桜もほぼ満開の時期の金曜日、克也と御堂の立ち上げた会社でのお花見が催されていた。
参加者は、全社員と主だった得意先のお客様達。
場所は、花見で賑わうところではなく、隠れた穴場の為、彼ら以外の花見客は皆無であった。
ドンチャン騒ぎを好まぬ彼ららしい、幽玄で風流な花見である。
ライトアップされた桜の木。
桜の森か…と思われる場所に、松明を焚き、緋毛氈を敷いた上での茶懐石料理。
料理は、一流の和食の板前達によるものであり、桜のお酒が出されたほどである。
そして、朱赤の傘のさされた場所では、お抹茶が点てられ、桜の和菓子が彩りを添えていて、お酒の飲めない人には好評だった。
別の緋毛氈の上では、京都の祇園から特別に出張して頂いた、芸舞妓達が舞いを披露している。
勿論、地方さん達による生の三味線や鼓の音色に合わせて。
舞いを披露していない時も、琴の生演奏がなされていた。
粋な趣向の花見に、普段は気難しいお客様の顔もほころび、上機嫌で和やかに過ごしていた。
これで、また何件かの契約が取れるであろう…ことは言うまでもない。
そんな花見がお開きになり、全てのお客様を見送り、後片付けをしていた社員たちを見送った後…
克也「今から二人きりの花見をしよう。場所を変えるぞ!」
そう言って、先に歩き始める克也。
直ぐに後を追いかけ、二人で歩き始めた。
御堂「今からか?どこへ行くというのだ?」
克也「取って置きの花見の場所だ。」
御堂「ここ以外にも、そんなところがあるのか?」
克也「ああ。」
御堂「ここの場所も、よくぞ見つけたな…とは思ったが…。」
克也「ここは、本来はある人の私有地なんでな。普段は勝手に入ることは出来んが、今日は、特別にお願いしたのだ。勿論、その方も今日招待してだがな。満足して頂けたようで、何よりだったが。」
御堂「そうだったのか…。お前は、本当に顔が広いな…。」
克也「そうでもない。御堂さん、あんたもなかなかなものだと思うが…。今日出張して頂いた芸舞妓達は、あんたが手配したんだろう?俺は祇園には行ったことがないんでな…。そういうつては知らない。」
御堂「ああ。いつだったか、まだMGNにいた頃に、京都へ何度か出張したことがあってな。その時に祇園へも接待で行ったことがあったからな。今日は、その時にお世話になった芸舞妓さんたちに来ていただいたのだ。置屋の女将さんにお願いしたのだ。」
克也「そうか。それに、料理もなかなかのものだった。」
御堂「ケータリングを始めたという料亭でお願いしたのだ。そこの店には行ったことがあったんで、味は保障付きだし。呈茶も評判良かったぞ!特に、お酒を飲めない女性達には好評だったな。」
克也「知り合いの中に、お茶の師匠をされている人がいたことを思い出してな。夜桜の下でのお手前をお願いしたら、そういう機会は滅多にないから…と快諾頂けた。やっぱり、お前がパートナーだと、いい仕事もいい催しも出来るな。これからも頼むぞ!」と言って、ニッコリと微笑む克也。
御堂「当たり前だ!俺を誰だと思っている。お前についてゆける奴は、そうはいないぞ!」と言って、少し顔を赤らめる御堂。
勿論、お酒の所為などではない。
その後、二人が向かった先は、年末年始の休みに過ごした、克也の島だった。
当然、克也の操縦するクルーザーで。
御堂「この島に、桜の木もあったのか。」
克也「ああ、特別に植えたんだ!さっきの場所に比べたら、それほど広くもないし、桜の木の数も少ないが、なかなかのものだぞ。既に、花見が出来る準備は整えてある。」
御堂「全く、用意周到な奴だな、お前は!」
克也「あんたもな、御堂さん。」
島に立てられた別荘の裏側には、東屋があり、その周りには桜の木が何本も植えられていた。
そして、やはりライトアップされ、松明が焚かれていた。
その一角には、やはり緋毛氈が敷かれ、その上にはソファーベッドとサイドテーブルが。
時折、微風に舞う桜の花びらが、1枚、また1枚と、ソファベッドに舞い降りる。
克也「さぁ、宴の始まりだ…。」
そう甘い声で言って、御堂にキスする克也。
既に、二人は、ソファベッドの上である。
御堂「ずるいな…。こんなことされたら、拒めないじゃないか…。」と、恥らう御堂。
克也「あんたは、シャイだからな。こういう演出でもしてやらないと乱れてはくれないからな。今宵は、おもいっきり乱れるがいい。全て桜の妖気の所為にして…。桜の妖気に狂わされた孝典の姿が見たいから…。」
御堂「克也…。私だけ乱れさせるつもりか?」
克也「安心しろ!俺も一緒に乱れてやるから…。」そう言って、御堂の背広の上着を脱がし、ネクタイの結び目を解き、シャツのボタンを外してゆく。
ソファベッドに横たわった御堂からは、満天の星ならぬ、満開の桜と克也の姿が視界に入っている。
静かに舞い降りる桜の花びら…
御堂「あぁ、本当に、桜が…綺麗だ…。」
克也「桜も綺麗だが、今日の孝典は、もっと綺麗で色っぽいな…。さぁ、もっと桜色に染め上げてやろう。」
御堂「お前も桜色になれ…、克也…。」
桜の妖気に当てられた御堂が、潤んだ瞳で自ら誘う。
克也の上着を脱がせ、キスをしたままネクタイを解く御堂。
克也「理性が吹き飛びそうだ!今夜は優しくしてやれないかもしれないぞ。」
御堂「優しくなんかしてくれなくていい。私は今、この桜の妖気で狂っている…。だから、克也も…。」
そう言って、自ら克也に足を絡め、まだ慣らしていない蕾に克也自身を受け入れようとしている。
克也「今日の孝典は可愛いな。だが、焦らなくていい。慣らさないと、辛いぞ。」
御堂「いいから…来て…克也。お前が…欲しいから…。」
切なげな視線で訴えてくる御堂に、流石の克也も理性が吹き飛んだ。
克也「愛しているよ…孝典…。」
御堂の体を気遣いつつ、少しずつ御堂の最奥へと自身を沈めてゆく克也。
御堂「あぁっ…。」
慣らされていない体に痛みが走り、仰け反る御堂。
胸は、既に桜色に染まっていた。
克也「だから、無理するなと…。」動きを止める克也。
御堂「いい。大丈夫…だから。やめないで…。」
克也に抱きつく御堂。
1枚、また1枚と、桜の花びらが、二人の姿をめがけて舞い降りる。
ソファベッドは、いつしかあちこち桜の花びらでいっぱいになった。
克也の体にも、御堂の体にも、桜の花びらは降り注ぐ。
桜の花びらの中で抱き合う二人。
その瞳には、既にお互いの姿しか映っていない。
克也「声を押し殺さなくていい。感じるままでいいから。孝典の艶っぽい声を私に存分に聞かせろ。」そう言って、御堂の胸の飾りを爪で弾く。
御堂「あぁ〜っ!克也〜っ…。」
克也「綺麗だよ…孝典。桜より、ずっと…お前の方が綺麗だ…。」
二人の心と体は、桜の妖気によって解き放たれ、乱れ狂った。
だが、どんなに乱れ狂っていても、二人の抱き合う姿は、どこまでも綺麗であった。
何度も抱き合い、疲れきって気だるい様子の二人の姿。
克也は、その腕に御堂を緩やかに抱いている。
克也「寒くないか?」
御堂「大丈夫だ。お前が…暖めてくれたからな…。」恥じらいながら言う御堂。
克也「そうだな。桜色に染まってるし…。そういえば、紅葉の時期は、桜の葉も赤く紅葉するんだったな…。」
御堂「まさか、また、その時に…。」
克也「ああ、その時は、孝典を紅葉させてやるから。」
御堂「なっ。まさか…。」
克也「安心しろ!紅葉の季節は、さすがに寒くて、外では無理だろう…。」
紅葉の時期に、外で抱かれている自身の姿を想像した御堂が、真っ赤になった。
克也「それとも、そうして欲しいかい?お望みとあれば、そうしてやるよ。」と意地悪そうに言う克也。
御堂「それも…悪くないかも…。」言いながら、克也の胸に顔を埋める御堂。
克也、お前が相手なら、二人きりの場所でなら、何処ででも…と心の中で呟く御堂だった。
***END***

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