自然にはものすごいパワーを秘めた演出の力がある…。
ふと思い出して涙ぐむ、一番切なかった夕暮れ。
初めてキスしたときの空気の温度。
抱かれたあとのけだるい月。
語り明かした闇の蒼い光。
永遠の別れに泣いた朝の白…。
いつもそこには自然の景色が私を見守って…あのときの心の断片を瞼に浮かばせる。
何度も何度も忘れさせないように…。
心がいたくて苦しくて、涙さえ出ない恐怖に怯えたとき
周りの景色は黒い壁。
一方的な圧力の深い傷は
もう思い出さなくていいように。
塗り潰した黒の色。
黒の中は、もう忘れてしまおう。
黒の壁は
自らを壁の外においやれることを祈りながら
不自然なままでその中を見せずにいようとする。
日の光は届けない、海の青も描かせない、木々の揺さぶりも聞かせない。
優しい演出…。
だから痛すぎる黒からは遠く離れて
明日をみればいい。
光の届く景色の中を
歩けばいい。
