2005/1/28

それぞれのやり方で・・・  TOTOとMOMOの仕事・子育て

私は、関西の大学で法律を教えています。
TOTOも同業者です。
大学、とりわけ、法律関係の学部は、ここ数年、変革期にあります。
新聞その他の報道でご存知の方も多いと思いますが、
司法制度改革の一つとして、法曹養成(司法試験)制度の見直しが
行われました。これまでは、学部在学中または卒業後に試験を受ける
受けるというのが一般的でした。しかし、これがとても難しい試験で、
普通に勉強していたのではなかなか合格することができません。大学に
在籍しながら予備校に通う学生が増え、予備校の出す「論点集」を
片手に、「模範解答」を丸覚えするという方法で勉強する姿がよく
見られました。
この状況を改善し、「自分の頭で考える」法曹をたくさん養成するため、
2004年度から、法科大学院制度がスタートしました。当初の案では、
ちょうど医師の国家試験と同じように、学部4年+大学院2〜3年の
課程を修了した学生に、8割以上が合格するような試験を行うという
ものでしたが、全国70以上の大学に法科大学院が出来ましたので、
8割なんてとんでもない、5割、3割とどんどん予想される合格率が
下がってきています。

この問題については、書きたいことが山ほどあるのですが、それはブログ
の目的とは異なりますので、この辺で。とにかく、そういう時期なもので
すから、仕事に専念しなければ置いていかれてしまいます。
しかも、近年、大学教育に対する世間の目は厳しく、業績や授業は
第三者の評価にさらされます。随分昔にいた「10年前の講義ノート
を今も読み上げている」なんていう大学教員は、もはや存在できなく
なりました。同じく「ずっと論文を公表しない」研究者も、居場所があり
ません(よほど神経が図太ければ別ですけれど)。まぁ、仕事ができ
なければ、脱落していくのは、どの業界でも同じですが・・・

NANAに振り回され、「もう仕事を続けられないかも」と追い詰められた
私ですが、そのうち、「この状況を仕事に生かせばよいのではないか」と
思い始めました。

「発達障害」という概念は、法律学の世界では、まだ十分認知されて
いません。最近の少年犯罪などでは、時々「広汎性発達障害」や
「アスペルガー症候群」の言葉が出てくるようになりましたが、法律学者
のほとんどは、それがどういうものなのかを正確には知りません。
法律上、善悪を判断する能力がないとか、制御能力がないとか、
自分の行為がどのような結果をもたらすか認識できないという場合には
刑事責任能力が否定または限定されたり、民法では契約を締結する
能力、意思表示をする能力が否定されたりします。そこで念頭に置かれ
ていたのは、精神障害者や知的障害者、最近の成年後見制度では
これに加え、高齢により判断能力が低下した人です。
ADHDが原因で、衝動的な行動をとった場合、法律上責任を問える
のか、だまされやすいアスペルガー症候群の人が通常人なら「うそだ」と
わかるセールストークに乗せられ、欲しくもない商品を買ってしまった場合、
代金は支払わないといけないのか・・・そういったことはまだ議論されて
いません。

昨年末、私は、一本の論文を書きました。まだ、「こういう問題があるよ」
という問題提起しかできませんでしたが、発達障害を民法上どのように
評価するかという問題を取り上げました。前提として発達障害に関する
詳しい叙述が必要となり、その作業は素人である私にはかなり大変で
したし、また、関係者であるという意味で、辛いものでもありました。ただ、
NANAの障害を研究対象として客観的に捉える機会が持てたことは、
ともすれば感情に押し流されそうになる私にとって有益でした。

仕事の合間に、親の会が議会へ提出する請願書や文部科学省へ
提出する意見書の草案づくりも手伝ってみました。
堅い文章を書くことには慣れていますから、そのスキルを役立てる
いい機会です。
このブログを立ち上げたのも、NANAの障害を調べてわかった成果を
仕事に、逆に、仕事の成果をNANAのような子どもたちの支援に
役立てようとの想いからでした。

そんな私の様子をTOTOは黙って見ていました。

TOTOの専門は刑法なので、「刑法のほうが、もっと議論できそうやから、
やってみない?」と誘ってみました。TOTOは、「必要性はわかるけれど、
今までやったことがない分野だし・・・」と消極的でした。
私も、今までは金融関係の問題ばかり研究してきましたから、その気持ち
はよくわかります。新しい研究テーマを開拓するのって、勇気がいるのです。

ところが・・・
昨日は、NANAの主治医に会う日でした。2ヶ月に1回ぐらいのペースで
親が行き、近況報告したり、アドバイスをもらったりします。
昨日は、TOTOが行きました。
TOTOは、主治医にずっと胸に秘めてきたことを口にしました。
「アスペルガー症候群と犯罪の関係について、統計などの研究はされて
いるのですか」
主治医は、「明日、ちょうどそういう研究会があるんですよ、来ますか」と
誘ってくれたそうです。

今晩、TOTOは、その研究会に参加します。
初対面の人ばかりのところは苦手なTOTOです。とても勇気がいったでしょう。
TOTOは、TOTOなりに、自分の仕事とNANAの障害との接点を考えて
いたのです。

夫婦それぞれのやり方で、NANAの障害を受けとめようとしています。
そして、それは、おそらく、他の家庭でも行われているのでしょうね。
0



コメントを書く


名前
メールアドレス
コメント本文(1000文字まで)
URL




teacup.ブログ “AutoPage”

[PR] 最新のブログ デコメで日記 かわいいブログ 話題のブログ 人気の日記