56.最後のガチンコ勝負と巣立ち  

小さな戦士達の新旧対決は、戦力把握をするには一番手っ取り早い方法で、兄貴分33期生達の実力の再確認と、弟分34期生達の今後の動向を占う(予想する)最適な実戦であった。バックネットの後ろに陣取り、教え子達のガチンコ対決をちょっと外から見る感じで見守った。勝敗より試合運び。攻め方守り方。投手力・バッテリーの違い。チームカラーの変化等を見続けたが、実は半分楽しんでいたのである。

手塩に掛けた教え子達がお互いを意識しながら真剣勝負をする場面なんてなかなか見れるものではない。いつも一緒に練習している間柄だから、お互い長所・短所を知りつくしている。いつもはそんなに情報がない相手選手と戦っているのだが、兄弟対決はかなり濃密な情報がインプットされた状態で戦うからこちらの予想通りに試合が進んで行く。サインプレーは新チーム中心に出し進めたが、お互い予想し合うので決定的なチャンスは余程変則的な打球じゃないと得点しなかった。

旧チームは悠弥@−翔太Aバッテリー。新チームは広太@−秀Aバッテリー。西陶器の守りの野球の基本線であり、試合を作って行く原動力である。結果は新チームに軍杯が上がったが、守りのミスが多かった方に失点が増えただけの試合内容。これが10回戦ったら、サインプレーを駆使して戦ったら、やはり旧チームの方が勝ち越すだろう。戦い方のバリエーションが多いし、何よりも攻撃力の破壊力と層と厚みがある分一日の長を感じた。だって、1年も違うのだから。

もう二度と戦うことが無い兄弟ガチンコ対決は参考になったよ。もう二度と見れない兄弟対決は楽しかったよ。ありがとう、6年生達。王座戦を控えている時期でも5年生達を中心に練習させてあげたよね。でも、これからはまた1年生。ステップアップ先の先輩達の中に混じって少しずつ「自分」を出して行ってくれ。新しい仲間と一緒になって次の目標に向かって全力で頑張ってくれ。

最後に、卒団式のOB対卒団生対決は楽しかったよ。おまえ達の先輩をバックに投げた時、おまえ達が強かったのが本当によく分かったよ。あのメダルの数が証明していたようにね。そしてこれだけはお前達に伝えたい。ユニホームと背番号を返してもらう時、おまえ達はただ強いだけじゃなく、いろんなものに感謝する気持ちも育っていたことが嬉しかった。家族や仲間との絆の大切さをいつのまにかに学んでいたし、監督やGMやコーチや沢山の人とのつき合い方も知らず々々勉強していたのだと思う。野球も人生もまだまだ始まったばかり。頑張るんやぞ!!(完)
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55.夜間練習の仲間の旅立ち  

3月3日(木)2年間通い続けた数馬と尚樹が、最後のJF夜間練習を終えて帰って行った。いつもと変わらない素ぶりでアップし、班別に分かれた仲間と一緒にアメリカンノックのボールを追い、ランダウン反復練習で仲間を追い、照明が届かないグランドの端っこで筋力トレーニングを行って、8時45分最後の夜間練習が終った。いつもと変わらない素ぶりでJFの仲間と練習していた。そう見えていたのは監督だけで、数馬や尚樹は「今夜で終わりや」と特別な思いで小さな戦士達との最後の練習に臨んでいたんだろうな。お母さんは子供達全員にお菓子を配る準備をしていたし、数馬や尚樹は「今日で終わりやねん」と仲間に打ち明けていたらしい。

湿っぽいお別れのセレモニーはしなかった。JFの夜間練習は来る者拒まず。来たければ来ればいいし、行きたくなければ来なければいい。数馬と尚樹は自身のチームで3/5日(土)卒団式を迎えるので、区切りとして先にJFの夜間練習を今夜で最後と決めてやって来ていたのだ。3班に分かれて練習していた全員がホームベースを囲んで集まって来た。時間は8時20分頃。JFの6年生達は明々後日で卒団。Jr千代田の数馬と尚樹は明後日で卒団。美加の台Fのアキラもそのうち卒団する。みんな一緒に集まれる日は今夜が最後かも知れない。6年生だけでシートノックをして今日の練習を終わろうと思う。5年生以下はしっかり見て、野次を飛ばしてもいいぞとハッパ?をかけた。

尚樹がキャッチャー、アキラがファースト、数馬がショートに散って行く。尚樹の横に翔太が、アキラの横には真太郎が、数馬の横には洸我が最後のシートノックを楽しもうと笑顔で肩を温めている。矢継ぎ早にノックを打って行く。もう、みんな慣れている。キャッチャーからファースト、セカンド、サード、ショート、外野に打ち続けて行く。一つ(一塁)、二つ、三つに送り、そして最後に四つ(本塁)にボールを返す。ミスすればもう一丁と全員がナイスプレーをして帰って来る。最後にキャッチフライで終わる。彼らのプレーに見とれていて、下級生の視線は脳裏から離れてしまっている。それは仕方ないだろう。

そしてとうとう最後の夜間練習が終わった。否、JFの夜間練習は未来永劫?(資源!は限りあるもの)続いて行く。6年生達が全員揃う夜間練習が今夜で終わるのだ。区切りをつけるのは大人だけではない。子供達も一応終止符を打とうとしている。練習途中、終わったら監督の車のところへおいでと声をかけておいたので3人揃って来た。これはね、と彼らに贈る言葉を説明し始める。『もっともっと身体が大きくなった時、今の前向きな「心」で半歩先の「技術」を自分のものにしようと頑張ればそれで十分だよ。そして小さな戦士達との思い出を大切にな』とK監の直筆を手渡した。ステップアップ先に行くまでのトレーニングにお出でと言ったものの、チャリンコでは遠い。もう少しママに甘えてもいいかなと思いながら・・・。
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54.お別れ交流戦  

2月26日(土)、27日(日)の2日間、陶器球場で5チーム+αと交流戦を行った。5チームとは、友好チームである、ジュニア千代田さん、常盤スワローズさん、初めての対戦野田ファイターズさん、新芦屋ドラゴンズさん、住吉フレンドさん、そしておとうちゃんズ(+α)とトリプルトリプルの超強行日程で楽しい野球を行ったという訳。結果は3勝3敗。勝ち負けよりも、これまでは役割分担を決められ、個人の思惑よりチームとして機能する能力を重視して何十試合も試合を繰り返して来たのだから、個人個人やりたいところを守り、打ちたい打順で交流したという次第。

この写真は、26日(土)に集まった3チームの合同写真。緑が常盤さん、青がJF、赤がジュニ千代さん。前列左から3番目が数馬。その右横が尚樹。2年間JFの夜間練習に通い続けた仲間だ。ジュニア千代田さんとはなかなか対戦は叶わなかったが、卒団前にやっと交流出来、常盤スワローズさんは阪南市長旗、堺市長杯のセミファイナルで対戦し交流が始まった友好チームである。

野田ファイターズさんとはとうとうお会い出来ずに終わってしまったが、JFとの交流戦を望まれていたという栄誉に感謝し、今後の交流を末永くお願いしたいと思う。次の日も新芦屋さん、住吉さんとお別れ交流戦をやり終えた小さな戦士達は最後にお父ちゃん達とも交流し、JF生活最後の土日を満喫して今週末卒団式を迎える。張り切り過ぎて病院送りになったお父ちゃんもいたらしく、康誠パパもビックリしたことだろう。

おっと、その前に、新小さな戦士達とのガチンコ2番勝負が控えていたのだ。3月5日(土)庭代グランドで最後の最後の真剣勝負が待っている。悠弥、翔太、康誠の強力トリオもその日だけは全開で後継チームと戦ってもらう。泰知だけは間に合いそうもない。翌日は北陸から直也が帰って来る。本当にみんな一緒にプレーするのはこれが最後。思い残すことなく楽しんで、少しゆっくりしてステップアップ先を決め旅立って欲しい。小さな戦士達の誇りを持って!
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53.最後の大会 王座決定戦V  

先週は雪と雨のお陰?!で夜間練習がほとんど出来ず、水曜日打ち込みと予備軍達とのケースバッティングとそのフォーメーション練習、土曜日150球くらいの打ち込みとシートバッティングをして、日曜日朝早くに集まり打ち込みとシートノックをして箱作グランドへ乗り込んだ。土曜日は明るく結構暖かかったが、決戦の日曜日は曇天で、また肌寒い1日に逆戻り。今年の春は早く来そうでなかなか来ない、じれったい今日この頃の天候である。

ちょっと、話が横道にそれるが、小さな戦士達も予備軍達も故障者が多い。誰かが治ったら誰かが怪我をしたり、AクラスもBクラスも全員揃って練習とか試合が出来ない時期が続いていた。6年生達は最後の大会直前に何とか全員合流し、彼らの最後の舞台「王座決定戦」準決勝に臨んだのだった。5年生達はまだ2人半、揃わない。半というのは最近ではあまり例のない疾患?で先週リタイア。凍傷である。交流戦でマウンドに上がった19番が試合後恒例のアイシングをするのであるが、何とアイシングで右肘の辺りが赤く腫れ、水袋状態。報告を聞いて笑ってしまったが、本人にとっては一大事。後の2人はしばらく時間がかかるだろう。

そんな、こんなで、6年生達は2月20日(日)最終章を迎えていたのである。泣いても笑ってもこの日で学童野球生活の最後の大会、試合になるのである。皆それぞれ、いろんな思いを持って望んでいたことだろう。朝、東中Gに集まっていた彼等は、少し遅れてグランドに着くと一斉に駆け寄って来てくれた。アップが終わりキャッチボールに入ろうとするところだった。全国大会用のユニホームを身にまとい、戦場に出て行く戦士のようにキリっとした顔で迎えてくれた。今日で公式戦が終わる。緊張感が伝わって来る。「みんな眠そうな顔をしてるから、思い切り動き回って身体を温めろ。身体を起こせ」と檄を飛ばす。

もう、思い切り投げることはない。しばらくは。だから思い切り遠投して、動き回って緊張感を解き放てと言ったつもりだが、普段と変わらないキャッチボールをする姿があった。えらいものだなぁと思ってひな壇の上から彼らを眺める。特別なことをやって特別な結果がいつもついてくるものではない。そんなことはわかっていると言いたげに3塁線からライト側に向かって放物線を描いている。1年前、2年前には出来なかった60〜70mの遠投をほとんどの者がやってのけている。やっと自分の打球の飛距離以上の球を放れるようになったのだ。

先ずは打ち込み。3ヶ所のゲージを作り順番に打って行く。2回り回ったところでシートノック。試合前のシートノックは今日で最後だろう。最近は試合でのポジションを勝手に想定してさ〜っと散って行く。難しい打球を打ってフィルディング練習をすることもない。リズムよく捕って正確なスローイングをして、仲間にボールを繋いで行くことが必ず試合に生きて来るということをみんな知っている。怒られたのはキャプテン真太郎だけ。相変わらずのノーコンだ。

昨日も東中Gで4ヶ所を3回り。シートバッティングで4回り。最後に3ヶ所で1人100本ずつの打ち込みをしていたが、5年生達とは違い練習の中心は「打つ」ことだけ。8時半、練習を終了し数台の車に分乗して王座戦の試合会場に向かう。車の中ではリラックス。ワンピースのDVDを見ながら仲間との会話を楽しんでいる。監督はというと、頭の中でスタメンを考えたり、相手投手やバッテリーの特長を思い返したり、一人ひとりの調子を確認したり、目を瞑って考えている間に眠ってしまっていた。

着くと、初めて来る場所だった。子供達は4年生の頃来ていたようである。箱作公園の中にグランドがあり、遠くに大阪湾が望める少し高台にある。準決勝1試合目が行われている。岸和田イーグレッツさんと熊取ジャガーズさんの試合である。どちらのチームもバッテリーは大きい。熊取さんが本塁打で追いつき、最終回岸和田さんが1点リードするとその裏二死から四番君が敬遠されフルカウントで走ると右中間に打球が飛び同点。その後タイムリーが続き熊取さんに決勝点が入った。

10時30分。予定時間丁度に準決勝2試合目が始まった。ジャンケンで真太郎が勝ち後攻を取る。先発投手は背番号1悠弥。捕手はやっと復帰後初マスクの背番号2翔太。ファーストは背番号10真太郎。セカンドは背番号4洸我。サードは背番号5啓介。ショートは背番号6玲史。レフトは背番号11嵩。センターは今日復帰の背番号14康誠。ライトは背番号8泰知。今日は背番号9紅兵は守備固め。背番号3亮二朗は代打の切り札。背番号13健士朗は後半出場。背番号7広大も守備固め。背番号12優貴は最終回。そして背番号0英美里は最後のマウンドに登場予定。航太はベンチで新しい仲間の応援。

そしていよいよ試合は始まった。S、F、空振り三振。S、S、B、空振り三振。打球を前に飛ばさない。3番君に5球目センターに打たれるが康誠が余裕でキャッチ。唯一心配していた立ち上がりは上々のスタートで攻撃に転ずる。JFのトップバッターは玲史。2球目ジャストタイミングで振り抜くとレフトへ低いライナーが飛んで行く。しかし真正面で一死。続く2番洸我が粘って粘って9球目をこれまたドンピシャのタイミングで左中間を真っ二つ。PBと翔太の死球と悠弥のFCで満塁の大チャンスが訪れた。

5番康誠に笑顔でゴロGOのサインを送る。コンパクトに振り抜かれた打球は高いバウンンドのショートゴロとなって洸我が還る。待望の先制点が入った。康誠は駿足を活かして一死満塁のチャンスを残す。大量点が入ればより有利な展開に持ち込める。ところが勝利の女神はそうは簡単に主導権を握るのはまだ早いよと、ゴロGOのサインに啓介は真っ芯に当たるレフトライナーを打つが走者は動けない。啓介と真太郎に本当によくチャンスが回る。真太郎は外のボール球を空振りし一点止まりで2回に入る。

悠弥−翔太のバッテリーは外の出し入れと緩急を使いながらサードゴロ、ショートゴロ、三振と走者を出さない。2回裏は三者凡退に切ってとられるが、3回表も先頭打者を見逃し三振、ショートゴロと淡々とアウトを重ねて行く。9番打者君に初ヒットを許すがマークしていた1番安井君(エース)をセンターフライに打ち取り、守りの不安は徐々に消えて行く。3回裏、一死から追い込まれた翔太はインハイのボール球を一瞬の体の回転でライトフェンスを超すホームランを放ち、安井君の自信をも揺るがす2点目を一振りで奪ってしまう。

攻撃の手を全然緩めることのないJF打線が更に襲いかかる。悠弥の打球も少し上に上がれば軽々とオーバーフェンスだろうと思えるエンタイトル2塁打でチャンスを作る。PBと康誠の四球と盗塁で拡げたチャンスに今日大ブレーキの啓介が浅いセンターフライで凡退。次打者真太郎。初回と同じシチエーションである。今日だけではなく、もう何回となく残塁の山を築いて来たこのコンビにサヨナラをしたのがキャプテン真太郎だった。アドバイスは「振るな!ミートだけ心掛けろ!最後には当てろ!」何というアドバイスだろう。しかしジャストミートした打球はショートの頭を越えレフトとセンターが追いかけている間に悠弥と康誠が還り、この回3点目が入った。

悠弥は5回を投げ1被安打、1死四球、5奪三振の好投で6回表二死から英美里に譲る。JF打線は4、5回にも1点ずつ取り、またしても啓介、真太郎に1打出ればコールドというところまで攻め込むがそうは問屋は卸さない。クリーンナップの素晴らしい打撃と下位打線の残塁はどこでもある姿だろう。英美里は3球投げピッチャーゴロに打ち取り帰ってくる。試合終了と主審の声が響き決勝進出を決めた。終わって見れば8安打、6得点。阪南市長旗決勝戦のリベンジは果たせた。リベンジと言っても、南松ファイブスターズさんはJF25周年大会参加の友好チーム。試合前後は和やかな雑談を交わす間柄で最後は健闘を称え合い別れた。

さぁ、遂に王座戦の決勝戦である。にも関わらず昼食中はOBや各連盟の役員さんと談笑し、子供達は子供達で緊張感はそんなに漂って来る様子がない。12時きっかりに準決勝が終わり13時丁度に決勝予定。1時間の昼食休憩は今年はあっても昨年はないままに帰ったことは記憶に新しい。特にOBパパママ達との再会は監督のオロナミンC摂取に等しい価値があり貴重な時間なのである。千代29号と橋28号にとっては昨年のリベンジはこれから。彼らの顔は監督のビタミン剤。弁当をパクつきながらグランドを見ると熊取ナインがもう練習している。

食べ終わったJFナインも、じゃあもうひと頑張りするかとアップを始める。簡単なキャッチボールとコロコロ。そして全員一緒に素振りをひとしきりやって試合開始を待つ。12時55分頃、審判団がグラウンドに入る。両軍ナインがベンチ前に並ぶ。「集合」と掛け声が響き渡る。ジャンケンは負け。当然のように先攻。右投げのエース君が投球練習を始める。誰がいい始めるのか、「呼び込んで打たんとあかんぞ」1番玲史が打席に入る前にもう一度タイミングが早過ぎるぞとアドバイスをするが、案の定2球目を振り抜くと3塁側応援席に飛び込むファール。それでも粘って四球で出塁する。幸先の良い出塁である。2番洸我にゴロGOを送る。セーフティ気味に転がして間一髪アウト。1つのアウトを上げたが玲史を2塁に進めている。「OK、OK」ベンチも応援団も握手喝采。3番翔太に託す。しかし芯で捉えた打球はピッチャー真正面の強い低い打球で抜けずスーパーキャッチされる。飛び出した玲史は戻ることは出来ずダブルプレーでチャンスが一気に潰れた。

学童の最終戦となるこの試合にマウンドに上がったのはエース悠弥。JF始まって以来の2度目の連投である。翔太の肩は完全復活していない状況で、全員で勝ちに行くには悠弥以外考えられない。1回裏は9球で、2回は15球で1被安打。3回は14球で、8イニング無失点を続けてくれている。JF打線は3回表が終わって無安打と投手戦の様相が漂い始める。均衡を破ったのは2番洸我のセンター前ヒット。準決勝でも両軍最初のヒット、得点を上げているリードオフマンである。翔太の3Aで二死ながらも得点圏に進むと、悠弥の激走でチャンスを拡げ今日の攻撃のキーマン康誠に打順が回って来た。

1球目を自信を持って見送ると、「狙い球は低目に絞って打球を上げようとしろ」とアドバイスを送ると、2球目の甘い球を少し振り遅れながらもパワーで押し込み、いつもの打球スピードよりはゆったりした打球が右中間方向に飛んで行った。洸我と悠弥が満面の笑みで還って来る。珍しく康誠が2塁ベース上で地味にガッツポーズ。1、2番がチャンスを作りクリーンナップが還す。理想的な攻撃パターンが卒団前にやっと完成した。これで6番、7番のどちらかが掃除をしてくれたら完全に必勝パターンなのだが、タイムリーは期待しているが当てにしていない。

4、6回はヒットを許すが単発に仕留める悠弥にダメ押し点が5回表に入る。二死から9番泰知がレフト線に2塁打を放つと1番玲史がセンター前に見事なタイムリーヒットを打ち、連打で追加点をもぎ取ったのである。当てにしていない連打がタイムリーとなってダメを押す、それも9番が出て1番が還す最も当てにしていない得点パターンである。7回表は康誠のセンターオーバー2塁打で当てにしているゴロGO2連発を期待していると啓介に代わる亮二朗が見逃し三振。真太郎も空振り三振。挙句の果てに牽制球が逸れてセンターが捕球するのを見ながら3塁に突っ込みTO。

当てにしていることを練習時間を割いて(自チームだけの秘密練習)トコトンやって来たつもりだが、期待しているが当てにしていないタイムリーや連打を打って優勝した小さな戦士達。打者と走者が協力して進め、還すJF野球は未だ完成していないが、当てにしていなくとも期待しているタイムリーは滅茶苦茶嬉しいのは何故なのだろう。7回裏、悠弥は連続三振を取ってお役御免。マウンドを英美里に譲りセンターへ。英美里はストライクを投げ打球はセンターへ。悠弥が簡単に捕球し試合は終わった。優勝したんだ。王座を取ったんだ。昨年のリベンジが出来たんだ。おばちゃんにいい報告が出来る。両軍ナインが並び挨拶が交わされると主審の方から悠弥にウイニングボールがトスされた。笑顔で大応援団が待つ3塁側ベンチへ帰って来た。全員で後輩達やOBパパママに挨拶をする。悠弥が「ウイニングボールです。おばちゃんに渡して下さい」と持って来た。もうこの辺で涙が溢れて止まらない。

表彰式と閉会式が始まる前はOBパパママ達とハイタッチの渦が出来た。嬉しかった。32期29と28がいる。やったなぁと硬い握手。手が痛い。29期、31期29と28もいる。沢山のOBママやパパ達、おじいちゃんおばあちゃんもいる。表彰式が始まった。晴れ晴れしい表情の小さな戦士達が並んでいる。悔しい、涙顔の熊取ナインもマウンドを中心に横に並んでいる。最後にメダルを首に掛けられ、総評が終わり遂に学童野球生活も終わった。胴上げはみんなでとお願いしOB達も輪の中に入ってもらった。こんなに沢山の人達に支えられて監督をさせてもらっているんだと思うと他に欲しいものは何にもなくなる。祝勝会も盛り上がり幸せな時間が続いた。次は高野山でみんな集合やで。33期生の家族一緒に・・・。

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52.最後の大会 王座決定戦U  

1回戦は2月6日日曜日、16チームがサザンスタジアムに集い開会式後8試合が行われ、ベスト8が決まった。予定では11日(建国記念日)が準々決勝、13日(日)が準決勝、決勝というスケジュールが思わぬ大雪で11日(金)は中止。13日(日)にそのままスライド順延となり準々決勝4試合が行われた。JFは第4試合。13時30分開始。たっぷり打ち込んでゆっくり調整して乗り込めると自分勝手な計算をしていたが、そうは問屋は卸さなかった。

思わぬ大雪で順延したり、たっぷり練習して乗り込むことが出来なくなった以上に、もっと思いがけないことが起こっていたのである。1回戦に勝利し、火曜日の夜間練習で調整し、木曜日に捕って投げて走り込んで金曜日に備えるつもりが、木曜日の朝早くに一変していたのである。私の教え子1、3期生のOBのママが病床で突然急変し帰らぬ人となってしまった。彼等は教え子、その親である以上に家族と一緒のような幼少年期を過ごし成人した経緯があり、妻にとっても大親友が天国に召され、家族同様悲しい現実を受け止めねばならない出来事が起こっていたのである。

そのママを私達は「おばちゃん」とう呼ぶ。ごく在り来たりの呼び名であるが、そこには30年来の親近感と重みがづし〜んと横たわっている。10日(木)午前8時5分沢山並べられた医療機器のモニターの数値が「0」になった。昨夜おっちゃんと長男と私達は「今夜寝ずの番は必要ない」と話し合い全員家に帰っていた。次男と嫁さんは遠い島根に嫁さんの祖父の葬儀に急遽駆け付けていていない。みんな明日から始まる新しい治療法に期待して・・・。ところが夜中に急変し、直ぐに駆けつけたおっちゃんと長男は何とか間に合った。私達はその後のTELで走ったが、首筋だけに温かみを残しおばちゃんは逝ってしまっていた。ついに次男と嫁さんは死に目に会えず、おじいちゃんの通夜にも立ち合えずとんぼ返りをせざるを得なかった。

10日夜自宅で仮通夜。11日(金)お通夜。おばちゃんの弔い合戦に行くぞ。ウイニングボールを備えるぞと意気込むが、朝GMからメールが入る。えらい雪です。自宅待機から中止、順延となり彼らを手伝うことにする。お通夜が始まりGM達が受付に並びJFOB達の弔問を捌く。あれだけ沢山後輩達の試合を観に来てくれたおばちゃんだから、たくさんのOB達が駆けつけるのは当たり前。16期生からはじまり、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32期のOB、パパママの顔が集まった。11時頃先に引き上げたがOBでチームを作り活動しているメンバーは12時過ぎまで付き合っていたらしい。

小さな戦士達だけは通夜に駆けつけた。全員集まれば収集がつかない。高野山に連れて行くと言いながら反古にした彼等は王座戦を観てもらうつもりがそれも叶わぬこととなってしまった。王座戦優勝の報告だけが彼らに残された唯一のチャンスだ。それには練習で調整して日曜日に臨まねばならない。しかし雪は土曜日も日曜日も残ったままだった。13日(日)朝、堺東高校GはJF総出で水取り、交流戦にやって来た河内長野青葉さんや熊取ジャガーズさんも加わって水取り。出発時間は12時だが、とうとうダイヤモンドは使えず鳥籠2ヶ所で打ち込みだけをしてサザンスタジアムに乗り込んだ。

着くと早々にいろんな連盟、協会の役員さんが、堺はJFだけになってしまったぞとプレッシャーを掛けに来た。観客席に上がり前の試合を観戦する。勝った方が準決勝でJFに当たる。運営役員さんがバッテリーはグランドに入って投球練習をしてもいいよと声をかけて下さった。JFは3塁側。南松ファイブスターズさんのベンチだ。監督さんに挨拶し悠弥と玲史を入れる。顔を合わせた選手達に次の1点を取った方が勝つぞ、ガンバレと声をかける。ニコっと笑った選手達は試合が終わりベンチから出て来る時も笑っていた。

小さな戦士達と一緒に入る。直ぐにグランド挨拶をして本部席前に並び挨拶をする。そして勢いよく外野の芝生の方へ走って行きキャッチボールを開始する。今日はノックも出来ずに乗り込んだものだから、せめて何球かづつノックをしようとしたらバックネット前に並んでいた審判団からベンチ前というせっかちな合図が聞こえて来た。学童野球を裁く審判の方達は子供の身体をもう少し考えてあげて欲しい。でも仕方がない。ベンチ前に整列し、集合という掛け声とともに子供達がホームベースに向かって走って行く。

今日は真太郎がパーで勝った。だから後攻。悠弥がマウンドに歩いて行く。玲史がそのままの位置に残る。ファースト真太郎。セカンド紅兵。サード啓介。ショート洸我。レフト嵩。センター泰知。ライト翔太。翔太は医師の許可が下り復帰先発だ。でもいきなり投手、捕手は無理。6人+1名がベンチスタート。航太も背番号15をつけてベンチ入りさせてもらってる。一番最後に小さな戦士達の一員として名を連ねた。

先発投手悠弥は1回の表を10球で、2回の表は啓介の送球ミスもありながら12球で、3回表は二死からライト前にヒットを許すが牽制で刺し14球でマウンドから降りて来た。でも調子は悪そう。4回表、試合が動いた。2番君をサードフライで一死とした後3番君を死球で出し、4番君にフルカウントの9球目左中間に運ばれスタートを切っていた1塁走者が還り先制点を献上してしまった。後続を断ち切るが重い1点はスコアボードの上のチームの方に点された。

追いつき追い越す展開になったJFは、初回からチャンスらしいチャンスは訪れない。4回裏、二死から4番悠弥のラッキーな投手後ろの小フライ落球から反撃は始まった。5番翔太はレフト前に流し打ちで一、二塁。ここで当たっている6番啓介に回って来た。1−1から振り抜いた打球は右中間方向へ。悠弥が還り同点。尚一、二塁に逆転のランナーが残る。7番真太郎が打席に入る。しかし、よくこんなチャンスにキャプテンに回ること。ここで一打出れば完全にJFペースになる。しかしそんなケースで監督を、ベンチを、応援席を楽にしてくれたのは札幌での全国大会くらいのもの。真太郎、どの辺が一番好きや?真中です!よしそれを狙え!ハイと笑って1球目を振り抜いた打球はライト前へ。タイムリーが続いたと思ったのは束の間。え〜?!なんでアウト?と親父の声。ほんまに、なんでアウトになるのと言い返す。

悠弥は本調子ではないのによく投げてくれた。玲史もよくリードしてくれた。7回表が終わって1−1。これで負けはなし。翔太から始まる最終回の攻撃はサヨナラのチャンス。その翔太がきれいな打球をライト前に弾き返す。仕掛けるか、啓介の調子の良さに任せるか。今日も2打数2安打。これで王座戦5打数5安打と絶好調をキープしている。1球目ファール。2球目真っ芯に当たった打球はレフトに真正面に飛んで行く。タラレバをよく言う監督は啓介に送らせたらよかったと。結果論であるが本当はそうするべきであった。しかし打って最低でも翔太を2塁に進めてくれればいいと打てのサインしか送れなかった。

一死一塁。真太郎は転がし二死二塁と一応サヨナラの御膳立てを作った。バッターは嵩の代走康誠に代わって健士朗がレフトに入って打席に向かう。ここでも迷う指揮官。亮二朗をまだ残している。ここしかないと思いながらも健士朗の1回戦のセンターオーバーを重ね合わせてしまう。ローボールOKや。みんな叫んでいる。しかし真中高めに来た球を思い切って振るが当たり損ねてサードゴロ。万事窮した。この回の攻撃前、サドンデスになればおまえ達の方が絶対有利だから安心しろ。だけどレギュラーイニングで決着をつけてしまえ。その辺でおばちゃんが見ていてくれるから。

果たして、みんなを騙してサドンデスと言ったが、抽選になってしまった。相手側選手達の側へ回る。封筒にはいったクジを切りますかと主審が言うが、啓介と呼んで啓介に切らせる。住江さんの監督さんも同じように選手に切らせる。9人づつ封筒の入ったクジを引き、9枚づつ入った封筒をバックネット前で1枚づつ開けて行く。×、○、同点だ。更に開けて行く。×、×。ここで数人の役員さんが間違いないなと声をかけてくれる。しかしまだ全部開けられていない。×、×、×、×、そして最後も×。何という差がつくものだろう。開ければ出て来るのは×ばかり。こんな抽選結果は初めてだ。

住江さんの監督さんに声をかける。勝っても負けても抽選は非情である。子供達も大人も涙するのは当然のこと。ここで声をかけられない監督は自分のことしか考えていない人だろう。そしてもう一つ思ったことはやっぱりおばちゃんの存在だった。○はひとつだけ。思いやりの心はそっとひとつだけ○を残して、ファイナルへ挑めと勇気をくれたのだろうと思う。もう1日小さな戦士達と試合が出来る。少しでも長く一緒に野球が出来る。誇りに思う教え子達が増えて行く。勝利の女神はおばちゃん。阿弥陀如来の下からこれからも応援してや。小さな戦士達を!
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