昨晩はアルトマン『BIRD★SHT』(1971)を観てきた。
米盤ビデオで観ていたけど、想像以上に美しいフィルムの発色にびっくり。
いつのまにか「アルトマンの最高傑作」とか「カルト人気No.1」とか騒がれているみたいだけど、あたかも大切にされてきたかのような言い種は捏造。僕は15年以上『BIRD★SHT』の話ができる人なんかに会ったことないもの。でもぴあ映画祭委員会の努力には敬意を払います。そして並んででも観に来た人たちにもね。
「最高傑作」なんかでは全然ないけど、普通の監督が撮った傑作なんて及びもつかないものであるのはきまってるので、アルトマニスト(誰が考えたのかこれ。名乗ります)極左としてメモ。観ている人にしか意味ないけど。
まず、徹底したメタフィクションとして作られているということ。タイトルクレジットや最後の出演者総出のパレードは言うにおよばず。それぞれのキャラクターやシークエンスも、映画や映画ジャンルからの引用/シミュミラークルとしてなりたっている(『ブリット』から『オズの魔法使い』まで!)。たとえば、不必要に長いカーチェイスは、まさしく映画のカーチェイスって無意味でくだらなくて楽しいでしょうという作りで、その馬鹿馬鹿しさをえぐりだしながらもきちんと見せてくれる演出の、ゆるさと引き締めの妙。こんなこと、P・T・アンダーソンあたりにはまだできない。アルトマン恒例のユーモアと後味悪い無気味さの同居が全編をおおっていて、そもそもユーモアや無気味さというもの自体が文脈のメタなんだ。
さて、アルトマンだから、メタを誇って喜ぶだけの才能ごっこで終わらない。示されるメタによって、この映画がまさに映画でありフィクションであることが浮かび上がる。アルトマンの映画で繰り返される主題、世界という枠からの突破。このフィクションに投げ込まれ突破をはかるのが主人公の少年だ。”アストロ・ドーム”の地下の核シェルターに潜み、人工の羽根を製作し、鳥のように飛ぶことをもくろむ。カラスを連れた謎めいたトレンチコートの女性が少年によりそい、邪魔する連中から守る。連中は次々と死んでいく。彼女の背中には羽根を植え付けた/切り落とした傷跡がある。鳥に憑かれた女が後継者を育てている?これは両義的だが、やはり羽根を切り落とした守護天使=死の天使と見るべきだろう。その理由は彼女の超越性(フィルムをシャンプーに変える(笑))のみならず、後に述べる理由にもよる。
”アストロ・ドーム”こそがフィクションの中のフィクション、映画タイトルが張り付けられるところ、虚が上演される場所だ。フィクションの”地下”に潜む彼は、ドーム=巨大な鳥カゴ(枠)を突破することができるのか。しかし、少年は軽薄な女に誘惑され、天使を裏切る。天使は悲しみ、ドームを歩き去る訳だが、この外の光にシルエットが溶けていく美しいショットは、まさしく”スクリーン”の向こう側へと去ったことを意味する。人工の羽根を、女の誘惑によって「金儲け」に結び付けてしまった彼は、しかし直後に当の女の裏切りに遇い、絶望する。この瞬間、彼は外へではなく、ドームの中へ飛び立つ。つまり、フィクションの内部へ。断念された外部への飛び立ちの意志は、ドームの天井=フィクションの限界、内部と外部の境界にぶちあたり、墜落せざるをえないだろう。
彼の死体を前にして、ファンファーレとともにパレードが始まる。次々にピエロに”扮した”役者たちが紹介されていくが、主人公のバッド・コートのみが、起き上がりピエロ化することなく死骸のままでいるのは、彼だけがフィクションの壁に挑み、それに失敗したことを無惨に示している。そう、それは失敗だった。なんて悲しい、なんて突き放した認識。しかし、僕らはこの続きを知っている。光の中へ、映画の外へと消えていったあのトレンチコートの天使は、アルトマンの遺作『今宵、フィッツジェラルド劇場にて』に、今度は劇場というドームへと降り立つのだ。翼をなくした天使。彼女は触れるものに死をもたらす不吉な天使でもある。しかし、それはキャラクター、フィクションのコマとしての死なのだ。コマをやめる意志と希望には、彼女は別の力を与えるだろう。時空を超え、アルトマンの映画と映画を渡りゆき、その世界を突破しようとする者たちを導びくだろう。彼女が最後に映画をどこへ連れていったのか、もう僕らは知っている。
ところで、アルトマンは世界を突破できたのだろうか?
ところで、僕らは世界を突破できるのだろうか?
天使が現れたとき、それはわかる。
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その後、のんべえ横町の狭い店で、作家のNさんたちと★SHT祝賀会。
鳥人間映画というジャンルについて、『未来世紀ブラジル』(『バンデッドQ』でデュバルつながり!)とか『バーディ』とかの話になる。タイトルを思い出せなかったアラン・タネールのは『光年のかなた』でした。
あとでKさんが僕がその時に語った名言というのをメールしてくれた。
1、アルドリッチを男気だけで語るのはいけない
2、オヤジはいいものしか評価しないから詰まらない
アルトマンはチャンドラーより偉大だ!って叫んだことは憶えてますけど、すみません、両方とも言った記憶ないです。1は名言ですね。2は意味がわかりません。
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Jさんもひさしぶりに飲みたかったね。彼女のデビュー音源も聴いてみたかったです。
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