そうです。
結局のところ、マイミクシィ≠好きな人となったときから、徐々にしんどくなって。気付けば意識的に日記を読みに行かないマイミクさんが存在して、反対に自分の日記を限定で公開することもチラホラ。
悩んでる時間がもったいなくて、めんどくさくて、結局やめてしまった。とどのつまり、淋しがり屋のくせに、群れるのが苦手なのです。純粋に日記を書く場を失ったのはいたいし、淋しいけれど・・・より有効に時間を使えるようになって、良かったんじゃないかなと思っています。
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なんとなく書いた「序章」をなんとなく上げ、続いて、長いこと半端に書いて放置していた「敬礼」をアップ。ふたりして昔語りするだけの話が、どういうわけかあんな展開に(汗)。シェールのお尻を見ると、叩きたくなるのかも?まあ、なんだかんだで自慢の息子なのね。
それから、メディスパさんと相互リンクさせていただきました。かれこれ10年来お世話になりまくりのサイトさまで、こちらの情報を元に、本屋に走ったり、ヤフオクしたり、お陰でスパコレクションが増えました。
そうそう、お気に入りのスパメディアネタをひとつ。かーなり古い本ですが、X文庫から出ている「ぶっとびベイビー」(青山えりか著)という小説に、なかなかナイスなM/Fがあります。作中に「連続スパンキング」という記述があってドッキリ!今読むと時代だなぁと思うかもですが、ストーリーもなかなか面白いです。
それから、キールの受難にパチパチをいただきありがとうございます。後から読み返してみたら、彼以外みんなspankerなんだと思って、笑ってしまった。しかし、キールにとっておっかないばかりだったタリウスも、これでちょぴっと見方が変わったハズ。
さて、そろそろmixi断ちの禁断症状が出るかな〜と思っていましたが、なんか平気そうです。
結局のところ、マイミクシィ≠好きな人となったときから、徐々にしんどくなって。気付けば意識的に日記を読みに行かないマイミクさんが存在して、反対に自分の日記を限定で公開することもチラホラ。
悩んでる時間がもったいなくて、めんどくさくて、結局やめてしまった。とどのつまり、淋しがり屋のくせに、群れるのが苦手なのです。純粋に日記を書く場を失ったのはいたいし、淋しいけれど・・・より有効に時間を使えるようになって、良かったんじゃないかなと思っています。

2011/2/5 2:03
ジレンマ〜ある新兵の憂鬱〜 小説
真新しい軍服におろしたばかりの軍長靴、どちらもやっと少年の身体に馴染んできたと見える。言わずと知れた新兵である。
少年は小さな鍵を手に、キョロキョロと周囲を伺う。その姿は挙動不審そのものである。彼はそっと扉を開けると、抜き足差し足で室内へと忍び込んだ。高鳴る鼓動を抑え、ゆっくりと廊下を進む。額に汗が滲んだ。
「手をあげろ」
「わっ!!」
背後から聞こえた怒声に、心臓が止まるほどに驚いた。少年は反射的に両手をあげ、ゆっくりと背を振り返る。
「久しぶりだね、キール=ダルトン。少し見ないうちにこそ泥に成り下がるとは驚きだ。それもかつての師の家を狙うとは大胆不敵。どうせなら、もう少し他の局面でその大胆さを発揮してもらいたかったね」
「ち、違います!自分はただモリスン中佐の着替えを…」
「このうつけもの!よくもそんなふしだらなことを」
「だから違いますって!モリスン中佐に頼まれて着替えを取りに、ほら、このとおり鍵も預かってきました」
キールはポケットから鍵を取り出し、元教官に見せる。
「全くこんなことに部下を使うとは、呆れてものも言えない。貸せ」
「あ!」
ゼインはキールの手から自宅の鍵をひょいとかすめ取ってしまう。
「ここは私の家だ。彼女が何と言おうが勝手なことは許さない。とっとと出て行きたまえ」
「でも」
「出て行け!それから彼女に伝えろ。着替えくらい自分で取りに来い。もっとも、それが出来ればの話だがな」
元教官はまるで悪魔のような笑みを浮かべた。そんな伝言を預かれるわけがない。相手が悪過ぎる。キールは冷や汗を掻きながら、すごすごと元来た道を戻るのだった。
「何で手ぶらで戻って来るのよ!」
「申し訳ありません。まさかミルズ先生がいらっしゃるなんて思わなくて、びっくりして失神するところでした」
「いっそそうなれば良かったのよ。この役立たず。もう二度とあなたには頼まない」
是非ともそうしていただきたいものである。いきり立つ上官を前に、キールは心の底からそう願うのだった。
「もう結構。鍵を返して頂戴」
「えーと、大変申し上げにくいんですけど…」
「何よ」
「ミルズ先生に取り上げられてしまいまして、手元にないんです」
「何ですって!」
形の良い大きな瞳が自分を睨み付ける。こちらは鬼の形相である。
「あの家は先生のものだとおっしゃって…」
「確かにあの家はゼインのものよ。あの鍵だって元々はそう。だけど、今は私のよ。ええ、そうよ。誕生日にもらったんだもの。私のものよ」
そんなことを言われても、どうしようもない。ミゼットが一気に捲し立て、キールは思わず後ず去った。
「取り返して来て」
「そんな…」
「当たり前じゃない!託した書状をなくしたのと同じことよ。とっとと取り返していらっしゃい、今すぐ!」
「はい!」
悲しいかな、直属の上官に逆らえるわけがない。キールは泣きそうになりながらも、再び遣いに出た。
「ダルトン?そんなところで何をしている」
しばらく振りに訪れた兵舎は、自分の知るそれと少しも変わらない。入口付近でうろうろしていると、懐かしい声が自分を呼んだ。
「ジョージア先生!今日はその、上官のお使いで来ていて。ミルズ先生はいらっしゃいますか?いえ、お忙しいようなら出直します」
「丁度執務室にいらっしゃるが」
「そう、ですか…」
途端に教え子の声が尻つぼみになる。見れば、その顔はどことなく生気がない。
「どうした?」
「せんせいっ!」
声を掛けると、教え子はすがるような目を自分へ向けてきた。あらかたの事情を聞きながら、タリウスは苦笑いを漏らした。
「笑わないでくださいよ。私用に使われた挙げ句、何で痴話喧嘩に巻き込まれなきゃならないんですか」
「その点については、些か同情をおぼえる。だが、それにしたって悩むようなことではないだろう」
「悩みますよ、これじゃ板挟みだ」
「お前の上官はどちらだ」
「そりゃモリスン中佐ですけど」
「だったら、自ずと答えが出るだろう。ほら、取り次いでやるから来い」
言うが早い、タリウスはスタスタと歩き始めた。
「彼女の気が短いのは知っているだろう」
「はい」
ここでもまた逆らえない。キールはしぶしぶ従った。
散々歩き慣れた兵舎も、今日は周囲の反応がおかしいくらいに違う。候補生たちは皆、自分の姿を見ると、ぎょっとして道を開けた。
「ミルズ先生、本部から来客です」
「お通ししろ」
この期に及んで部屋の前でもたもたしていると、パシッと軽く尻をはたかれた。キールはつんどめるようにして、主任教官の執務室へ入室した。
「し、失礼します。モリスン中佐の遣いで参りました」
「用件は?」
「鍵を、返してください」
「断る」
そう来ると思った。キールは頭の中で、道すがら必死に考えた台詞をおさらいする。
「た、確かにあの鍵は元々ミルズ先生…ミルズ教官のものですが、でも、モリスン中佐は教官から譲り受けたとおっしゃっています。今はモリスン中佐のものです」
「だから?」
「だ、ですから、お返しください」
「君は私に指図しようと言うのか」
「そういうわけでは…」
これではまた同じことの繰り返しである。キールは両手を握り締め、視線を上げる。
「鍵を返してください。モリスン中佐のご命令なんです」
「ふん」
小さく笑い、ゼインがこちらへ向かって鍵を放る。
「とっとと帰れ。彼女は私よりも気が短い」
「先生、ありがとうございます」
「行け」
主任教官は、どこまでも不機嫌で、まるで取り付く島がない。キールは逃げるように部屋から辞した。
廊下には、既にタリウスの姿はなかった。あんなに苦手だった筈なのに、先ほどは彼のことが唯一の味方のように思えた。いや、事実味方だったのだと理解する。
不思議な達成感を胸に、キールは住み慣れた古巣を後にした。
了
とりあえず置くとこがないので、ここに。小説のもくじページを作り変えたいのだが、時間が…。日々きゅうきゅうです。
最近、何故だか職場で「ふしだらな」という言葉が流行っています。なもんで、ゼインに言わせたかった、そんだけの話です。
ホントはどこぞの優等生の話を途中まで書いていたのですが、こっちのがあっさり上がりました。どうも私はキール贔屓なようです。そのうち格好良く成長した姿も書いてやりたいですね。
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少年は小さな鍵を手に、キョロキョロと周囲を伺う。その姿は挙動不審そのものである。彼はそっと扉を開けると、抜き足差し足で室内へと忍び込んだ。高鳴る鼓動を抑え、ゆっくりと廊下を進む。額に汗が滲んだ。
「手をあげろ」
「わっ!!」
背後から聞こえた怒声に、心臓が止まるほどに驚いた。少年は反射的に両手をあげ、ゆっくりと背を振り返る。
「久しぶりだね、キール=ダルトン。少し見ないうちにこそ泥に成り下がるとは驚きだ。それもかつての師の家を狙うとは大胆不敵。どうせなら、もう少し他の局面でその大胆さを発揮してもらいたかったね」
「ち、違います!自分はただモリスン中佐の着替えを…」
「このうつけもの!よくもそんなふしだらなことを」
「だから違いますって!モリスン中佐に頼まれて着替えを取りに、ほら、このとおり鍵も預かってきました」
キールはポケットから鍵を取り出し、元教官に見せる。
「全くこんなことに部下を使うとは、呆れてものも言えない。貸せ」
「あ!」
ゼインはキールの手から自宅の鍵をひょいとかすめ取ってしまう。
「ここは私の家だ。彼女が何と言おうが勝手なことは許さない。とっとと出て行きたまえ」
「でも」
「出て行け!それから彼女に伝えろ。着替えくらい自分で取りに来い。もっとも、それが出来ればの話だがな」
元教官はまるで悪魔のような笑みを浮かべた。そんな伝言を預かれるわけがない。相手が悪過ぎる。キールは冷や汗を掻きながら、すごすごと元来た道を戻るのだった。
「何で手ぶらで戻って来るのよ!」
「申し訳ありません。まさかミルズ先生がいらっしゃるなんて思わなくて、びっくりして失神するところでした」
「いっそそうなれば良かったのよ。この役立たず。もう二度とあなたには頼まない」
是非ともそうしていただきたいものである。いきり立つ上官を前に、キールは心の底からそう願うのだった。
「もう結構。鍵を返して頂戴」
「えーと、大変申し上げにくいんですけど…」
「何よ」
「ミルズ先生に取り上げられてしまいまして、手元にないんです」
「何ですって!」
形の良い大きな瞳が自分を睨み付ける。こちらは鬼の形相である。
「あの家は先生のものだとおっしゃって…」
「確かにあの家はゼインのものよ。あの鍵だって元々はそう。だけど、今は私のよ。ええ、そうよ。誕生日にもらったんだもの。私のものよ」
そんなことを言われても、どうしようもない。ミゼットが一気に捲し立て、キールは思わず後ず去った。
「取り返して来て」
「そんな…」
「当たり前じゃない!託した書状をなくしたのと同じことよ。とっとと取り返していらっしゃい、今すぐ!」
「はい!」
悲しいかな、直属の上官に逆らえるわけがない。キールは泣きそうになりながらも、再び遣いに出た。
「ダルトン?そんなところで何をしている」
しばらく振りに訪れた兵舎は、自分の知るそれと少しも変わらない。入口付近でうろうろしていると、懐かしい声が自分を呼んだ。
「ジョージア先生!今日はその、上官のお使いで来ていて。ミルズ先生はいらっしゃいますか?いえ、お忙しいようなら出直します」
「丁度執務室にいらっしゃるが」
「そう、ですか…」
途端に教え子の声が尻つぼみになる。見れば、その顔はどことなく生気がない。
「どうした?」
「せんせいっ!」
声を掛けると、教え子はすがるような目を自分へ向けてきた。あらかたの事情を聞きながら、タリウスは苦笑いを漏らした。
「笑わないでくださいよ。私用に使われた挙げ句、何で痴話喧嘩に巻き込まれなきゃならないんですか」
「その点については、些か同情をおぼえる。だが、それにしたって悩むようなことではないだろう」
「悩みますよ、これじゃ板挟みだ」
「お前の上官はどちらだ」
「そりゃモリスン中佐ですけど」
「だったら、自ずと答えが出るだろう。ほら、取り次いでやるから来い」
言うが早い、タリウスはスタスタと歩き始めた。
「彼女の気が短いのは知っているだろう」
「はい」
ここでもまた逆らえない。キールはしぶしぶ従った。
散々歩き慣れた兵舎も、今日は周囲の反応がおかしいくらいに違う。候補生たちは皆、自分の姿を見ると、ぎょっとして道を開けた。
「ミルズ先生、本部から来客です」
「お通ししろ」
この期に及んで部屋の前でもたもたしていると、パシッと軽く尻をはたかれた。キールはつんどめるようにして、主任教官の執務室へ入室した。
「し、失礼します。モリスン中佐の遣いで参りました」
「用件は?」
「鍵を、返してください」
「断る」
そう来ると思った。キールは頭の中で、道すがら必死に考えた台詞をおさらいする。
「た、確かにあの鍵は元々ミルズ先生…ミルズ教官のものですが、でも、モリスン中佐は教官から譲り受けたとおっしゃっています。今はモリスン中佐のものです」
「だから?」
「だ、ですから、お返しください」
「君は私に指図しようと言うのか」
「そういうわけでは…」
これではまた同じことの繰り返しである。キールは両手を握り締め、視線を上げる。
「鍵を返してください。モリスン中佐のご命令なんです」
「ふん」
小さく笑い、ゼインがこちらへ向かって鍵を放る。
「とっとと帰れ。彼女は私よりも気が短い」
「先生、ありがとうございます」
「行け」
主任教官は、どこまでも不機嫌で、まるで取り付く島がない。キールは逃げるように部屋から辞した。
廊下には、既にタリウスの姿はなかった。あんなに苦手だった筈なのに、先ほどは彼のことが唯一の味方のように思えた。いや、事実味方だったのだと理解する。
不思議な達成感を胸に、キールは住み慣れた古巣を後にした。
了
とりあえず置くとこがないので、ここに。小説のもくじページを作り変えたいのだが、時間が…。日々きゅうきゅうです。
最近、何故だか職場で「ふしだらな」という言葉が流行っています。なもんで、ゼインに言わせたかった、そんだけの話です。
ホントはどこぞの優等生の話を途中まで書いていたのですが、こっちのがあっさり上がりました。どうも私はキール贔屓なようです。そのうち格好良く成長した姿も書いてやりたいですね。
