続きです。
「あっははは!少年Aクン、新聞見たよーっ!悪人ぽいのは顔だけ
だったのに、これで晴れて前科持ちになっちゃったねー♪」
「てめぇ絶対楽しんでるだろ?!俺ぁあれからすっげー大変だったん
だぞ?!」
昨日の今頃は、この場所でこんな会話が出来るとはカケラも思って
いなかった。
座り慣れた椅子に、すっかり馴染んだ湯飲み茶碗。
ここは、俺が一番気に入っている場所ーー堀鐔学園一階の一番奥、
化学準備室である。何故気に入っているかといえば、そこに金髪の
教師がいるからだ。
今、目の前で笑うそのひとが。
「不審者侵入で滑走路は30分閉鎖、傍迷惑な犯人はなんと高校一年生。
退職した教師を追って空港乱入〜とかニュースでもやってたらしいよ。
恥ずかしいねぇ。ビデオに撮った人いたけど、借りて見てみよっかー?」
「・・まさか俺の目だけ隠された写真とか、出てねぇだろうな」
どうかなぁと微笑む教師の金の髪が、差し込む春の光に揺れる。
すぐにでも、手の届く距離で。
あの後。
ファイを連れて、空港を駆け出してーーしかしパトカーのスピードと
情報網には敵わず、結局捕まってしまったのだ。ファイを守りたくて
必死に抵抗しようとしたものの、肝心の守るべき人にそりゃ自転車で
警察に対抗なんて無茶だってと笑われてしまった。俺は到って真面目
だったのに、どうやらこいつはこの展開を楽しんでいたらしい。
「でも、捕まったって大丈夫だよ。黒たんのお陰で、本当に大事な事が
分かったから」
掴んだ腕を離そうとしない俺に、ファイは今後何があっても絶対黙って
離れたりしないと約束してくれた。
「諦めて、家の言いなりにはならない。オレも、黒たんみたいに全力で
戦うって決めたんだ。オレはここに残りたい、家には戻らないって
伝えるよ。反対されても、絶対諦めないから」
署に連行された俺は相当絞られ、謝りに来た家人にもこっぴどく叱られ
ひどい目に合ったが、深夜には釈放された。
ちなみにファイは原因は自分であると庇ってくれたらしいが、
確認程度に事情を聞かれただけだったらしい。
夜遅くよろよろと出所してきた俺を、家人とファイが揃って待ってくれて
いた。
そしてファイは、驚くべきことを口にしたのだ。
なんと、父親に学園に留まることの許可を得たらしい。
そして学園に問い合わせた所、突然の辞表に化学教師の穴埋めが
見つからず困っており、戻れるなら明日からでも来てくれとのこと。
つまり、明日またいつものように学園に出勤すると言う。
ファイと共にいる為には明日からも様々な苦難が待ち構えているだろう、
と気合を入れ直していた俺は、拍子抜けするほどだったけれど。
「全部、黒たんのお陰なんだよ。ありがとう」
今にも涙を零しそうなファイの瞳に、心から安堵した。
聞きたいことや言いたいことが山のようにあったが、家人の前では
お互い口に出来ないことが多い。詳しいことは明日と、ファイと別れ
帰宅することになった。
『突然退職した自分を心配し、空港に来てくれたのだ』と教師から
説明を受けたらしい家人には、あの綺麗な先生に惚れているのでは
ないかと冷やかされてしまった。
その上明くる朝登校すると、学園中に空港での大騒動が広まっており、
またも冷やかされその上称えられなどして余計恥かしい目に合った。
始業式二日目の授業は午前中で終わり、今やっと落ち着いてこうして
教師の元を訪れることが出来たのである。
「で、どういう事なんだよ?そんなにあっさり許可が得られるとは
思えねぇが、何かあったんじゃねぇのか?」
つづく
拍手ありがとうございました!
投稿者: koorinoasikase
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