(あらすじ・前回日記参照)
いつも相談するのは、今となっては繋がるかも稀な私の大親友、au電波。ソフトバンク電波より、au電波へ発信。先方の電波はちなみにつぶらな瞳の犬顔だった。電波は今風邪をこじらせている。
「あんな、宮澤さんの舞台が良かったのだよ。君も、見に行くべきだったよ・・・。劇中に、“鳩男”が出てくる。その鳩男は飛べないけど、じゃぁ、飛べなければどうするかって、そりゃ、泳ぐしかないんだよ・・・・。」「それは、アンタ独自に感づいた事なの?」「いやぁ、そりゃぁ、見りゃわかるんだよ・・・。」
最近の口調がやたらと井筒調なのが気にかかるが、この電波は風邪を押して、欲する言葉を吐いてくれる、「繋がらなかったけど、しばらくどうしてたの?」「くそう・・・、電波め・・・。」一体私は何と交信しているのか、犬顔も見えないままで相対する相手が存在するのかどうかも怪し気だったが、その電波は相変わらず私の救いだった。
「飛べなけりゃあ、泳げばいいんだよ・・・。生きづらいんだよ、極端でなくやっぱり。俺らみたいな生き方を、何の保証も後ろ盾もなくそのまま30代も近づいて、20代ならまだ先があるって自然に思えたけれども、もうこの歳になって、生きづらさばかり感じるのだよ、だけども、俺も君も、そういう生き方を選んだんだから。何とかやるしかないんだよ。どんどんどんどん、周りの状況は悪くなってる。だけども飛べなかったら泳ぐしかないんだよ・・・。」「そうやね・・・。」
「うまくやれよ、それしか言えんよ。この不良がやたら生きづらい、バッシングされて元気がないこの中、生きづらいと思うよ。だけど、それを選んだんだから、何とかうまくやれよ。俺は今体調が悪くて身体が思うように動かないからやたらと本を読む。全然理解出来ないような哲学書なんかでも読む。判らないから知るんだよ、結局、自分の見た周りの事しか現実じゃないんだから、判る為に、知るんだよ・・・。」
その犬顔au電波に、思い余って私は涙を流す。
「けなげに生きてるねぇ、最近あんたは・・・。」
「けなげだよ、必死だよ。同じ事を二度しちゃいけないって、僕はマキちゃんに学んだんだよ、それをやってる。だから、マキちゃんも、今しんどいとは思うけど、同じ事を繰り返しちゃ駄目だと思うよ・・。」
消え入りそうな声に、最近そのau電波にそそのかされて読んだ“介護入門”を読んだ時と同じ泣き方をした。
もう本心は見せない。都合のいい部分だけ「大好き」というのなら目の前ではそうしてやろう、ただもうどんなに「全てを話して、本当の事を全部」と言われようが、全てを吐き出す事はすまい。いい歳で、いい大人で、いい女でありたい私は、いい意味で心を閉じてゆく。コレがはけ口かと思いきや、綴りながら少しのエンタテイメントを気取る私はコレすら脚色して彩る。もう私の全てを誰かにわかってもらおうとは思わない。
破滅型を10代のみそらで気取り、生き残った10年後の答え、「うまく生きてやる」。最大の自由と不自由と、諦めと真似のできない経験と。最高にストイックで、最高に甘美な。
コンロ前の地獄より、もとい。コンロ前の宇宙より。例の犬顔au電波以下皆様へ向かって、ロッドアンテナを伸ばす。発信か、はたまた露出か、ドダイ、最後は手すさびに。