8月最後の日曜日。衆議院選挙の投票に、連れ合いと出かけた。
夜に開票速報。民主党の圧勝。山が動いた。政権交代の歴史的な日。
私が生まれて以来、半世紀、ずっと自民党の政権だった。
小党連合とか、自社連合もあったけど、第一党は自民党だった。それが今変わったというのは、とにかく画期的な出来事だ。
ただし、何でも変わればいいというものではない。その政策が問題だ。
私が民主党に最も期待しているのは、公共事業の見直しだ。
今までの放埒な公共事業のばらまきでは、日本国は借金をかかえて倒産してしまう。将来の子どもたちの世代のために、むやみな借金はしないほうがいい。
おまけに、公共事業は、山にダムや川に堤防や海に空港などを作ることで、自然を大きく破壊する。借金のうえに、環境が失われては、二重に損である。
しかも、そのダムや堤防や空港がどれだけ必要なのか。維持費にどれだけかかるのか、採算はとれるのか、心もとないものが多い。
この話になると、私にはひとつ、苦い思い出がある。
諫早湾の干拓工事。
山手線に囲まれた部分くらいある巨大な干潟を、うめたてて農地にしてしまう。もちろん農地を増やすことに反対ではないが、海の干拓地は塩気が抜けないし、全国で減反している一方で増やすのはおかしい。また、防災の効果も低い。
何よりも、つぶされる干潟が、すばらしい生命の宝庫だった。
干潟にはプランクトンが大量に発生し、赤く紅葉する草むらができ、ムツゴロウやカニやさまざまな魚介類や海苔などが生まれ、さらにそれを求めて海鳥たちが大量に飛来する。海の浄化作用もたいへん大きなものだ。
水産業や環境保全の立場からすれば、遺す意義の方がはるかに大きい。
あまりに理不尽だ、ムツゴロウら、生き物たちの命を守れ。
そう決意した私は、街頭にたって、署名活動を始めたりした。義憤にかられて。
運動するなかで、ネットで仲間もできて、いっしょにがんばったのも懐かしい。
その時に、この反対を主張していたのが、民主党だった。
しかし残念ながら、署名はずいぶん集まったのに、計画は続行された。
「海のギロチン」により、命の水はたたれ、干潟はドブになった。思い出しても無念の涙に泣けてくる。無力感を、あの時ほど感じたことはなかった。
ダイナマイトもって単身、堤防に行こうかと空想したくらいだ。
そのころのこと。ある時、東中野の駅前を通りかかった。
すると、管直人さんが、選挙カーをとめて街頭演説をしていた。そんなに人は集まっていなかった。私はお話の一段落したあと、前に言って話しかけた。
「諫早湾、なんとかなりませんか」
「政権をとったら、やめさせます」
はっきりと、その場で明言して請け合ってくれた管さん。
今、その民主党が、政権をとった。期待している。
日本の未来のために、子どもたちの将来のために、地球の明日のために。
ほかの政策はともかく、公共事業の見直しだけは、断固進めてほしい。