たくさん足のある生物がいた。
一本足のとれたその生き物は、ひとつの目的のために動いていた。
そのうちの一本の足は、大きな怪我をしていた。
昔の怪我で、すでに膿んでいた。
他の足でその生き物は、その足に包帯をまいていた。
たくさんたくさん。
傷ができてすぐは、とてもとても痛かった。
脳にいたいいたいとすぐに信号が伝わった。
脳がもう、いたいのは嫌だと思った。
一本とれた足のように、取ってしまおうと。
怪我をした足はそれを嫌がった。
怪我をした足は怪我の中に自分の足の先をいれた。
ぐちゅぐちゅ。
強い痛み。
他の足も手伝って、ようやく感覚が伝わる神経がきれた。
脳にいたいとつたわらなくなった。
ほんとはとてもとても痛いけど。
みためにもいたい怪我は包帯を巻いてなかったことにされた。
怪我をした足はよく動くようになった。
他の足は感心した。
脳はもう、怪我のことは忘れてしまったが。
他の足は覚えていた。
怪我をした足。
それなのによく働く強い足だと感心した。
ある日、足のある生物は風邪を引いた。
高い熱で体のふしぶしが痛んだ。
熱が下がってきて気がついた。
足の一本が、熱を持ったままであることに。
それでもそのまま放って置いた。
熱の後遺症で足のある生物の腕の一本が多動症になった。
その腕が、何もすることがないから足の包帯をいじるようになってしまった。
そして腕は初めて気がついた。
足の大きな怪我と膿。
足は他の足に、頭に必死に隠した。
自分に膿があること。
でも、義足に膿がついて螺子が汚れてゆるんでしまった。
他の足の状態を悪くしたことについて怪我をした足は動揺した。
結局、他の足は膿がひどくなっていることについて。
てきとうな包帯では治ることはないことについて。
知ることとなった。
頭はそのことをまだ知らない。
そして怪我した足にはまだ隠していることがあった。
それは、膿の奥に隠した癌について。
足はうらんでいた。
自分を癌にした他の足と腕と頭を。
集団という足のある生物の、怪我をした足である私。
癌が移転する前に。
私という足を切り落としてしまうのか。
癌は移転してしまうのか。
それともこの癌を治すことができるのか。
それはまだ誰にもわからない。

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