辿り着いた場所は、あの日君と別れた海。
僕達はあの日と同じように、砂浜に腰掛けてキラキラ輝く海原を眺めた。
あの日と同じように、波は穏やかだった。
少しだけ、あの日と違うね。
波打ち際には、砂遊びをしている陽太がいるよ。
17歳と18歳の僕らは、幼く未熟だった。
離れていても、お互いの心は強く結ばれていると信じて疑わなかった。
人は脆く弱い。
ふとした事で、簡単に壊れてしまう。
男と女の関係は、もっと脆く弱い。
互いの心は見えず、解らず、すれ違う。
愛だと思った物は、からっぽの入れ物だった。
誰かが通り過ぎた時に、誤って踏んづけて、ぺしゃんこに潰れた。
運命には逆らえない。
もがけばもがくほど、糸は絡まる。
身動き出来ないくらい絡まって、倒れるしかなかった。
無情な運命だとしても、自分自身が乗り越えなくては前に進めない。
「あたしね、ずっと誰かのせいにしていた。
でもね、親になってわかったの。
ママも精一杯だったんだなって。
自分が病気になって、わかったの。
止められない心があるって。
ママも、一緒に住んでいたあの男も、前の彼氏も、止められない心に負けたんだよ。
狂うって言うのかな。
追いつめられて、自分を守るために必死で狂う。
時に人を傷つける。
時に自分を傷つける。」
春の陽差しは優しい。
ゆっくりと僕達を温める。
君は話を続けた。
「あたしには、よっちゃんや先生がいてくれた。
あなたの存在も心強かった。
そして、守るべき陽太がいた。
だから、頑張れた。
でも、ママやあの男や前の彼氏には、助けてくれる人や支えてくれる人が、いなかったのだと思う。
寂しかったんだね。
愛されたくて、必死でもがいていたんだね。
力で他人をねじ伏せるのは、弱さを隠すため。
それは、本当の強さではない。
自分の弱さを受け入れた人。
人の弱さを受け入れた人。
自分の過ちを許した人。
人の過ちを許した人。
それが本当の強い人なんだと思う。
あたしは自分の弱さを知って、他人の弱さも知った。
だから、ママを許したの。
一緒に住んでいた男の人も許したの。
前の彼氏も許したの。
自分も許したの。
全てを許して前に進む事に決めたんだ。」
過去にとらわれていては、前に進めない。
過去にはたくさんの過ちがある。
過ちは、許さなくてはいけない。
許して、忘れ去らなければいけない。
他人も自分も許せなかったら、辛いだけだろう。
君は強くなったね。
母の強さ。女性の強さ。
生きる強さ。死と向き合う強さ。
攻める強さ。守る強さ。
全ての強さを手に入れたんだね。
「病気が良くなってからは、運命に身を委ねてこの時を待っていたの。
とても穏やかな時間だった。
あなたを想うだけで、幸せだったの。
あなたがここへ来ても来なくても、約束の時が来たら新しい人生が始まるのだと思っていたの。
どんな人生が始まるのか分からなかったけど、幸せな時間だったよ。
不思議だね。
また、ここで会えた。」
「本当に不思議だね。
もう、二度と会う事もないと思っていたよ。
だって、僕は君を忘れてほかの女性を愛したんだから。」
「それは、あたしが望んだ事だから。
一緒にいる事が辛くて、あたしから逃げたの。
あなたが幸せならそれでいいと自分に言い聞かせて、傍観者になりすまして逃げたの。」
「僕も逃げたよ。待つ事から逃げたんだよ。
君がほかの人と幸せになってくれていればいい、と自分に言い聞かせて逃げた。」
「お互い様ね。」
君は笑って言った。
僕達に過去は必要ないのだろう。
あるのは現在と未来だけだ。
「ママ!!パパ!!」
陽太が叫んだ。
「見て、見て!!」
大きな砂の山だった。
誇らしげな陽太が愛おしかった。
僕は君の手をそっと握った。
君は優しく握り返して、真っ直ぐと僕を見つめた。
あの日と同じだね。
君は静かに目を閉じた。
僕の唇が君の唇に重なった。
「もう、一生離さないよ。」
僕の言葉に君は黙って大きくうなずいた。
君の瞳から涙が溢れ出した。
僕は君をきつくきつく抱きしめた。
「ありがとう。幸せだよ。」
君は最強の笑顔でそう言った。
僕と君。
真ん中に陽太。
手を繋いで、砂浜を歩く。
3人の足跡が続いて行く。
何処までも、一緒に歩いて行こう。
振り向かず、前を向いて、一緒に歩いて行こう。
繋いだその手を離さずに。
傷つく事を恐れずに。
ずっとずっと一緒に生きて行こう。
ようやく、二人の夢は重なったんだね。、
夢が叶って、現実になった。
ずっと、一緒にいよう。
ずっと、笑っていよう。
ずっと、幸せでいよう。
寄せては返す波の音が永遠に続くように、
君と僕の愛も永遠に。
(・・・fin.)
いつもご訪問ありがとうございます!!
最終回お待たせして、ごめんなさい。
ラストシーンは、再びこの海でキスをすると決まっていたのですが、どのように終わらせたら良いのか、なかなかわかりませんでした。
書き進める事より、終わらせる事の方が難しいんだなと思いました。
いままで、読んでくださった皆様、本当にありがとうございます。
どれだけ励みになった事かわかりません。
お陰で、最後まで書ききる事が出来ました。
終わりは新たな始まり。これからも新たな『nonoka world』を展開していきます。
長い間、本当にありがとうございました。
☆From smile love☆